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<山本敦のAV進化論 第95回>

“音にこだわったハイレゾスマホ”「HTC 10」レビュー。音楽機能を徹底的に試す!

公開日 2016/06/17 14:32 山本 敦
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端子形状がType-CのUSB OTGケーブルを用意して、USBケーブルでアンプに接続すると、接続機器を自動で認識。画面にポップアップを表示して機器が接続されたことを知らせてくれる。

アンプをUSB端子につなぐとポップアップが表示される

ホリー・コールのアルバム「Girl Talk」からタイトル曲の『Girl Talk』(DSD 2.8MHz)では粒立ちが良く透明感あふれるピアノがきれいに響いた。ボーカルは繊細な声のタッチが味わえる。スマホがアンプの出音に無駄な色を付けることなく、その性能を素性を引き出せている手応えがある。PCレスでも簡易にDSDを含めたハイレゾ再生が楽しめる環境として導入してみるのも面白いと思う。

■内蔵スピーカーでの再生や「ハイレゾ音声動画撮影」も試す

最後に本体のスピーカーによる再生もチェックしておこう。スピーカーの音質設定は「設定」アプリのメニューリストの第一階層にある「Dolby Audio搭載 HTC BoomSound」を選択する。設定項目は映画などのコンテンツ再生時にサラウンド感の高い音を聴かせる「シアターモード」と、ステレオ再生向きの「ミュージックモード」のふたつに分かれている。

スピーカーユニットは本体のトップ側・正面に向かって高域用のトゥイーターを配置。下側・底面向きには中低域用のウーファーユニットが付いている。2つのユニットが受け持つ帯域や向いている方向が違うので、ともすればちぐはぐなサウンドになりそうなものだが、そこはドルビーの音響処理技術をうまく統合しながらHTC 10の音づくりを最適化している。

トップフロント側に高域用のトゥイーターユニットの開口部を配置。インカメラも明るく撮れるのが特徴

スマホを横に向けて、正面に向かって聴くサウンドは左右に偏りが無く、全体にしっかりとまとまっている。シアターモードでdTVの映画コンテンツなどを楽しむと、セリフの生き生きとした臨場感が伝わってきて、小さなスマホなのに効果音のサラウンド感もよく再現される。イヤホン再生の時と一緒で、スピーカー再生の場合もやはり音の輪郭がくっきりとしていて鮮度が高い。

HTC 10では内蔵カメラで4K動画が撮影できる。もっとも4K動画撮影ぐらい、今どきのハイエンドスマホなら当たり前のように搭載している機能になってしまったが、本機のユニークなところは4K/フルHDの動画撮影時に192kHz/24bitのハイレゾ音声が同時に記録できる点にある。

ビデオ録画の設定画面。画質・音質の項目をタップしていくとON/OFFが切り替わる

カメラを動画撮影のモードに変更して、設定から画質・音質をタップして変更する。音質を「ハイレゾ録音/ON」にすれば臨場感あふれる音も一緒に録れる。野球観戦に出かけた時に記録した動画からは、スタジアムの熱気と臨場感が蘇ってきた。

ハイレゾ録音をOFFに設定して記録した動画と聴き比べてみると、ハイレゾ録音の動画の方が音のこもりが少なく、観客の声援はディティールまでよく聴き取れる。応援団のトランペットもハイレゾ録音は高域のスカッとした抜け味が気持ち良く、スタジアムの広々とした情景がよく描けていると思う。

ハイレゾ音源がまだ手元に無く、わざわざ買って試してみるのはまだ気が引けるという方も、ぜひ自分の生活の身の回りのシーンを「ハイレゾ録音」してみると良いだろう。身の回りの音をいい音で聴くことの楽しさと、品質の違いがリアルに実感できてハイレゾにも興味が湧いてくるかもしれない。

新宿の夜景をHTC 10で撮影。色味がやや濃く、コントラストが強めに出る

Xperia Z5 Premiumで同じ夜景を撮影。ディティール感はHTCよりも出る

■“聴き放題”の音楽ストリーミング再生にも効果大

様々な角度から切り取ってみてもHTC 10は全体にとてもエッジの尖ったプレミアムスマホだ。メタルボディの外観も非常にリッチで質感が高い。今回はハイレゾ再生を中心にレポートしたが、CDリッピングやダウンロード音源を楽しむ際にも、アウトドア再生でも十分なボリュームが得られて、メリハリの効いた本機のサウンドが心地よいリスニング体験をもたらしてくれるだろう。

また、LTEやWi-Fi経由でネットワークにつなげば、“聴き放題”のサブスクリプションサービスのストリーミング再生も1台でまとめて“いい音”で楽しめるところも強みだ。国内はKDDI単独の販売になるが、MVNOが、あるいはHTCが独自にSIMフリー端末として展開してくれれば、音楽をもっと心地よく聴けるスマホとして“買い増し”したいという声も強まるはずだ。

HTCは今年の年初に開催されたCESで「HTC One A9」という端末で実験的にMQAに対応したサービスモデルのデモンストレーションを実施していた。Phile-webの読者の中には、国内でもいくつかのオーディオショーで展示されたMQA対応のHTCのスマホによるデモを体験した方もいるのではないだろうか。

MQA対応のハイレゾ品質の音楽ストリーミングは、現在欧州のTIDALが本格的なコンシューマー向けサービスのローンチに向けて準備を進めている。データ通信容量を抑えながら、MQA対応の楽曲をいい音で楽しむために最適な製品カテゴリーはスマホだ。

HTC 10での正式なMQA対応は今のところ予定にないようだが、TIDALやMQAサイドの動きに連動して、今後同社が本格的に乗り出す可能性はゼロではない。その時にはHTCと「音の良いスマホをつくるブランド」というイメージのリンクがより強固なものになるだろう。

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