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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第168回】恒例のアレやります!「秋のヘッドフォン祭2016」高橋敦の個人的ベスト5

公開日 2016/10/28 11:15 高橋敦
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【第1位】普通に気に入った気になったイヤホンたち

連載の独自性という観点から言うとよろしくないのだが、今回別段特殊なものではなく、普通に気に入ったり気になったりしたイヤホンの印象が強く、それらを集めて第1位としたい。

まずはテーラーメイドイヤホンブランド“Just ear”が今回の祭に緊急出展&緊急限定販売してきたチューニング「Mellow Memories」だ。

この一年半に様々なユーザーに向けてテーラーメイドチューニングをしてきた中で、多くのユーザーがやはりボーカルを特に重視していることを再確認。そこにほぼ特化した音作りのため、
「通常モデルとは異なる工程を踏む必要があり、XJE-MH1としても再現が出来ないチューニングとなります」
という、特別というか特殊なチューニングを投入して完成されたモデルとのことだ。

外観としては従来のものと変わらない

シェルの透明度が高いので見えてしまうのだが、たしかにアコースティックな部分で既存モデルとは明らかに異なる箇所がある

音を聴いての印象は、ポートレイト写真のようなソフトフォーカス感というか、顔…ではなく声の表情や輪郭の柔らかさ、背景のボケを「味わえる」音だなという感じ。「再現」よりも「表現」を感じさせる音だ。全体としても、全てをカッチリと描き出すことで生まれる立体感ではなく、レンズの被写界深度によって顔…ではなく声が浮き出てくるような、これまでのチューニングとは確かに異なる雰囲気がある。

そしてそれが、音を聴く前に透明シェルの内部を見て「こういう風に変えてきたということは…」と僕が想像した音とはかなり違うものだったことにも驚かされた。イヤホンのアコースティックチューニングの奥深さを感じたという意味でも印象的なモデルだ。

そしてDITA「DREAM」。以前にも参考出展されていたが、今回は正式発表正式出展。これについては「独自性」の部分も強い。

マットブラック!ハウジングはチタン製のものと、それよりはお手頃になるアルミ製のものも用意

そして独自性な部分を解説してあるのがこのボードなのだが…


これが…

こうだ!

写真の通り、プレイヤーやアンプに挿す側のプラグにこのような仕組みがあり、3.5mmシングルエンドにも2.5mmバランスにも差し替えることができる。彼らはこれを「Awesome Plug」と命名した。なお前述の3.5mmシングルエンドと2.5mmバランスは標準付属。

まず、変換アダプタを挟むのではなくプラグ自体を付け替えるので、その部分で設計者の意図しないロスが生まれないことはメリットだろう。本当にダイレクトな接続よりはコネクタが増えるが、それも織り込んでケーブルとプラグ全体を見て設計すれば良いわけだ。

ユーザビリティとしても、プラグ部分だけ持ち歩けばどちらの端子にもさっと対応できることや、イヤホン側の小型端子を頻繁に抜き差ししなくて済む安心感などはメリットになるはず。このプラグ部分はスクリュー式で工具要らず。指先だけで交換できるシンプルな構造で、耐久性にも不安は感じなかった。

またもちろん音もハイレベル。ダイナミック型ハイエンドとして多くの方が納得するものだろう。なお、ブースに展示・試聴可能だったものはチューニング完了前のものとのことで、別途にこっそり「逆に外観は未完成で音は完成」というサンプル機も聴かせていただいた。展示機ではダイナミック型らしい高域のジャギっとしたキレも目立っていたが、その感触は抑えられ全体的にもより整えられた印象。ハイエンド機として端正にまとめあげてきている。

最後にJH Audio「Michelle」!
いやこれこそ本当にこれ自体は「普通」そのもの。JH独自の技術要素はもちろんあるが、ベーシックな要素としては「3ウェイ3BAドライバーのイヤモニタイプ」の一言で済んでしまう。

見た目的にも「普通にJH」だが、ステムの角度の見直しや軽さのおかげか装着感はかなり向上している印象

上位クラスと違う部分としてはリケーブル端子は普通の2ピン

…のだが、何しろ単純に、音が良い
しかもこの場合は「普通に音が良い」のがすごい。「どこがどう特徴的で」というのも聴き込めば出てくるとは思うのだが、短時間の試聴では「どこがどうすごいというよりは全てバランスよくハイレベル」だ。「3ウェイ3BAドライバーの現時点での到達点は?」と問われたら今の僕はこれを挙げるだろう。

正直、JH Audioの「超ハイエンド=超高価格」路線に釈然としないものを感じていた方も少なからずだと思う。しかしそこで磨き上げてきた技術を凝縮することで生み出されたものがこの「Michelle」だとすれば、これまでの超ハイエンド展開の恩恵は最終的にはより多くのユーザーにもたらされたわけだ。良しとしようではないか。

次ページ最後に「別格」のあの方がヘッドフォン祭りに攻め入る…

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