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ノイキャン機能の効果も検証

【レビュー】Fidelioシリーズに待望のNCヘッドホンが登場。フィリップス「NC1」を試聴する

2015/06/01 山本 敦
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エネルギーの引き出し方が上手なヘッドホン

Fidelio NC1のサウンドは、PonoPlayerを使ってハイレゾの音源をリファレンスに試聴してみた。

ジャズ・ギタリスト、小沼ようすけのアルバム『GNJ』から、冒頭の楽曲「Jungle」では解像表現力の高さを実感。ギターの音色はエネルギーを前面に押し出す。余韻の階調感もきめ細かく滑らか。ベースラインは輪郭が太く、量感もどっしりとしているが足も速い。ディティールの情報量が豊富なので、特に弦楽器の表情は色彩が鮮やかで変化にも富んでいる。パーカッションは細かな音の粒まではっきりと象る。自然な透明感が心地良く、音楽を聴く脳に安らぎを与えてくれる。

90度回転するハウジング

ボーカル曲との相性の良さ、心地良いリスニング感はFidelioのMシリーズに通じるものがある。生命力に満ちていて、余韻も伸び伸びとしてふくよかだ。ジェーン・モンハイトやノラ・ジョーンズなど女性ボーカルの艶めかしさにはうっとりとさせられた。声に余計な色を付けたような不自然さがないから、余計に真に迫るものが感じられるのだろう。

小沼ようすけ『GNJ』

アコースティックセッションの楽曲はボーカルとバンドの楽器とのセパレーションも良好。鳴っている音の位置関係を立体的に把握できる。ピアノやアコースティックギターなど、生楽器の艶ときめ細やかなタッチの余韻にも注目したい。バランスはフラットだが、各帯域の音の旨みを色鮮やかに引き出す。朝日を浴びているような、心地良く鋭気がみなぎるサウンド。

ピアノコンチェルトは、ピアノが奏でる主旋律がオーケストラに埋没して滲んでしまうことなく、センターで力強く煌めきながら主張する。ひとつひとつの音の粒立ちがよく、長音のサスティーンはきりっとして伸びやかだ。オーケストラは縦横いっぱいにスケールが広がり、合奏の一体感も色濃く反映される。それでいてS/Nもよくディティールが鮮明に描写される。ピアニッシモで展開する木管楽器のソロは細かい抑揚まで浮かび上がる。張り詰めた冷たい空気までも蘇えらせるような緊張感も良い。

エレクトロ系の音源はダフト・パンクのアルバムでチェックした。低域は量感とエネルギーが充実しているけれど、解像度や透明感もまったく損なわれていない。骨太なのに瑞々しく繊細な一面も見せる。ボーカルの高域が非常にクリアで、余韻の伸びやかさも秀逸。色んな楽器の音が重なり合ってくるパートもレイヤーの分かれがよく、音が混じり合ってフォーカスがボヤけてしまうことがない。リズムのアタックは立ち上がりも鋭く、音像の立体感にも富む。緻密に描かれる立体的なサウンドスケープに引き込まれ、気が付けばそこに意識を集中させて耳を澄ましてみたくなるサウンドだ。

daftpunk『Random Access Memories』

リファレンスのプレーヤーをiPhoneに変えて音楽を聴いてみても、エネルギーの引き出し方が上手なヘッドホンというインプレッションは変わらない。ノイズキャンセリングの効果が高いので、過度にボリュームを上げなくてもボーカルを中心とした中低域の厚みと力強さ、高域の艶とディティールがナチュラルに再現される。心地良い音楽の一体感に包まれる手応えが味わえた。サウンド、ポータビリティともにスマホによるリスニングにも最適なヘッドホンだ。

全体にNC機能をオンにした方が、中低域がわずかに力強さとタイトさを増して、全体のメリハリが高まるようだが、自然なリスニング感とバランスの良さはNC機能のオン・オフに影響を受けることがない。オーディオヘッドホンとしての自然な音楽再現を優先しながら、機能性にも磨きをかけたFidelioらしさが光るノイズキャンセリングヘッドホンだ。

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