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ツイン・ダイナミックドライバーのハイブリッド機

ライブを聴くような生々しい再現力。Unique MelodyのカスタムIEM「MAVIS」レビュー

公開日 2016/09/05 11:47 編集部:小澤貴信
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同様にアコースティック楽器主体の演奏で、ロックの男性ボーカルとして、ボニー・プリンス・ビリー「Normadic Revery」(44.1kHz/16bit)を聴く。囁くようなボーカルを、言い方が妙だが、くぐもった感じまで明瞭に表現する。後半のシャウトとの対比が素晴らしい。そして、この曲で印象的だったのは、強調感なく、空気の揺れを感じさせてくれるキックドラムの実在感だ。

MAVISを試聴する編集部・小澤

ハイレゾの良録音として定番になりつつあるパンチ・ブラザーズのアルバム『The Phosphorescent Blues』からは2曲目の「Julep」を聴く。ウッドベースのソロから始まり、そこにアコギのカッティングとボーカルが重なっていく冒頭。ここで「低域に深みを持たせた」という意図はよくわかる。また、このベースにボーカルとギターが加わってくるところで、本機のもうひとつの美点が聴き取れる。ベースの実在感と、中高域の楽器の明瞭さを見事に両立させているのだ。

いずれにしても、音場の広がりはそこそこである。むしろ、各楽器がセパレーションと明瞭性を保って、ダイレクトに耳に飛び込んでくる。これが非常に臨場感がある。これがまさにライブ感覚なのだと感じた。

ストリーミングでMAVISカスタムの音を試す

最近は、ストリーミングで音楽を聴く時間が圧倒的に多くなった。普段Apple MusicやTIDALを聴いているシステムで、MAVISのサウンドを確かめてみたい。iPad ProにLightningアダプター経由でAudioQuestの小型USB-DAC/ヘッドホンアンプ「DragonFly Red」を接続。TIDALでストリーミング音源を再生して、MAVISで試聴を行った。

AudioQuest「DragonFly Red」と組み合わせて、ストリーミングの音源も聴いた

ここまでの傾向を踏まえて、バンドサウンドや打ち込み系のロック・ポップスがこのカスタムIEMでどのように聴こえるか気になっていたのだが、その相性の良さは想像以上だった。

テンポの速いエレキギター主体のバンドサウンドでも、優れた解像感と、実在感に富んだ低域再現という長所が十分に発揮される。エレキベースは、まさに“ライブハウスで聴く感覚”の音だ。キックはドスンという圧力を感じさせてくれつつ、立ち上がりが速い。各楽器の分離の良さも魅力で、キックやスネアが連打されるようなパートでも音が飽和しない。

エレキギターとの相性は抜群だ。ざらつくディストーションには深みがあり、クリーントーン系の小気味良いカッティングの切れ味も心地良い。

MAVERICKカスタムが“陰り”や“曇り”を描きだしてくれるタイプだとしたら、MAVISはとにかく明瞭だ。一方でシャープネスをかけ過ぎたような過剰な強調感はなく、むしろ自然な音場感、余韻も備える。アーティストの演奏の一挙手一投足を聴き漏らすことなく味わいたい方にはぴったりのサウンドと言える。

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