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4人の筆者によるオーディオ連載

角田郁雄のオーディオSUPREME【第3回】ソニー「HAP-Z1ES」「TA-A1ES」を導入した理由

公開日 2014/09/08 13:57 角田郁雄
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私が気に入っているのは、これら回路に加えて、TA-A1ESの電源部である。トランスにはOFC線が使われており、巻線にワニス塗布する方法は真空含浸を用いている。中央後部には充実した整流回路が搭載され、プリアンプ部、MUSE音量調整などの制御に必要なマイコンなど各部に電源を供給する。また、出力段用として左右に各2個の大容量カスタムコンデンサーが配置されている。こうしたTA-A1ESの回路全体を見渡すと、私には「アクティブに音量が可変できる広帯域ハイスピードパワーアンプ」というイメージに映る。とてもこの価格では考えられないほど高品位な内容であり、開発メンバーの強い意向が反映されているのを実感する。20万円クラスのインテグレーテッド・アンプを探しておられる読者にはぜひ聴いて欲しい、そして推薦できるモデルである。

ディスクリート構成のバッファーアンプ回路

■透明度の高い音質と使い勝手を両立したファイルプレーヤー「HAP-Z1ES」

HPA-Z1ESについては、すでに様々な媒体で多くのレビューが紹介されているが、ここで私が気に入っている技術を紹介したい。まず、そのひとつは、ハードディスクと専用のCPU制御ボードがオーディオ回路と同居しているにも関わらず、ノイズ皆無の、透明度が高い音質を実現していることである。

内部を見ると、フロントパネルの裏側付近にハードディスクとCPU制御ボードが配置されているが、これらはフロントディスプレイ部と共に、D/A変換回路を含めたアナログボードと距離が置かれている。さらには一部にシールドが施されていることも確認できる。また、デジタル用とアナログ用で個別の電源トランスを搭載し、中央にはそれぞれの電源回路が基板を分離して配置されている。各デジタル/アナログ回路に太めのワイヤーを使用し、直接給電していることも見てとれる。デジタル部とアナログ部の電源の分離や干渉の排除にも徹底して配慮されている。

ラックに収められたHAP-A1ES。角田氏はその音質はもちろん、完成度の高い使い勝手にも着目している

2つ目は、全てのPCM信号を5.6MHz DSDに変換できるDSDエンジンと、DACチップに32bit型のバー・ブラウン「PCM-1795」を左右2個使用した完全バランスのアナログ回路の組合せである。本機を実際に使ってみて感じるのだが、DSDエンジンは単に5.6MHzDSDに変換するだけではなく、倍音の再現性やDSDが本来持っている音の柔らかみ、自然な音の階調を存分に発揮させているのである。

そして、PCM-1795内部のアナログFIRフィルターと、左右2個のDACを1クロック遅延させ差動動作させる移動平均フィルター、そして後段のオペアンプによるローパスフィルターとの組合せにより、DSDの高域ノイズを理想的に低減すると同時に、透明度の高い空間と、音ににじみを感じさせないリアルな音像を実現している。

ハイレゾ音源の豊かな倍音を引き立てていることも、大きなアドバンテージだ。DSEEという圧縮音源やPCM音源の失われた微細な音を復元する技術は、192kHz/24bitのハイレゾ音源にも効果を発揮し、音の密度を向上させた“厚み”、繊細さを加えてくれる。

■本体操作のみでファイル再生が行える点にも注目したい

3つ目の魅力は、使いやすさだ。iPadに「HDD Audio Remote」というアプリをインストールして本機と無線接続すると、無線LANルーターを使わずとも、本機のWi-Fi機能を使って直接選曲や再生ができる。またTA-A1ESとLINKケーブルで接続すれば、ボリュームコントロールや電源オン/オフの連動まで可能になる。私は以前、近い将来iPadでデジタルプレーヤーだけではなくアンプのコントロールも可能になると予測したが、ソニーは既にそれを実用化していのである。

HAP-A1ESのディスプレイ。iPadやパソコンを用いずに、本体操作のみでライブラリの検索や再生の操作ができる

さらに、iPadを使わずとも、CD再生と同様に本体のボタンとジョグダイヤルで選曲でき、リスニングポジションに戻ってからはリモコンでも操作ができる点に、いたく感心した。本機の機能はここでは紹介しきれないほど充実していて、使いやすさを考え抜いたユーザー・インターフェースには、ソニーのインテリジェンスを感じさせられる。

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