折原一也が画質チェック

“PRO”じゃなくても侮れない「X-Reality」 ― 上位機譲りの画作りが光るソニー“BRAVIA”EX720レビュー

折原一也
2011年04月15日
ソニーの薄型テレビ“BRAVIA”2011年モデルのラインナップの第1弾として発売されている「EX720シリーズ」。本機、および「EX72Sシリーズ」「EX420シリーズ」「CX400シリーズ」が搭載した映像エンジン「X-Reality」の実力はどうなのか?折原一也氏がチェックした。

EX720シリーズ

別筐体のスピーカーで音質面を強化した「EX72Sシリーズ」なども「X-Reality」を搭載

■「ブラビアエンジン3」の高画質技術を継承した新映像回路「X-Reality」

BRAVIAの新モデルでは第2弾として発表された最上位機「HX920シリーズ」などが搭載している新映像エンジン「X-Reality PRO」に注目が集まっており、その実力は以前に別の記事でもレポートした通り。同エンジンは「X-Reality」と「XCA7」の2つのチップを組み合わせたものだ。それでは、そのベースになっているともいえる「X-Reality」はどのような特徴を持っているのか。今回はKDL-46EX720を使用して画質検証を実施した。

HX920シリーズ

「X-Reality PRO」は「X-Reality」と「XCA7」の2チップ構成

まずは概要からおさらいしておくと、本機はEX700番台という型番の通り、BRAVIAのラインナップのなかではスタンダードモデルとして位置付けられる機種。狭ベゼルのデザインを採用し、LEDバックライトはもちろんのこと、2倍速/120Hzパネルによる「モーションフローXR 240」を搭載。そして3D表示にも対応と、2011年の新スタンダードとも呼ぶべきスペックのモデルだ。

モーションフローXR240の原理解説図

EX720シリーズの側面。ランドセルのようだった背面の凹凸をなくすことに成功し、さらなる薄型化を実現した点も特徴のひとつ

画質面の仕様で注目すべきポイントは、新映像回路「X-Reality」を搭載することにある。前述したように、今年のBRAVIAは上位シリーズに搭載された「X-Reality Pro」での「複数枚超解像」と「データベース型超解像技術」ばかりに目が行きがちだが、「X-Reality」もオブジェクト型超解像技術である「インテリジェントエンハンサー」など数々の高画質化技術を搭載している。インテリジェントエンハンサーでは、映像を4つのオブジェクトに分解し、最適なエンハンスを施すよう処理を実行。例えば平坦部エリアを検出して、風景の空部分には処理をかけないなどの適応型処理が可能だ。

超解像技術のインテリジェントエンハンサーでは、映像を4つのオブジェクトに分解し、最適なエンハンスを施すよう処理を実行

エリア検出を行い空など平坦な部分には処理を行わないことで画面全体の画質を向上させる

さらにノイズ対策として「インテリジェントMPEGノイズリダクション」も搭載。ブロックノイズ軽減、モスキートノイズ軽減、ドット妨害低減、ランダムノイズ低減といった効果が得られる。

モスキートノイズへの適用イメージ

ブロックノイズへの適用イメージ


ランダムノイズへの適用イメージ

ドットノイズへの適用イメージ

これらの高画質技術は、昨年モデルでは最上位機「HX900シリーズ」などに搭載されていた「ブラビアエンジン3」のアドバンテージとして用いられてきていたものだった。「X-Reality」はこうした昨年来の技術をすべて組み込んだ上で、新たに1チップにまとめている。

つまり、やや乱暴な言い方をしてしまえば、搭載するパネルなどの違いはあるものの、EX720の映像回路は昨年の最上位機種と同等以上のものを搭載していると言えるのだ。

■前モデルEX700とは大きく変わったEX720シリーズの画質チューニング

実際にKDL-46EX720の画質を視聴してまず気付いたのは、昨年までのソニーのエントリー/ミドルレンジという位置付けだったEX700シリーズとは、一目見て分かるほど画質の傾向を大きく変えてきたということだ。

まずは画質モードを「スタンダード」設定で地上デジタル放送をチェック。前モデルEX700では、やや明るく輪郭に強調感がある画作りだったが、今回のEX720では映像のトーンを全体的に落としながら階調を暗部までを滑らかに作り込む。“艶やか”と表現したくなるような滑らかでキメ細かな質感を見せるようになっていた。ノイズの抑制力も大きく、見せ方も全体的にクリアだ。

昨年までのモデルでは、こうした映像ディテールの描写力と色あいの再現力が、ミドルレンジ機と上位機との差だった。しかしこのEX720シリーズは、その型番とは裏腹に、EX700シリーズよりもむしろ従来の最上位機であったHX900シリーズの傾向を引き継いだものになっている。

またBSデジタルで録画した映画の画質も、ノイズ感がしっかりと抑えられている上に、ほんのりと赤みを乗せた生気のある色作りが印象的だった。デジタル放送特有の映像の荒れを巧みに抑えた、上位機種譲りの、よく練り込まれた画作りと言えるだろう。

製品を視聴する折原氏

続いて、部屋の照明を落とした状態で映像モードを「シネマ」に変更。BDの映画『マッチポイント』の映像を視聴した。

同作は筆者が最近、様々な視聴で使用しているソースだが、やや古いフィルムのようなトーンで撮影されている作品だ。このような作品に対しても、本機の映像ディテールの再現性の高さはよく現れており、やはりHX900シリーズを彷彿とさせるものがある。

前述のように本作は古めの映画に近い色調とフィルムグレインの多さが特徴なのだが、本機では、それがよりクリアな画質で甦る。色再現性としてはスタンダードモード以上に色の派手さが抜けるため、よりマスモニライクな、ナチュラル志向で深みのある映像となっている。

特に、スカーレット・ヨハンソンが初めて登場するシーンでの、逆光に浮かび上がる彼女の艶めかしい肌色の陰影の描き分けや再現性は、前モデルのEX700では難しかったものだ。

では、昨年の最上位機HX900と比べてどうかというと、映画の黒オビの沈み込みや、絶対的な黒の再現性は直下型タイプほどには出し切れていない。こういった部分は、直下型LEDによるバックライトのエリア駆動なしには得難いもので、昨年の上位機種にまだアドバンテージがある部分だ。昨年モデルとは言え、最上位機はさすがに最上位機ということだ。

しかし、ここでもう一度強調したいのは、EX720シリーズがあくまでスタンダードモデルであるということだ。これまで述べてきたようなレベルの画質を、このクラスのモデルが実現している点は非常に高く評価できる。

今回視聴したのはKDL-46EX720の1モデルのみではあるが、今春の「X-Reality」搭載モデルは全体的に相当な画質の底上げが行われていると考えられそうだ。

繰り返し述べたように、EX720シリーズの画質傾向は昨年の機種のなかではEX700シリーズよりむしろ、HX900などの最上位のラインナップに近いものだ。EX720シリーズは、画質を追求したいユーザーにとってコストパフォーマンスの高い選択肢となることだろう。