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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第66回】iOS 7で実現! iPhoneからハイレゾ出力する方法を徹底ナビ

2013/11/19 高橋敦
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■カメラアダプタ経由で動作するUSB-DACと動作しないUSB-DACの違いはどこ?

というわけで、USB-DACとしてHERUSを使った場合は、iOS機器+カメラアダプタ+USB-DACでの再生は簡単に動作し、確かにハイレゾな音質を得られることを確認できた。

しかし、HERUSのようにカメラアダプタ経由でしっかり動作するUSB-DACと、その環境では動作しないUSB-DACの違いはどこにあり、何を目安に推測すればよいのだろうか。断言はできないのだが、目安としては、以下のところはポイントとして挙げられる。

1)USBバスパワー駆動のモデルは動作しない可能性が高い
2)電源を自前で持っているモデルは動作する可能性が高い
3)セルフパワーUSBハブを挟むと動作する場合もある


1)USBバスパワー駆動のモデルは動作しない可能性が高い

自身に電源を備えずUSB接続されたホスト機器(PCやこの場合はiOS機器)からのUSB給電で動作するバスパワー駆動製品は、カメラアダプタ環境では動作しない場合が多い。これは単に、iOS機器の側の電源供給能力が不足するためのようだ。この場合、iOS機器の画面にそのような警告画面が表示されることもある。

例えばiBasso Audio D55をカメラアダプタに直接つなぐと、このような警告が出て動作しない

しかし例外はある。というか今回使わせていただいたHERUSはまさにその例外の代表だ。HERUSはバスパワー駆動だが超低消費電力化されており、カメラアダプタ環境で正常に動作する。超低消費電力とはいえiOS機器への負荷はありバッテリー消費は目に見えて早くなるが、他に電源アダプタも内蔵バッテリーの充電も必要ない身軽さは、ポータブル利用を考えている方には特に大きなメリットだ。

2)電源を自前で持っているモデルは動作する可能性が高い

先ほどのバスパワー問題の逆を言えば、自身に電源を接続して使う据え置き製品や、ポータブル型で自身にバッテリーを内蔵している製品は、その点で弾かれる恐れは少ない。
のだが、これも100%確実ではなく、動作しない製品もあるので安心はできない。この場合はおそらく、電源ではなく何か他の要因でうまく動作しないものと思われる。

このタイプでメーカーが動作確認を明記しているものとしては例えば、iFI-Audio「nano iDSD」がある。この製品の電源は内蔵バッテリーだ。機能的にも、DSD対応(再生アプリ「Hibiki」のアップデートによって対応予定)などHERUS相当の機能に加えて、ライン出力&デジタル出力、Android4.1搭載機器との接続にも対応と充実している。

nano iDSD。価格は現時点で正式には未定だが、3万円以下を狙っているとのこと

編集部の実験では、独立電源の据え置き機Olasonic NANO-D1での動作も確認(http://www.phileweb.com/news/d-av/201309/19/33759.html)

一方、例えば前述のiBasso Audio D55は内蔵バッテリーによる動作モードも用意されているのだが動作しないなど、その挙動はやはり製品ごとに異なる。

3)セルフパワーUSBハブを挟むと動作する場合もある

そのままでは動作してくれないバスパワーUSB-DACでも、iOS機器→カメラアダプタ→セルフパワーUSBハブ→バスパワーUSB-DACという接続にすると、動いてくれる場合がある。

セルフパワーのUSBハブ。ハブに電源アダプタ入力が付いていることでバスパワーハブと見分けがつく

iBasso Audio D55はカメラアダプタ直結では動作しなかったが、このようにセルフパワーハブを挟むと動作した

セルフパワーUSBハブは、それに電源アダプタを接続することで下流のUSB機器に電源を供給できる。これを間に挟むことでバスパワーUSB-DACへの電源供給の負担を(iOS機器に頼らず)ハブで肩代わりでき、うまく動作するようになる場合があるのだ。

接続が煩雑になりハブを挟むことでの音質への影響も懸念はされるが、「これで動いてくれればラッキー」という感じで試してみるとよいだろう。もちろんこの方法はポータブルでの利用は無理があるので、室内システム向けだが。


…というわけで、iOS 7+カメラアダプタ+USB-DACでのハイレゾを含めての高音質再生。繰り返しになるが何しろ裏技なので、「この条件を満たせば確実に動作する!」と断言できるものではないというのが実情ではある。

しかしHERUSやnano iDSDのように、メーカーが独自に動作を確認している製品も登場しつつある。そしてHERUSを聴いた限りではその実力は、スペックの上の話だけではなく実際の音質でも、ハイレゾ対応と言うに値する。ポータブル再生環境の高音質化、ハイレゾ対応の切り札になることはもちろんだ。それに加えて、iOS機器ならではの操作性、使いやすさも考慮に入れれば、自宅でのハイレゾ再生環境としても悪くない選択肢だ。

非公式な使い方なので、突然打ち切られるかもわからないというのは少し不安ではあるが、それでも試すだけの価値、面白さも実用性もあるテクニックだ。


高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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