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ハード買い替え無しでBDの音質を向上

ドルビー、BDを高音質化する「ドルビーTrueHDアドバンスド96kHzアップサンプリング」を発表 − 大橋伸太郎が現地レポート

公開日 2012/05/18 10:45 大橋伸太郎
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急峻な特性のフィルターから生じる
プリリンギングが音を汚していた


音声をアナログからデジタル、デジタルからアナログに変換する時は聴感に知覚される歪の発生を防ぐためにデジタルフィルターを使用する。

例えばCDはサンプリング周波数が44.1kHzだが、これは人間の可聴帯域の20kHzまでを記録する上で最低限のサンプリング周波数である。AD変換に際してエイリアスノイズ(折り返しノイズ)と呼ばれる障害の発生を防ぐために20kHzまでの可聴帯域全てを通過させる一方で、サンプリング周波数の1/2(ナイキスト周波数と呼ぶ)の22.05kHzを超える全ての音情報を減衰させる急峻な特性のフィルターを使用する。これが壁のように立ち塞がることで時間軸方向に歪が生じ、それに基づくノイズが生まれる。音声を汚すこの現象をプリリンギングと呼ぶ。プリリンギングは信号が過渡状態にある時に原音より先に音の一部が出てしまう現象で、聴感上シンバルやSEの破裂音など高い周波数の音に広範に発生する。

プリリンギングが音質に悪影響を与えることの解説

プリリンギングを抑えるための最も根本的な解決策は、高いサンプリング周波数を使用して遮断特性が(急峻でなく)なだらかなフィルターを用いることである。96kHzのサンプリング周波数が音楽業界で好んで使用されるのは、20kHz以上まで帯域を伸ばせることよりも、20kHzまでの可聴帯域に関しても音質改善効果が高いからである。しかし、映画BDの場合、先に挙げた事情と、もし96kHz音声を採用した場合ビットレートも上げなければならず、データ増が映像のクオリティに影響を及ぼすため、48kHzに固執しているわけである。

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