3名のオーディオ評論家がDCD-SX1のサウンドに迫る

デノン「DCD-SX1」連続レポート - 大橋伸太郎が“マイフェイバリットCD”をSX1で聴き尽くす

大橋伸太郎

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2013年12月04日
■リアルタイムで見たツェッペリンのステージをDCD-SX1で追体験

さて、ビートルズが解散し私を興味は日の出の勢いのレッド・ツェッペリンに行った。私が中学三年の時の初来日にはチケット争奪戦となり、何とか手に出来たのが「C券」。武道館バックステージ脇の2階席で大学生や社会人に混じって、MC糸居五郎に紹介されステージに登場した4人を食い入るように見つめた。

レッド・ツェッペリン『レッド・ツェッペリンIV』(WPCR-75004 ワーナーミュージック)

今回DCD-SX1で聴いたのは、初来日時に発売を控えていた『レッド・ツェッペリンIV』だ。本機で聴いて衝撃的だったのはそのS/Nだ。レコードの音が記憶に焼き付いていることもあるが、DCD-SX1で聴くとS/Nが飛躍的に良い。無音部分が描き出せるため、音響空間に奥行きがある。このスペースに「ブラックドッグ」のジョン・ボーナムのドラミングが立体的に表現される。スネアドラムの打撃の芯を捉える低域の解像感も素晴らしい。「天国への階段」は、イントロのアコギの金属弦の分解能が素晴らしく、クライマックスの一体になってのアンサンブルまで一貫して解像感を失わない。第3作から見ると飛躍的に改善された録音とミックスの過程がよく分かる。実質3人でよくこんなに厚い音が出せるなという当時の疑問を、DCD-SX1が解き明かしてくれた。

■キング・クリムゾン『太陽と戦慄』は印象が一変した

次に私を虜にした音楽がプログレッシブ・ロックであった。50代半ばを過ぎても専門店に出入りしている始末だから、いかに深い影響を受けたか分かるというもの。プログレのバンドは音の個性を競い合っていたが、最も深く傾倒したのがキング・クリムゾンであった。このバンドで最も好きなアルバムのひとつである『太陽と戦慄』をDCD-SX1で聴いてみた。

キング・クリムゾン『太陽と戦慄〜40周年記念<2HQCD>』(IECP-20220/221 WHDエンタテインメント)

本作のサウンド面の特徴と魅力はダイナミックレンジにある。1960年代末にロックンロールがニューロックに向かい音圧がラウドになった。同時に、コントラストを活かして劇的な効果を狙うようになる。ツェッペリンもその先駆だが、弱音から最強音まで生かした構築的な音響をアルバム全編で繰り広げたのはプログレからである。有名な例がEL&Pの『展覧会の絵』だが、クラシック曲のリメイクだからダイナミックレンジが広いのは当たり前だ。オリジナルなロック作品で最弱音から轟音までダイナミックレンジを活かしたトータルアルバムが『太陽と戦慄』だった。

本作はハーフスピードカッティングの高音質盤LPも後に発売され、CDも比較的早く出たが、近年のリマスターCDで音源が持っていたポテンシャルが現れたと言っていい。正直、1973年に私がLPで聴いた演奏とは別物である。新しい音楽作品と言っていい。こうしたリマスターのアプローチには賛否両論あるが、DCD-SX1で聴いたこの演奏は、議論を忘れさせる程の圧巻である。ジョン・ウェットンやブラッドフォードの在籍した時期の最高傑作は『レッド』と考えていたが、リマスター盤をDCD-SX1で聴き直すと『太陽と戦慄』の方が上であると認識を改めた。

クリムゾンの音楽は、スタジオ録音技術に頼ったヘッドミュージックであるピンクフロイドと違い、演奏技術の高い奏者同士のインタープレイが基本である。コンボのインタープレイには演奏が入り込む“スペース”があってできる。『太陽と戦慄』はスタジオライブ的な性格が強い。

DCD-SX1のS/Nが非常に高いので、リマスター盤でのS/Nとダイナミックレンジの大幅な改善が活きる。音場の中の無音部分に楽器が入り込み、実在感の伴った迫真の演奏を聴かせてくれるのである。

「AL32」が名盤の感動を新たにする

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