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【特別企画】優雅なデザインと生真面目な音質を兼備した真空管ヘッドホンアンプ

個性的な“真空管ポタアン”Carot One「NIK58-TUBE」を岩井喬が聴いた

公開日 2013/11/19 11:00 岩井 喬
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続いてソース源を「AK120」に切り替え、ハイレゾ音源もチェックしたが、リッチなローエンドは分解能が高く、ボーカルをはじめとした高域のタッチをヌケ良く爽快に描き出す。ホーンセクションの旋律も密度を伴った鮮明で分離良い響きとしてくれる。R&B系のファンキーなリズム隊はファットで力強く粘りあるビートを聴かせ、カリッとしたウェット&クールなボーカルの浮き立ち感と好対照だ。ハイレゾらしい高解像度でS/Nの良いサウンド性をじっくり聴かせるというよりは、音楽の持つパッションを鮮やかに縁取りつつ、耳当たり良い音色にまとめ、本質を変化させない程度に彩ってくれる傾向にあるようだ。

■絶妙なバランスで真空管サウンドが楽しめるワン&オンリーなモデル

「NIK58 TUBE」はそのドライブ能力の高さによって、一般的に鳴らしにくい部類に入る「HD650」をも自在にコントロールし、6111真空管の持つ晴れやかな倍音の輝きを加えた絶妙なバランスによって非常に耳馴染み良いサウンドとしてくれた。真空管内蔵ポタアンも数あれど、真空管由来のファットさ、高域にかけての倍音の煌めきをわずかに残しつつ、極端な色付けを避けた素直で密度ある本機のサウンドは希少と言えよう。

管球式の魅力を残しつつ、幅広いヘッドホンへの適応力の高さ、楽曲の核心を突くサウンド表現の確かさを兼ね備えている

この分野としてはかなり高級な部類に入る「NIK58 TUBE」であるが、多種多様なポタアンの世界のなかで、他にはない個性と小型化の両立している。そして幅広いヘッドホンへの適応力の高さ、楽曲の核心を突くサウンド表現の確かさを兼ね備えた、管球式の新たな価値観を切り拓くプレミアムモデルといえるだろう。

■主な試聴音源
●レヴァイン指揮シカゴ交響楽団『惑星』より「木星」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV) ●オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』よりユー・ルック・グッド・トゥ・ミー』(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV) ●デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』より「メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ」(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV) ●May’n『if you…』より「もしも君が願うのなら」(CDリッピング:44.1kHz/16bit) ●長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』より「ゲット・バック」(SonicStage Mastering Studioにて192kHz/24bit変換) ●ビリー・ジョエル『イノセント・マン』〜イージー・マネー(96kHz/24bit・FLAC) ●シカゴ『17』より「ワンス・イン・ア・ライフタイム」(192kHz/24bit・FLAC)

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