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新SOLID BASSを聴く

オーディオテクニカ「ATH-CKS990」レビュー:パワフルな重低音とシャープな高域を両立

公開日 2015/11/02 10:00 高橋 敦
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■重低音イヤホンらしさを引き継ぎつつ中高域の表現力を底上げ

サウンドだが、ATH-CKS1100よりも少しミドルを抜いてベースを強め、高域の明るさも出した印象。ベースやバスドラムの低音の張りのよさとシンバルの高音のシャープさ、その両端が明確なことでワイドレンジ感もわかりやすい。屋外騒音下の利用だと、CKS1100よりも楽しみやすいかもしれない。

ジャズとヒップホップの高次元でのハイブリッドサウンド、Robert Glasper Experiment「I Stand Alone」では、ベースやバスドラムの張りの強さがわかりやすい。例えば空気を入れて膨らませるボールを想像してみてほしい。CKS1100よりももう半回り大きめのボールに空気を多めに詰め込んだ感じの、大柄で弾みのよい低音だ。

高域のシャープさや明るさがあるので、全体の印象としてはややクールな音調でもある。グラスパー氏の多面性のうち、クールなジャズピアニストとしての面の方が少し強まる感じだ。低音のディープさとの対比もさらに面白くなる。


Led Zeppelin「When The Levee Breaks」を聴くと、ドラムスから広がる豊かな空気感の部分はさすがにCKS1100に及ばないことは確認できてしまう。そこはやはりデュアルフェーズ・プッシュプル・ドライバーの強みが特に発揮されているところなのだろう。とはいえ、際立って優秀なCKS1100と比べればということであって、CKS990も一般的な水準からすれば十分に優秀なことは強調しておきたい。

聴いた中でこれは特にハマると感じられた曲は、Perfume「Enter The Sphere」。エッジの効いたシンセとドカンと来る低音が炸裂するド派手な曲だ。その派手さをCKS990はこれでもかと引き出してくれる。シンセのジリジリと歪んだエッジの感触。細かなニュアンスとかどうでもよくなるほどのパワフルさで曲を進めるバスドラムの四つ打ち。全体の音調やバランスを破綻させない上での荒さや強引さの表現が巧い。

プラグ部もレッドカラーで統一されている

トップエンドのATH-CKS1100は、かつてのSOLID BASSの雰囲気をかなり大胆に振り切って新次元に到達したモデルとの印象も受ける。対してこちらATH-CKS990は、CKS1100と比べればかつてのSOLID BASSの雰囲気も継承しつつの新次元、という印象だ。「重低音イヤホン」のイメージを色濃く受け継ぎつつ、低域の質や中高域の表現力も底上げしている。空間性や音の配置の余裕があるのはやはりCKS1100だが例えば、閉鎖空間的な雰囲気や密度感のある音でクラブサウンドを楽しみたいといった方だと「あえてCKS990」という選択もありかもしれない。

「新・SOLID BASS」シリーズとしての方向性はしっかり共有しつつトップエンドのCKS1100との棲み分けまでバッチリな「デキル二番手」モデルだ。

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