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4人の筆者によるオーディオ連載

角田郁雄のオーディオSUPREME【第3回】ソニー「HAP-Z1ES」「TA-A1ES」を導入した理由

公開日 2014/09/08 13:57 角田郁雄
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■「Z1ES」と「A1ES」を自宅に招くことを決めた

私は、すっかりこの音に惚れた。このアンプは、これまでに検討していた他のアンプの候補も忘れさせてしまった。自宅に着き、早々にラックの幅を測って、カタログに表記されたサイズと比較した。すると、ラックの幅にベストマッチの430mm。440mmだったらアウトだった。ほっと胸を撫で下ろし、このHDDプレーヤーとプリメインアンプを注文し、並べることにした。

その様子は写真のとおり。MAGICO「S1」やQUAD「ESL2812」をドライブできるように長さ6mのスピーカーケーブル(AudioQuest Roket88.2)を新たに新調し、スピーカー端子で切換えて使うようにした。HAP-Z1ESとTA-A1ESの間は、手持ちのAudioQuestの初代SKY 1mで接続した(バランス接続)。ちなみにAudioQuestのケーブルは、ソース機器の倍音の再現性を損なうことなく、音場と音像の対比や音の透明度を引き立ててくれる印象で、2階の部屋ではメインの伝送ラインとなっている。

AyreやPlayback Designsのハイエンドオーディオ機器に並んで、HAP-Z1ESとTA-A1ESが設置されることとなった

電源ケーブルは、付属のケーブルがしなやかで高品位で、気に入ってそのまま使用している。私の試聴ルームではオーディオ専用に別系統の電源を引いているが、電源汚染までは解消されず、電源歪みは約3%ある。そこで、HAP-Z1ESにはアキュフェーズのPS-510から給電を行っている。

■通常音量ではA級動作を行うプリメインアンプ「TA-A1ES」

さて、TA-A1ESの音だが、普段使用しているセパレート型アンプと比較するなら、より豊かな楽器や声の倍音を聴くことができる。詳しくは後述するが、これはTA-A1ESが通常の音量においてはA級動作するからである。

角田氏の2階試聴室にて、TA-A1ESはMAGICO「S1」やQUAD「ESL2812」を鳴らしている。スピーカーケーブルはAudioQuestの「Roket88.2」だ

このTA-A1ESの技術的魅力を少し説明しよう。内部を観察すると、左右シンメトリーのデュアル・モノラル・レイアウトが特徴だ。放熱器を見ると、出力トランジスタをいくつも並列に使ってハイパワーを生み出す方法ではなく、本機が1対のバイポーラ・トランジスタを使用(シングル・プッシュプル・ドライブ)していることが確認できる。この手法で80Wの出力を確保し、トランジスタを並列化したアンプよりも鮮度の高い音質を実現するのである。

さらにはトランジスタの熱暴走を防ぐためのエミッタ抵抗を削除し、パワーアンプの付加容量に対する発振止めの出力コイルや、位相補正コンデンサーまでを排除。出力トランジスタが直接スピーカーに接続されるかような技術を開発した。この出力コイルや位相補正コンデンサーの削除と、真鍮削り出しの大型スピーカー端子が、ダンピングファクターを向上させている。こうした技術による瑞々しい音こそ、本機が「Hi-Res Audio」のマークを冠する大きな理由だと、私は実感するのである。

TA-A1ESの筐体内部

また本機は全段ディスクリート構成で、薄膜抵抗で構成されるMUSE電子ボリュームを搭載する。その前段には、音質劣化、変化のないように低いインピーダンス特性のFET入力による入力バッファーを搭載。出力段の前段のドライバー段にもA級のディスクリート回路が搭載されている。さらにディスクリート構成で3段階のゲイン切換えができるヘッドホンアンプは、電源電圧とバイアスを切換えることにより、インピーダンスが適合するヘッドホンでは純A級動作する仕組みとなっている。

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