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【レビュー】JVCの4K対応プロジェクター実力徹底検証(2)− 50万を切る価格を実現した「DLA-X500R」

公開日 2014/02/12 09:30 山之内 正
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JVCはフルHDから4Kに向かう時代の流れを先取りし、プロジェクターの4K対応を積極的に進めてきた。「DLA-X500R」はその流れを加速するべくコア技術のD-ILAとe-shiftをさらに進化させた第三世代機で、上位機種の「DLA-X700R」とともにホームシアターの最先端を切り開く役割を担っている。心臓部をX700Rと共有しながら50万円を切る低価格を実現した「DLA-X500R」は、4Kへのステップアップを狙う映画ファンにとって大いに気になる存在だ。

「DLA-X500R」¥OPEN(予想実売価格498,000円前後) 。カラーはブラックのほかホワイトも用意する

本機の映像からは、D-ILAならではの余裕のあるコントラスト表現に加え、妥協せずにじっくり画質を追い込んでいることがうかがえる。ただし、そのチューニングの方向はX700Rとは異なっていて、両機の間にはすぐに見分けられるほどの違いがある。ひとことで言えば本機の映像はX700Rに比べて「4Kらしさ」をよりわかりやすく提示し、コントラストとディテールの高さを力強くアピールする。

映画モードは1種類の「シネマ」に集約し、カラープロファイルも2Dと3Dそれぞれ2種類しかない。しかし、このシネマ設定はとても柔軟で対応力が高く、傾向の違う作品から説得力のある映像を引き出してくる。

『サウンド・オブ・ミュージック』は細部のコントラストの高さで人物の表情を生き生きと描き出し、特に屋外シーンは遠景まで高密度に光のエネルギーが及んで力強い。マリアがトラップ邸を訪れる場面では背景のディテール描写に誇張がなく、しかもグレインノイズを消しすぎることもない。MPCで精細度を引き出すときのさじ加減は旧世代機に比べてずっと自然になったように感じる。

もともとノイズがほとんど存在しない『オブリビオン』は本機のシネマプロファイルとの相性が特に優れた作品の一つだ。ランプを「低」に設定して約120インチのスクリーンで視聴したのだが、明るさに不満はなく、しかも暗部から中間輝度にかけてほどよく落ち着いたトーンを引き出す。その設定の巧みさは、スカイタワー内の精密感の高い描写だけでなく、緑豊かな湖畔の場面での自然な遠近感など、画角が広く情報量の多い映像からも読み取ることができた。従来機種からの進化として見逃せないのがこの遠近感の豊かさで、4Kならではの精細感を引き出す手法がいっそう洗練されていることを実感する。

『007 スカイフォール』をMPC「オート」で見ると、あえて一歩踏み込み、コントラストとディテール再現を際立たせていることがわかる。場面によってはディテール描写がやや硬めに感じる場合があり、スコットランドの風景などもう少しなめらかな遠近感を引き出したくなるが、その場合はMPCの設定値を少し抑えればよく、好みの画調に追い込むことは難しくない。

HD収録のステージ映像は背景の黒の描写にX700Rとの違いがあるが、遮光や迷光対策を十分に追い込んだ環境は別として、最暗部の輝度差はほとんど気付かないほど小さい。本機の場合、暗い場面の多いオペラは「ステージ」よりも「シネマ」モードの方が人物などハイライトの階調をなめらかに描き出し、自然な立体感を引き出すことができた。

新世代のD-ILAパネルと新世代のMPCを積む本機の登場によって、4Kプロジェクターは普及を視野に入れた新たなステージに上った。

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