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旗艦プリ/ステレオ・パワーアンプを聴く

音の向こうにある“音楽”が見える。エソテリック「Grandioso C1/S1」レビュー

公開日 2016/04/04 12:28 山之内 正
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プレイヤー各々の音色へのこだわりをジャズで確実に聴き取ることができる

最後に、エソテリックから登場したブルーノートの復刻シリーズから、コルトレーンの『ブルー・トレイン』を聴いた。信頼の置けるアナログマスターから忠実なリマスタリングを行い、まさにスタジオでヴァン・ゲルダーが聴いていた音に一番近いサウンドを蘇らせたとされる話題盤である。ここで聴けるコルトレーンやフラーの音は、余分な肉付けや強調と縁のない、ありのままのサウンドで、RVGリマスタリングによるCDで聴き慣れた太い音とは一線を画している。しかし、演奏のテンションの高さやプレイヤーひとりひとりの音色へのこだわりの強さを確実に聴き取ることができるのは、ヴァン・ゲルダー自身が後年手がけたリマスターではない。間違いなく今回のエソテリック盤の方が実際の演奏に近く、源流に近付いたことを実感できる。それは、いわゆる「きれいな音」でもないし、息漏れや演奏ノイズが入った生々しい音とも少し違う。ひとことで言えば、ミュージシャンが目指した音に一番近い。

聴き手の立場から言えば、それこそが一番聴きたかった音である。そして、音の向こうにある音楽が見え、作品そのものが見えてくる爽快感が味わえる。音楽との距離が一気に近づくと言い換えてもいいだろう。Grandiosoの優れた資質は、まさにそこにある。

(山之内 正)


本記事はオーディオアクセサリー158号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。



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