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モデル選びから耳型採取、完成まで一挙レポート

初めてのカスタムIEM(イヤモニ)製作記。Ultimate Earsの銘機「UE Reference Monitor」を作った

2015/03/24 編集部:杉浦 みな子
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■UERMで好きな音楽を聴いてみた

まず先にUERM全体の試聴感から。UERMの音はやはりフラット。また、楽曲を聴いているときにリズムそのものを楽しんでいることが多い私としては、ドラムなどのリズムが耳にビシバシ来てくれるのが好ましい。加えて自分の耳にフィットすることで高い遮音性を確保できているからか、店内試聴のときより音の輪郭がはっきりした印象で、情報量が多くなったように感じた。しかし空間に余裕があるので、情報量が多くてもバランスが良いのではないかと個人的には思っている。

プレーヤーは主にAK120IIで再生。あとiBasso Audio「DX90j」とかPC再生など色々試しました

結論を言うと、あくまでも私が好きな音楽を私自身が聴く場合においては、理想的にニュートラルな音。むしろ正直すぎ。もしこのUERMが生身の男性だったら、「君の正直なところは好きだが、時には必要な嘘もついてほしい」と言いたくなるほどニュートラル。しかしご存知の通り、UERMは普通にカスタムIEMなので(←当たり前)、私も心から愛せる。それどころか私の耳にとって素晴らしいパートナーであることは間違いないので、一生モノの一台として末永く一緒にいたいと思っている。以上が全体的な感想。続いては、手持ち音源の試聴感をお届けしたい。

■ポップスとかライブ音源とかアイドルソングとかハイレゾとか、色々聴いてみた

まずは大滝詠一『Best Always』を聴く。すごい。UERMのおかげで「ナイアガラサウンドが見えてくる」といっても良いくらい。例えばサイダーCMシリーズ。UERMで聴いた「Cider '77」なんて、それこそ瓶の中でサイダーの細かい泡がシュワシュワはじけていくように、中高域の音が連なっていく。「ひとりでふたりで…」と、もうすごい爽やか。ただただ三ツ矢サイダーを飲みたくなるサウンドだ。

続いて、たま『まちあわせ』を聴く。期待通り、UERMのニュートラルさは、たまのアコースティックな楽曲とドンピシャの相性。実はUERMを初めて店頭試聴したときも、本作収録の「そんなぼくがすき」を聴いて好印象を持ったのだった。アルバム全体を通して、リマスタリングの効果をめいっぱい享受できる。UERMの作り出す空間の中に、ギター、ベース、オルガン、鐘、桶…などなど、色んな楽器のアコースティックな音色が立体的にどんどん現れてきて楽しい。あとやっぱり中域が清々しく気持ち良くて、知久氏と柳原氏のハモリパートを聴いたときには、改めて2人の声の不思議な相性を実感して唸った。

ちなみに収録状態が多分に影響するとは思うのだが、UERMでライブ音源を聴くと、ステージの空気感や演奏家の緊張感が頭内に凝縮されるようで良い。戸川純『TOGAWA LEGEND DISC1』に収録された「パンク蛹化の女」は、UERMで聴くと現場のギリギリな空気感が伝わってきて、改めてこのライブ音源は、実はこんなに凄いモノを収録していたんだと思った。

続いて昨今のアイドル界隈の曲も試してみようということで、女性アイドルからももいろクローバーZ「BIONIC CHERRY」と、STARMARIE「帝王の華麗なアリバイ」を再生。「BIONIC CHERRY」は、スネアやバスドラなどのドラム音全般がスピーディにビシバシ来て、本曲のパンクで痛快な歌詞の世界をより盛り上げる。「帝王の華麗なアリバイ」は、所々で挟み込まれるドラムンベース音やアコギの音色、細かいSE音までクリアに聴き取れることで、楽曲の不気味で切ない世界観がより奥行きをもって伝わってくる。アイドルの楽曲は踊ることを前提に作られている面があるので、リズムがビシッと決まることで楽曲の印象が一層シまる印象だ。あと「女の子の中高域の声」を味わい深く楽しめるのも良い。

最後に、ハイレゾ再生も試してみる。はっぴいえんど『はっぴいえんど マスターピース』の付属DL音源からアルバム『はっぴいえんど(96kHz/24bit・WAV)』を聴いた。ドライなロックと湿っぽい日本語が対比する音の世界が「見えてくる」イメージ。より深いところに手が届いて、1つ1つの音を自分の近くに持ってきて楽しめる感覚というか。それはオーディオ的な聴き方ではないのかもしれないが、個人的にはとても楽しい。「朝」の歌い始め、まるで大滝氏の口元が朝の“あ”という形に開く瞬間が目の前に見えたような、そんなリアルな空気感と息づかいが感じられた瞬間に、改めて聴いてて楽しいなと思った。

そのほかには、コーネリアスのアルバム『Sensuous(96kHz/24bit・FLAC)』を聴いたときも、改めて面白いと思った。このアルバムは、自分の頭の中に色んな音色を鳴らすたくさんの弦が埋め込まれていて、小山田氏が私の脳内に指を突っ込んでそれを直接はじいているような聴こえ方がするんだなと感じた。こんな風に、これまでにも何度か聴いている楽曲の面白さをUERMで改めて発見することが多い。

■終わりに

最後に。これだけ長々と書いてきたくらいなので、もちろんUERMのことは相当気に入っている。しかし普段の使い方として、電車の中や外を歩きながらの使用は、遮音性が高くて危ないのでしていない。宅外で使う場合は、1つの場所で長時間動かないときが前提。具体的には「喫茶店に入って3〜4時間記事を書く」みたいなときによく使っている。そのほかも基本的に屋内で使っていて、夜寝る前のリラックス時にUERMで音楽を聴きながらスマホの四川省ゲームをしているときなどは至福だ。

ちなみにUERMについて全く不満はないのか? といったら、一応なくもない。…というのは要するに気分の問題で、UERMとは正反対の派手目な音で、ジャラーンと音楽を楽しみたい開放的な気分の日もあるわけだ。落ち着いた正論が聞きたいんじゃないだよ、今はただはっちゃけたいんだよ!みたいな。次にカスタムIEMを作るなら、そういう派手目な気分のときに聴くやつを作りたいな。…って、この思考回路がカスタムIEMの沼というやつか。危ない…。

というわけで、ここまで7,500字くらい使ってあれやこれや書いてきたわけだが、それも全て最後のこの一言に説得力を出したいがためのもの。カスタムIEM作って良かった。

(Phile-web編集部:杉浦 みな子)

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