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純A級増幅仕様のODNF回路を搭載したリファレンス機

ラックスマンのヘッドホンアンプ「P-1u」の実力に山之内が迫る

2010/08/13 山之内正
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■基本コンセプトをそのまま受け継ぎ複数の技術改善を盛り込んだ

ラックスマンのヘッドホンアンプの基準器「P-1」が、最新技術を投入した「P-1u」に生まれ変わった(関連ニュース)。7年ぶりのことだという。

P-1u

今回の進化は、同社独自の帰還回路「ODNF」最新のバージョン3.0A(純A級増幅仕様)にアップデートしたことが中心を占める。さらなる低歪みと位相の正確な再現を求めた最新バージョンだ。

「セパレートアンプクラスのクオリティを目指す」という基本コンセプトをそのまま受け継ぎながら、ゲインの適正化、電源トランスのレギュレーション性能の見直しなど、複数の技術改善を盛り込み、パーツの品質にもメスを入れて総合的に性能を改善、特にSN比はP-1の108dBから一気に115dBまで向上している。

また、ヘッドホン出力は2系統に整理されたが、スルー出力を1系統装備し、使い勝手を改善した。

背面端子部の様子

■96kHz/24bitの音楽データでは非常に心地よい雰囲気に包まれる

ゼンハイザーの「HD800」を本機に接続し、試聴を行った。ソース機器はリンの「MAJIK DS」を使用している。

どんなソースをかけても周波数レンジとダイナミックレンジの広大さにまず驚かされる。声や弦楽器の音色はなめらかで柔らかいが、これは倍音や余韻の響きが高域まで歪みなく再現されていることの証だ。

DSで96kHz/24bitの音楽データを再生すると、マスター音源ならではの柔らかい質感と、フワリとした空気感が耳を優しく刺激し、非常に心地よい雰囲気に包まれる。

■演奏に本来備わる躍動感や臨場感を素直に引き出す

HD800のレンジの広さ、レスポンスの速さを漏らさず引き出す点も特筆すべきだろう。ダイアナ・クラールのアルバムではリズムの動きが軽快でテンポのもたつきがなく、ボーカルもベースもアタックの瞬間からすぐにエネルギーが起ち上がってくる。

ヴィヴァルディの「ラ・ストラヴァガンツァ」の勢いのある演奏からもそのことがよく分かる。さらに、この曲では低弦からバイオリンまでの音域バランスが極めて適切なことにも感心した。曲のテンポや奏法を忠実に反映し、初速の速い音、ゆったりした音の音色の違いが鮮明に聴き取れる。

音の輪郭や解像感を強調するのではなく、演奏に本来備わる躍動感や臨場感を素直に引き出すことが、本機の最大の美点である。前作も同じような志向があったが、基本性能の向上によって、さらに明確に浮かび上がってきた。

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