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【特別企画】フルバランス伝送でハイエンドなイヤホンリスニングを楽しむ!

人気イヤホン別に大検証! “フルバランス駆動で音質はどれだけ変わる?”

2013/04/26 レビュー執筆:野村ケンジ / 記事構成:ファイル・ウェブ編集部
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●Ultimate Ears「Triple Fi10」

もともとキレの良い中高域と芯の強い低域によって、グルーブ感の高い演奏を聴かせてくれるTriple Fi10だが、「Rx MK3-B」のノーマル接続でもその印象は変わらず。メリハリがポタアンレスに対してやや強まり、パワー感溢れるサウンドに感じる。そのぶん制動の効いていない大味な側面も見せるが、この勢いの良さは、これはこれで魅力的といえる。

Triple Fi10

リケーブルしたところ

しかしバランス接続になったとたん、印象がガラッと変わった。相変わらずグルーブ感の高いノリノリの演奏ではあるのだが、帯域過渡特性が整ったのか、音圧が違う。音も細やかになり、演奏の印象度がグッと高まったのだ。特にベースは、弦の音に艶やかさを感じるほど複雑で厚みのある音色となった。それでいてキレは格段にいいのだからたまらない。

ヴォーカルも同様で、エリック・クラプトンも八代亜紀も、やたら深みのある渋い声色ながら、凜とした張りのある歌声を披露してくれる。IE80と同様、こちらもバランス駆動が絶対オススメだ。


●1964EARS「1964-D」「1964-Q」「V3」「V6」

コストパフォーマンスに優れた上質なサウンドを提供する米1964EARSのカスタムイヤーモニターのラインナップのなかから、「1964-D」「1964-Q」「V3」「V6」の4モデルを試聴した(試聴機として用意されたユニバーサルイヤーチップ装着品を使用)。

1964EARS「1964-D」「1964-Q」「V3」「V6」

リケーブルしたところ(上位機「V6」)

全体的にいえることは、いずれもイヤーモニターならではのストレートで自然なサウンドを持ち合わせていること。解像度感も高く、音楽の演奏の隅々まで客観的に見渡せる音色傾向だ。特に「V6」の帯域幅の広さ、超が付けたくなるほどの解像度感の高さは特筆もの。他のモデルもそれぞれに完成度が高く、音のまとまりも良いのだが、こと純正ケーブルでの試聴では「V6」のハイクオリティさに絶大な魅力を感じた。

それがバランス接続にしてみると、ちょっと様子が変わってくる。ドライバー数の少ない「1964-D」が格段のクオリティアップを見せるのだ。純正の時にやや気になっていた、2ドライバー故の線の細さが消え、ヴォーカルやメイン楽器などにしっかりとした厚みを持つ、存在感のある演奏へとクオリティアップする。当然のようにSN感も高まり、細部の表現も丁寧になるので、物理的にプレイヤーが近づいてきたかのように、ダイレクト感が高まる。

一方で「1964-Q」の変化も興味深かった。こちらは低域に強めのピークを持つバランスに仕立てられているのだが、バランス駆動にすることで低域のフォーカス感が高まり、芯のある音になるため、ノリの良い、勢いのあるサウンドになる。それでいて、音色的にはかなりピュアなので、聴き心地も良くなっている。なかでも、ハードロック系の曲との相性が抜群だった。この手の曲は、低域に下手な膨らみがあるとリズム感やメロディ運びを阻害されてしまうため、ノーマル接続の音とはあまり相性が良くなかったのだが、バランス駆動で一変、逆に低音に迫力があって、それでいてグルーブ感の高い絶妙なサウンドになった。

「V3」と「V6」、特に「V6」については、バランス駆動による音質的な変化はほとんど感じられなかった。凝ったつくりのパッシブネットワークが搭載されているので、それが功を奏して、ノーマル接続であってもかなりのクオリティを実現しているのかもしれない。


●AUDEZE「LCD-3」

最後に、おまけとしてヘッドホンでもバランス駆動を行った。ディープなヘッドホンファンに人気の高いAUDEZE「LCD-3」は、一般的なダイナミック型でなく、平面振動板を持つオープンエアータイプのヘッドホン。こちらについても、標準ケーブルによる接続とALO Audio「AlgoRhythm Solo -dB」を活用したバランス駆動を比較した。

「LCD-3」をリケーブルしバランス駆動で試聴

標準接続であっても、この製品のアピールポイントである繊細で丁寧な抑揚表現はしっかりと表現されており、これで何が不満か、と言いたくなるほど情緒的で表情豊かなサウンドを聴かせてくれる。男性ヴォーカルは渋く力強い印象、女性ヴォーカルはしっとりとした感情豊かな歌声で、改めて表現の多彩さに驚かされた。

しかしながら、バランス接続はこれの数段素晴らしかった。誰が聴いてもはっきり分かるほどSNとセパレーションが向上し、ピタッとフォーカスの合った、ダイレクト感の高いサウンドを聴かせてくれるようになるのだ。おかげで、ステレオイメージも明瞭となり、空間的な広がり感が一段と高まる。ライブ演奏などは、演奏者のステージ配置まで手に取るように感じられる。これはいい。「LCD-3」は、是非ともバランス駆動で楽しむべきだ。


■「SE535」「IE80」「Triple Fi10」「LCD-3」は特にバランス接続の効果が絶大!

モデルによって傾向の差はあるものの、バランス駆動によって高級イヤホン/ヘッドホンは秘められた本当の実力を垣間見せてくれるようになる。そのことは十分に確認できた。当然、これを使わない手はない。特に「IE80」「Triple Fi10」「SE535」と、おまけの「LCD-3」の4製品は、効果のほどが絶大で、是非ともバランス駆動ヘッドホンアンプを導入しバランス駆動で。

また、今回の試聴では、ポータブルタイプでありながらもバランス駆動に対応する「Rx MK3-B」と「AlgoRhythm Solo -dB」の組み合わせそのものに、大きな魅力を感じさせられた。愛機がもしリケーブルでバランス駆動できるのだったら、皆さんも是非チャレンジして欲しい。イヤホンリスニングのさらなる幸せがその先にあることを、断言しよう。


野村ケンジ プロフィール
ホームシアターやヘッドホン、音楽関連、カーAVなどの記事を中心に執筆活動を展開している。100インチスクリーン+TADスピーカーで6畳間極小ホームシアターを実践。さらに現在はステレオと7.1chの同居計画が進行中。好きなクルマはアルファ・ロメオなどのイタフラ系。


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