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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第143回】あのFitEarがハイブリッド型に挑んだ! 最新カスタムIEM「Air」の魅力とは?

公開日 2016/01/22 11:12 高橋 敦
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■あのFitEarが挑戦したハイブリッド型の最新カスタムIEM「Air」徹底解剖

何かを作るとき、まずは大盛りにして、そこから削り出すという方法がある。たとえばフィギュアの原型をつくるとき、エポキシパテを多めに盛り上げて削り出す方もいるだろう。

テクノロジーに当てはめても、ある分野が大きく発展するまでの経緯、大きく発展させるための手法のひとつとして、そういった方法が主流になることがある。歴史を振り返ると、宇宙世紀0110年代の「フォーミュラ計画」に始まる小型でシンプルな高機能MSへの回帰は、宇宙世紀0088年頃のいわゆる「恐竜的進化(多機能を詰め込んだ巨大MSの台頭)」へのカウンターであった。しかしフォーミュラ計画は、恐竜的進化を経たからこその、それに対する反省も含めた知見や、恐竜的進化においてこそ獲得できた様々な技術基盤があって成立したとも考えられるわけだ。

…そろそろオーディオの話を始めるが、ここ最近のイヤホン界隈で増えてきていると感じるのが、ダイナミック型一発、コンデンサー型一発、そしてダイナミック+BA各一発のハイブリッドといった、比較的シンプルなドライバー構成を採用したモデルだ。

この流れを「BAマルチの恐竜的進化(超多ドライバー化)」へのカウンターと捉えることに大きな無理はないと思う。マルチウェイ化を進め、ドライバーの数を増やせば増やすほどに、より広い帯域を低負荷で無理なく再生できる。単純な事実だ。推し進めたことは自然で、必要な過程であったと言える。

一方でドライバーの数を増やせば増やすほど、ドライバーの個体差までも含めた位相管理等は困難を極めていくという、複雑な事実もある。構造的に複雑になることで生産性も低下するはずだ。こういった難しさを、それを製品化した、あるいは検討したメーカーは思い知らされたのではないだろうか。

それを思い知らされた上で対応策を重ね、マルチBAを極めるというやり方も、もちろんある。ドライバーを増やすことに利点があるのも明確なのだから、どうにかして欠点を潰していけばいいという考え方だ。

しかし「だったらやっぱり理想はシングルドライバー、そうでなくてもできるだけ少ないドライバーで組み上げるべきだよね」という方に行くのも、もちろんアリだ。その選択の先にある答えのひとつが、ダイナミック+BA各一発のシンプルなハイブリッド構成。そういうことでそれを採用するモデルが増えてきているのではないだろうか。

…そろそろ本題を始めるが、今回取り上げる「FitEar Air」もダイナミック+BA各一発のハイブリッド構成を採用するCIEM、カスタムイヤモニだ。しかし先ほどは「ダイナミック+BA各一発のシンプルなハイブリッド構成」という言い方をしたが、そして実際に構造としてはシンプルなのだが、それを実現するには厄介な課題もあったという。それをいかにしてクリアしたかというのがこのモデルのポイントだ。

やっと登場、今回の主役「FitEar Air」

今回はこのオレンジの他にカラバリも展開

それが「ショートレッグシェル」。見ての通り、耳の中に入るノズルの部分が一般的なイヤモニと比べて極度に短い。これはダイナミック型ドライバーの振動板が負荷なく自由に動けるだけの空気容積を耳の中に確保するためだという。

次ページより、順を追って説明していこう。

次ページ空気には抵抗やバネ性がある

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