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モンスター級の新技術をさっそく体験

次世代シネマサウンド「Dolby Atmos」の凄さとは? − 大橋伸太郎が体験レポート

公開日 2012/05/29 17:15 大橋伸太郎
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ドルビー・ラボラトリーズ本社に内外のジャーナリストを招いて開催された“FIDELITY FORUM2.0”。BDを高音質化する「ドルビーTrueHDアドバンスド96kHzアップサンプリング」について前回レポートしたが(関連記事)、それと並ぶもう一つの「聞き物」が、劇場向けのモンスター級の新提案「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」(関連ニュース)である。今回はこの次世代シネマサウンドについて紹介しよう。

会場に掲示されていたドルビーアトモスのポスター

ドルビーアトモスのロゴ

■現実世界の音に限りなく近づくサラウンドの新提案

ドルビーアトモスがめざす音場表現は、一口で言えば、観客を全方位から取り囲む、現実に限りなく近い音の世界の創出である。アナログ時代から現在のデジタルサラウンドまで映像音響は<チャンネル>という音場要素を固定化した概念を使って立体音場を作り出してきた。現在のデジタルシネマは7.1chが基本だが、アトモスはこのチャンネルの概念から抜け出したことに最大の特徴がある。

一般に映画館は側壁に多数のサラウンドスピーカーを設置し、それらが集合体としてグループ(サラウンドアレイ)で鳴る。これはアンビエント(背景描写)では有効だが、例えば登場人物がレストランにいるシーンで、方々から聞こえる話し声や食器の立てる音の生々しい再現ができなかった。頭上を通過する音はミキシング技術で再現できても、真上に定位(静止)させることはできなかった。

それに対しドルビーアトモスは、オーバーヘッド(上半球)からの音も含め、全方位からの音を現実世界同様にピンポイントに再現する。そのために全てのスピーカーにアンプが個別に配線され、可能なら各スピーカーごとに一台のパワーアンプがあてがわれる。

理想のスピーカー配置と個数はもとより存在しないというのがドルビーアトモスの着想である。だからチャンネル数は始めから規定しない。逆に劇場設備ごとに異なるスピーカー配置に応じた柔軟な再生が可能である。

ドルビーアトモス対応劇場のイメージ。オーバーヘッドスピーカーは左右サラウンドの配列と一致させている

一般に同じ映画を上映しても、劇場個々のスピーカー配置と設計の違いで全く同じ効果を得るのは簡単ではない。しかしドルビーアトモスでは、シネマプロセッサーが劇場ごとにコンフィギュレーションをインテリジェントに判断し、レンダリングを最適化。作品のサウンドデザインの狙いがその劇場で最大限発揮するようにアウトプットする。

ドルビーアトモスフォーマットは最大128トラックの音響要素(オブジェクトまたはその集合体であるチャンネルベッド)を記録でき、第一世代のシネマプロセッサーは最大64chのスピーカー出力を持つ。ドルビーアトモスは従来の「ディスクリート」という概念すら超えた、超立体音響なのである。このプロセッサーは従来のデジタルシネマの5.1/7.1chリニアPCM音声再生との完全な互換性が配慮され、従来のベッド(チャンネル単位での集合再生)にも対応している。

ドルビーアトモス・シネマプロセッサーのユーザーインターフェース画面。ベースマネージメントの活用でサラウンドからフルレンジで大きな音圧を出すことも可能だ

ドルビーアトモス・シネマプロセッサーのパンニングの座標。従来になくオブジェクトのスムーズな移動が可能になる

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