HOME > レビュー > 個性的な“真空管ポタアン”Carot One「NIK58-TUBE」を岩井喬が聴いた

【特別企画】優雅なデザインと生真面目な音質を兼備した真空管ヘッドホンアンプ

個性的な“真空管ポタアン”Carot One「NIK58-TUBE」を岩井喬が聴いた

公開日 2013/11/19 11:00 岩井 喬
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
■ビビッドな外観と裏腹の生真面目なサウンド

それではここからは「NIK58-TUBE」の試聴を進めていこう。まずは「iPod touch」(第4世代)をソース源とし、ドックケーブルにオヤイデの「HPC-D3.5」を介してアナログラインへ接続。イヤホンについては複数のモデルを試してみたが、ここでは癖のないニュートラル基調のサウンドを持つダイナミックモーションの「DM008」を用いた際の音質を中心にレビューしたい。

音が出た瞬間に感じたのは、真空管タイプにありがちな高域にかけての倍音の強調感が控えめで、ビビッドな外観とは裏腹にとてもまじめで落ち着いた密度感を持つサウンドであるということだ。低域のむっちりとした弾力はウッドベースの胴鳴りなどで感じられたが、それも音像の輪郭を崩さずにハリ艶良いたわみ感とともにどっしりとした太さを伴っている。ピアノや管弦楽器は軽快でヌケ良く粒の細やかなハーモニーを聴かせてくれた。

真空管の良さを引き出しつつ、強調感の少ないサウンドが特徴。組み合わせるプレーヤーのグレードを上げると、その違いもしっかりと描き分けてくれる

ロックのディストーションギターは倍音も良く伸び、ザクザクとした刻みが小気味よい。リズム隊は密度高く、ハスキーなボーカルもボディの厚みをしっかりと持たせつつ、すっきりと余韻をまとめる。シンバルの煌びやかなリリースも爽やかだ。

続いてソース源を「Astell&Kern AK100」(接続ケーブルはサエクの「SHC-100MM」)に変え、ハイレゾ音源についても確認してみた。より低域の重心が下がり、どしっとして安定度の高いサウンドとなり、音像も太く描かれる。S/Nも高く、音場の奥行き感も見通しが深い。音像の質感は滑らかで程よい艶っぽさが加わる。ボーカルはウェットでホーンセクションは瑞々しい旋律を紡ぐ。ベースのプレイラインはより弾力豊かでたくましいが、分離良く輪郭を引き締め、空間のクリアさをより際立たせている。

ここでさらにソース源を上位モデル「AK120」にグレードアップしてクオリティの違いを確かめてみたところ、もうひとまわり音像のリッチさが増したほか、空間全体の密度や一つ一つの楽器の解像感も一緒に向上。輪郭のエッジはきりっと引き締まるが、音像の肉付きはより厚くなっている。入力に対しその状態を素直に引き出すあたり、「NIK58 TUBE」の持つポテンシャルの片鱗を垣間見た。

■HD650などインピーダンスの高いヘッドホンも悠々と鳴らす

それでは、ヘッドホン環境でどのようなサウンドになるのか、ゼンハイザー開放型モデル「HD650」を接続し、「iPod touch」でのサウンドも確認してみよう。「HD650」の特徴ともいえる豊かな中低域はハリ良く弾力良いサウンドにまとめ、音像の音ヌケの良さ、クリアですっきりとした音場の透明感が際立つ。真空管モデルでありがちな甘い倍音感はほどほどに、カリッとした輪郭のエッジを煌めき良く引き立たせた解像感高い音色となっている。オーケストラの旋律は明瞭度高く、ハーモニーもスマートにまとめ、ローエンドをリッチかつ弾み良く描く。低域の制動感も十分で、密度を持たせつつ歯切れ良い引き締めも感じられる。

「iPod touch」や「AK120」をプレーヤーに、ゼンハイザーのヘッドホン「HD650」を試聴。インピーダンスの高いヘッドホンをしっかりと駆動してくれる

ジャズピアノはアタックをクリアにまとめ、ハーモニクスも深く響かせ、ボディの厚みも自然に表現。ウッドベースの胴鳴りは弦のたわみ感が適度な引き締め効果をもたらし、弾力良い柔らかい響きを聴かせてくれた。ドラムの響きも付帯感なくナチュラルで無駄がない。ロックのディストーションは粘りがあり、リフの粒も太く安定。エッジは艶がほんのりと乗り、滑らかなピッキングが際立つ。リズム隊はアタックを締まり良く描写しつつ、リリースを僅かに膨らませファットで高密度な音色に変化させる。ボーカルは口元をハリ艶良くクールにまとめ、ブレスのニュアンスも彩りよく表現。

次ページHD650を悠々と鳴らす駆動力

前へ 1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク