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【特別企画】4K配信コンテンツの実力は?

連載第2回:「ひかりTV 4K」の画質に貝山知弘&山之内正が迫る

公開日 2014/09/09 12:00 貝山知弘・山之内正
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ネイティブ4Kのコンテンツが強く待ち望まれるなか、10月に本格運用を開始するひかりTVの4Kオンデマンドサービスに期待が高まっている。広く普及しているNTTフレッツ光回線を利用する手軽さや、家庭の4Kテレビでネイティブ4Kコンテンツが見られる希少性もあり、話題には事欠かないのだが、一番気になるのはその画質だ。実証実験レベルから一歩踏み込み、実際のサービスに近い状態での映像を確認することができたので、その印象を紹介することにしよう。


まず結論から言うと、AQUOSのLC-60UD20に映し出された4K/60p映像が与えるインパクトは、事前に私が想像していた水準を確実に上回っていた。今後H.265/HEVCエンコーダの性能が時間とともに向上することを視野に入れれば、映像の表現力はさらに深まるはずだが、2K映像との質感や立体感の違いは現段階でも明らかで、見る者を引き込む力を持っている。

STBなどの機材を確認する山之内氏

デモンストレーション映像のなかには、最小限の照度で撮影した夜景、ランダムな細かい動きを見せる水面など、4Kカメラの課題や圧縮技術の限界を検証する映像が含まれているため、これから解決すべき課題がまだ存在することにも気付かされる。特にカメラの感度の問題は着実な改善が進んでいるとはいえ、まだHDと同等とは行かず、場面によっては発色やS/Nなど具体的な課題が浮き彫りになる。

しかし、そうした極端に難しい場面以外の条件の良い映像、つまり明るさなどの撮影条件をクリアし、圧縮技術のマージンが期待できるような場面を見る限り、目立った弱点を指摘するのは難しい。逆光の自然なコントラストや奥行き方向に深みのある遠近感はフルHDの枠組みでは到底実現できないレベルにあり、映像に説得力を与えている。

■「今回の視聴を契機に4K配信への期待はますます高まった」


いくつか用意された番組のなかでは、特に大相撲の臨場感とリアリティの高さに圧倒された。土俵の精緻な描写はもちろんのこと、力士たちの身体から発せられる熱気までも伝える空気感、紅潮した肌の立体感など、フルHD映像では気付きにくい見どころがいろいろ見つかるのだ。

じっくり時間をかけて完成されたドキュメンタリー番組「下町ボブスレー」は、町工場から競技会場まで、撮影条件の異なる様々な環境下で4K映像の可能性を探った意欲作だ。金属や氷の質感をリアルに再現することはこれまでも大きな課題とされてきたが、フィルムやHDなど他のメディアに比べて4Kならではの利点は確実に存在する。それを一言で表すと、たんに細部をきめ細かく再現するだけでなく、素材の質感(テクスチャー)の再現力がきわめて高いことに集約できる。金属の硬質感はひんやりとした冷たさを伝え、氷の青みがかった透明な質感は絶対的な温度の低さを伝えるという具合に、質感表現の中身は人の感覚を直接左右する。カメラがとらえた2次元の映像とはいえ、立体感や重量感の描写にも明らかな優位性が感じられた。

「下町ボブスレー」ではフルHDに比べて立体感や重量感の描写にも明らかな優位性が感じられた

この作品はシーンによって撮影機材をきめ細かく使い分けている点にも注目しておきたい。動きの激しいボブスレーの滑走シーンではGoProをオンボードカメラとして採用し、あえて30フレームで挿入するなど、スピード感を表現する工夫が効果を発揮している。60フレームで撮影された通常の走行シーンとの差を際立たせることで、映像に起伏を生んでいるのだ。完成した作品を見ているだけでは気付きにくいことだが、機動性を生かした機材の選択など、4K番組の製作現場にはすでに多くの選択肢が提供されている。ニュースやドキュメンタリーを含め、あらゆる分野で4Kが切り開く可能性は非常に大きいと感じた。

最後にオリジナル・フィルムを4Kスキャニングして製作された「ゴジラ4Kプロジェクト」(日本映画専門チャンネル提供)のリマスター映像を見た。

既存のHD版との比較はしていないが、第一作のモノクロ映像を見ただけでリマスター版のメリットは一目瞭然、あえて比較する必要はない。ディテール再現力の向上はいうまでもないが、それに加えて緻密なレストアがもたらす効果が絶大で、コントラストやカラーバランスの向上も著しい。ダイジェスト編集された映像を順番に見ていると、撮影に使われた模型の精度や特撮技術が年々進化していく様子が克明に伝わり、オリジナル・フィルムに焼き込まれた力強さに圧倒される。

4K映像のリアリティはこれまでのテレビの概念を一変させる力を秘めている。今回の体験では、視覚情報の密度が上がると時間が短く感じられることに気付いた。見る者を引き込む力が強く、深いインパクトを与えることがその理由だろう。今回の視聴を契機に4K配信への期待はますます高まった。


次回はさらに3人の評論家が4K VODサービスを体験。その感想を鼎談で大いに語り合う様子をレポート予定!

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