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<山本敦のAV進化論 第52回>音質や使い勝手を一斉チェック

ソニー/デノン/パロット − ワイヤレス+ノイキャンの“全部入り”ヘッドホン3機種を徹底比較

公開日 2015/05/01 15:32 山本 敦
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■デノン「AH-GC20」

デノンのオーバーヘッドタイプとしては久しぶりに登場したNCヘッドホン。マイクで集音した音からアナログのフィルターとアンプでノイズ処理を行う方式を採っているが、イヤーカップの内・外の両側にマイクを配置する「デュアル・アクティブ・ノイズキャンセリング機能」によりキャンセリング精度を高めている。

デノン「AH-GC20」

正面側の小さい孔がフィードフォワードマイク

コントロールボタンをハウジング外側のサイドフレームに搭載する点は一般的なワイヤレスヘッドホンと同じだが、NCやワイヤレス機能のオン・オフを音声ガイダンスでも知らせてくれるので、ヘッドホンを装着したまま操作がしやすかった。ハンズフリー通話は「CVC(Clear Voice Capture)」の搭載により、ノイズを除去しながらよりクリアな音声通話ができる。

NCのON/OFFを切り替えるとボイスコマンドで知らせてくれる

ボタンは操作性と外観の美しさを損なわない小さくシンプルなデザインのバランスが良い

Bluetoothとノイズキャンセリング機能はどちらか一方だけをオンにしたり、両方をオフにしてワイヤードリスニングに切り替えることもできる。街歩きをしながら音楽を聴きたい時にはNC機能はオフを選んでおけばより安心だ。

ヘッドバンドのクッション性も高い

イヤーパッドは大きめで肉厚につくられているので装着感は高い

Bluetoothの高音質コーデックはaptXとAACをサポートしているが、通常のaptXよりもさらに低遅延性能が高い「aptX Low Latency(aptX LL)」もサポートした点が注目だ。例えばゲームや動画など、映像と音声のシビアなリップシンクが求められるコンテンツを楽しむ時に効果を発揮するだろう。

バッテリーの最大連続再生時間はワイヤレス/NCオン時で約20時間と、今回取材した3機種の中で最もタフだ。

その他の便利は、本機とソニーはマルチペアリング/マルチポイント接続に対応しているので、例えばスマホとポータブルオーディオプレーヤーを2台同時にペアリングしておけば、プレーヤーで音楽を聴きながらスマホの着信にも応答ができる。

本機のために開発した40mmドライバーを搭載。ハウジングの素材には、同社“MUSIC MANIAC”シリーズ「AH-MM300」などのヘッドホンにも採用されている、強化プラスチックにグラスファイバーを混合した「GFRP」を採用している。軽さも備える素材なので、本体の質量も約275gと軽量だ。イヤーカップを支えるアームはアルミのダイキャスト製造によるパーツを使うなど、マテリアルにもこだわっているので、ルックスの高級感も高い。

アルミダイキャスト製造のアームを採用

音づくりの部分では、振動板の後方に放射される音圧の一部を音響フィルターを通過させながら放射することで、振動板前後の音圧バランスを最適化するデノン独自の「アコースティックオプティマイザー」を内蔵する。ソニーのビートレスポンスコントロールと同様に、ハウジングの上部側面に大小2つの穴を設けて余分な音圧を放射することで、タイトで切れ味の良い低域再生を可能にしている。

トップにはアコースティック・オプティマイザーの孔を設けた

本機のサウンドもソニーの“ウォークマン”「NW-A16」にaptX接続した状態でチェックした。

本機の試聴もウォークマンAシリーズで行った(写真はケーブル試聴時に撮影)

低音の強靱さと豊かな量感が特徴的だ。ロックはバスドラの音色が深々と沈み、エレキベースのグルーブラインも実に骨太だ。低域は音色も豊かで彩りに富んでいる。エレクトロ系のダンスナンバーを聴くと、低域のエネルギーがぐいぐいと引き出されて壮大なスケールの音場が広がる。打ち込みは重鈍ではなく、余韻成分の広がりも瞬速。奥行方向への広がりは懐が深い。低域がクリアな中高域のサウンドに覆い被さってくることがなく、見晴らしが確保される。ボーカルの定位感、エネルギーの伝播力が損なわれることもない。

クラシックギターのソロ演奏では、ギターのボディの共鳴がふわっと広がりながら、トレモロの繊細な旋律も輪郭を明快に捉えることができる。中高域とのつながりもスムーズで、響き成分が充実していることも特徴だ。一体感に恵まれたバランスの良い演奏だ。

肉厚なイヤーパッドのおかげで、装着感が心地良いだけでなくパッシブのNC効果も高い。充実した低域の再現性にも結び付いている。特にノイズキャンセリング機能をオンにした方が、全体に低域の情報量がグンと増えて、音に豊かな厚みが加わるのでしっくりと来る感覚を得たが、インドアの静かな場所でクラシックやボーカルを聴く際にはオン・オフを使い分けても良いと思う。

本体のデザインは2012年に発売された初代のデノン“GLOBE CRUISER”シリーズから大きく様変わりして、高級ヘッドホンとしての質感もかなり高い。デノンが国内のレザー加工専業メーカーと一緒に開発した人工皮革がイヤーパッドやヘッドバンドに使われている。肌触りが心地良いだけでなく、経年劣化に対する耐性も高い素材なので、長く使い込んでも外観を美しいまま保てることもオーナーにとっては安心感につながる。本体はヒンジの部分も折り曲げて、付属のキャリングケースに入れてコンパクトに持ち運ぶことができる。メインの一台としてバリバリ活用してもいいヘッドホンだと思う。

しっかりとした作りのキャリングケースが付属する

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