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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第67回】ただの色物じゃない!ソニーのヘッドホン/スピーカー合体ウォークマンを試す

公開日 2013/11/29 11:32 高橋敦
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■まずは注目のスピーカー再生からチェック!

さてでは音をチェック!まずはもちろん期待のスピーカー再生からだ。

…ええっと、まあ正直、この小ささのスピーカー再生じゃあそんないい音になるわけはないよね…的な音であることは否めない。何しろ低音が絶対的に出ておらず、リズムの要であるベースがその表層の音しか届いてこないというか、輪郭はしっかり聴こえるが輪郭しかないというような状態だ。

しかし一方で、無理矢理に低音を出していないからか、全体としてキレはよく、ヘヴィなグルーブの再現は無理だが、軽快なドライブ感はそれなりに感じられる。また歌は耳心地の良い、ややソフトでふわっとした感触かつ十分にクリアで聞き取りやすい。主に歌もののポップスを聴くユーザーが、これはこういうスタイル(首かけ)で使えることに意味があるんだ!というところを納得して選ぶのであれば、これはこれでいけるだろう。

ヘッドホン再生ではないスピーカー再生ならではの空間性という点についてどうかというと、ヘッドホン再生とはやっぱり異なるが、通常のスピーカー再生ともやっぱり異なる。センター定位のボーカルはヘッドホン再生のように頭の内部に定位しつつ、コーラスやシンセの上物などが頭の周囲に飛び出して定位したりするのだ。あくまでも頭の「周囲」という程度で極端に広がるわけではないが、このあたりはVPT処理の効果だろう。聴き慣れない音場なのでなかなか面白い。もちろんヘッドホンのように頭の中に音をぎゅうぎゅうに詰め込まれる感覚は全くないので、あの感覚が苦手な方にはおすすめできる。

■ヘッドホンとしての再生は?

今回は脇役だが、ヘッドホン再生の方もチェックしておこう。

傾向としてはソフトでウォーム。抜けの良さやスピード感といった要素はやや控えめだが、こちらも聴き疲れしないように意識してチューニングしてあるように思える。低音は通常の状態でも十分に豊かだが、「サウンドエンハンスメント」でさらに「これでもか!」というレベルにまで引き上げられる。低音の出ないスピーカーモードとの落差が激しく、利用スタイルも音質傾向も二重人格的な製品だ。ここまではっきりと違うと、もう別物として楽しめるだろう。

…というわけでソニーの新提案、ヘッドホン/スピーカー一体型ウォークマンNW-WH300。こんな製品をうかつに作ったら色物&出オチに終わるところだが、そうはならないのがソニー。既存モデルでの実績もあったが、ディスプレイがないことを逆手に取り、手動で選曲しなくても楽しめる使い方の発展系(ZAPPIN)を提案するあたりなどはさすがだ。

個人的には、ウォークマンではなくまたヘッドホンでもない、首かけスピーカーリスニング専用のBluetoothモデルをより安価に提案してみるのも面白いのではないかと思う。ウォークマンやヘッドホンの部分に投じるスペースやコストをスピーカーに回せば、スピーカーとしての音質をより引き上げることもできるのではないだろうか…。そんな妄想も広がる、ちょっと気になるアイテムだ。


高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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