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USB-DAC機能まで徹底レポート

【レビュー】“Astell&Kern”新ハイレゾDAP「AK120」の実力を全方位検証

2013/06/10 岩井喬
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おまけ:スピーカー環境でのUSB-DAC機能も試してみた

最後に、参考程度の試聴チェックということで、スピーカー環境におけるAK120のUSB-DAC接続での音を聴いてみることにした(スピーカー「アダムHM2」、プリアンプ「アキュフェーズC-2820」、パワーアンプ「同A-46」、AK120からプリアンプまでのケーブルには「スープラBiLine MP」を使用。AK120ボリューム設定は最大値の75.0)。

現状では96kHz/24bit・DACとはいえ、チップ2個使いという仕様であるため、音場表現も巧みでCDリッピング音源であっても時折ハッとさせるほど臨場感のあるサウンドを再生してくれた。ただ奥行き表現は今一つという印象であったのも確かだ。

『初恋組曲』などでは、ハリ良く澄んだ音色のストリングスが分離良くスピーカーの前方へ横一列に並ぶ。『惑星』は音場の広さ自体、ややコンパクトであるものの、ハーモニーの密度や管弦楽器の潤いある質感、滑らかなディティールといった点でDPAから再生しているものとは思えない充実したサウンドが展開された。品の良いホールトーンの深い響きは耳馴染み良く、音場の空気感を素直に描写してくれた。『メニケッティ』では骨太なギターのディストーションがエネルギッシュに凝縮され、リズム隊と一体感が生まれている。楽器は立体的に浮き上がり、アナログライクな音像の厚みを感じることができた。



ここまでAK120を様々なパターンで試聴してきたが、総じて言えるのはこれだけ多機能かつ高音質なDPAが手のひらに収まるサイズで実現できたこと、さらにハイレゾ対応プレーヤーの課題となっているストレスのないスムーズな操作性を両立した、現在最高水準にある製品であることが分かった。

この後に控えているDSD再生対応によってさらにその足場は確実に固まるとは思うが、高額なプレーヤーであるためファームウェアのアップデートでそうした機能性が増えていくことはユーザーにとっては何よりありがたいことである。持ち運びできる高品位なプレーヤーとして使い勝手と高音質のバランスが高い次元で融合したAK120は、ポータブル環境におけるリファレンスとして、この上なく魅力に満ちた一台といえる。


◆岩井喬 プロフィール
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。

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