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Apple WatchはApple Watch

Apple Watch レビュー|腕時計でもウェアラブル端末でもなく

公開日 2015/04/27 07:00 海上忍
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■アプリ実行環境として見た「Apple Watch OS」

Apple Watchには、システムソフトウェアとして「Apple Watch OS」が採用されている。現時点での最新バージョンは1.0、ビルド番号は12S507。母艦たるiPhoneで動作する管理用アプリ『Apple Watch』の「情報」画面で確認できる(それにしてもApple製アプリの直球すぎるネーミングは記事にするとき困る、どうにかならないものか)。

この『Apple Watch』は、Apple Watchで動作するアプリ(以下、Watchアプリ)の追加/削除や設定変更にも利用される。Apple Watchにも『設定』アプリは存在するが、明るさの調整や機内モードのオン/オフ、パスコードの登録といった基本的な設定しか扱えず、システムの更新を含めiPhoneに大きく依存している。かつてのiPhoneがパソコン(iTunes)なしでは利用できなかったように、Apple WatchもiPhoneなしではありえない。

Apple Watchのソフトウェア・アップデートはiPhone側(『Apple Watch』アプリ)で行う。Watchアプリの管理を行うのもiPhone側だ

Watchアプリ自体も、iPhoneへの依存度が高い。Watchアプリ『カメラ』を例にすると、起動するとただちにiPhoneの『カメラ』アプリを起動し、iPhone内蔵カメラが取得したイメージをApple Watchに転送する。シャッターはApple Watch側で切ることができるが、写真が記録されるのはiPhone側で、Apple WatchはiPhoneの『カメラ』アプリを遠隔操作するに過ぎない。位置情報を参照する『マップ』の道案内や『電話』で受発信する機能も、基本的なしくみは同じだ。

iPhoneとの通信を遮断すると、『マップ』などインターネット接続を前提としたWatchアプリは機能しなくなる。WatchKit Extensionで動作するアプリは、赤いiPhoneが表示され起動自体できない

この動作は、「WatchKit Extension」によって実現されている。この方式に沿って開発されたiOSアプリは、格納された機能拡張モジュールを外部(Watchアプリ)から呼び出し、連携して処理を行うことができる。iOSアプリからWatchアプリへ送信されるのは演算結果などわずかなデータであり、ボタン類や画像ではない。実際の描画はWatchアプリ側にあるリソースファイルで行うため、いちどに送受信できるデータは少ないが消費電力はわずかなBluetooth LEで足りる。WatchKit Extensionは、慎重に検討された"Watchアプリのあり方"なのだ。

もちろん、このしくみが最速・最良のアプリ実行環境というわけではない。当然、すべての処理をApple Watch上で完結できるアプリ(ネイティブWatchアプリ)のほうがパフォーマンスに優れる。これは、機能的にiPhoneに依存する必要がない『時計』や『ストップウォッチ』のキビキビとした動作からもわかるはず。

しかし、現在AppleはネイティブWatchアプリの開発をサードパーティーに認めていない。Apple Watchのパワーをフルに引き出せるネイティブWatchアプリを解放してしまうと、余裕があるとは思えないバッテリーの消費を速め、"腕時計"としての立場を揺らがしてしまいかねないからだろう。

そのような事情もあってか、Apple Watchの発売と同時に公開されたサードパーティー製アプリはいささか"紋切り型"に映る。個別製品について言及するまでもなく、「たまごっち」以外ゲームアプリが見当たらない(4月26日時点)ことからも明らかだ。

WatchKit Extensionを利用してアプリ開発を行うにしても、サードパーティーは制約が多い。フォースタッチはコンテキストメニューの表示にしか使えず、デジタルクラウンは画面を上下にスクロールするだけ。各種センサーへのアクセスや、手首を軽くたたいて通知する「タプティック・エンジン」の利用も、純正アプリだけに許された特権だ。

Appleとしては、「Apple Watch総体から得られるエクスペリエンス」を大切にするがために、Watchアプリの機能をコントロールしたいのだろう。それはそれとして理解できるが、アプリ実行環境として評価するには制約が多すぎる。つい、初代iPhone/iPod touchがサードパーティーに対しWEBアプリの開発しか認めていなかったことを思い出してしまうのだが…。

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