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一貫したブランド哲学の背景を探る

ウィーンアコースティクス本社を訪問 ー 25年ものあいだ“本物”であり続ける理由とは?

2014/09/01 山之内 正
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原点の同軸ユニットを追求し日本にも導入された「リスト」

ここで、日本にも最近導入された「LISZT」(リスト。レビュー記事はこちら)を例に挙げてウィーンアコースティクスの最新技術とこだわりを紹介しておこう。フラグシップのTHE MUSICと同様、フラットスパイダー振動板を採用した同軸ユニットをスイーベル機構付きの独立キャビネットに収めたフロア型モデルだ。製品の開発意図をガンシュテラーは次のように説明した。

日本でも6月から販売を開始した「リスト」。フランツ・リストの名を冠した本機は、最新の革新的なフラットスパイダーコーンを備えたハイエンドモデル。最高峰モデル「THE MUSIC」をスケールダウンしたような形状で、日本のオーディオファンも導入しやすいはず。価格は¥1,000,000(1本)となっている

「同軸ユニットの技術を手頃な製品にも導入したかったのです。そのために2年かけて同軸ユニットを新開発し、超高域の再生帯域を広げるなど、特にトゥイーターを大幅に改善しました。同軸ユニットのメリットは以前から注目していましたが、もう一度その原点に戻ったのです」。

振動板を単にフラットにするだけでは十分な強度が得られないが、ウィーンアコースティクスは特殊なリブ構造を導入し、構造の工夫で剛性を確保することに成功した。振動板は特殊樹脂TPXにグラスファイバーを混入させてさらに剛性を改善、乳白色の外見はそこに理由がある。磁気回路に今回からネオジウムマグネットを導入することで小口径の同軸ユニットを実現した点も重要だ。

「リスト」の上部エンクロージャーに使用しているフラットスパイダーコーン。写真中央下はユニットのコーンの部分。3種類のポリプロピレンが合成された独自の高機能樹脂「X3P」と、グラスファイバーを混合した素材を使用し、高剛性・超軽量・高い制動性を実現する。このコーンの部分も何度も試作を繰り返したという

写真右が「リスト」の、左は最高峰モデル「ザ・ミュージック」のフラットスパイダーコーン

スピーカー作りの基本思想は一貫している。「まず音楽ありきです。固有の音を持つ異種素材を組み合わせながら音楽的な音を作り上げていくプロセスは楽器作りに似たところがありますね。音楽的な音にはエモーションが不可欠で、それを聴き取ることが大切です。測定も重要ですが、まずは自分の耳を信じること。その基準はずっと変わりません」。

ウィーンアコースティクスが一貫して音楽的なサウンドを実現している理由は、このガンシュテラーの言葉からもはっきり読み取ることができた。

(山之内 正)

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