“Xシリーズ”第一弾「L-590AX」との違いとは?

「まさに万能のプリメインアンプ」 − 石原俊が聴いたラックスマン「L-550AX」

石原俊
2011年02月21日
ラックスマンが純Aクラス・プリメインアンプの「L-590AX」(レビュー記事関連ニュース)の弟機に相当する本機「L-550AX」(関連ニュース)をリリースした。本機の終段はバイポーラ・トランジスタの2パラレルプッシュプルで、出力は20W×2(8Ω)。ちなみにL-590AXは3パラレルプッシュプルで出力は30W×2(8Ω)である。

L-550AX

本機のリモコン

筐体の横幅はL-590AXと同じ440mm。この寸法は同社のセパレートアンプやディスクプレーヤーと共通するものだ。高さはL-590AXよりも15mm低いが、奥行きはほとんど差がない。素子は大型のヒートシンクにマウントされており、鉄製のコの字型トップ&サイドパネルの上部には放熱効率が良さそうなスリットが切られている。

背面端子部の様子

他の主な特徴は、L-590AXとほぼ同様で、音量調整回路は同社プリアンプの最高級モデル「C-1000」の流れをくむ電子制御方式のLECUA(Luxman Electric Controled Ultimate Attenator)。増幅回路は、ラックスマン独自のODNF(Only Distotion Negative Feedback)が用いられている。さらには、パーツのレイアウトや配線の最短化・三次元化が追求された。

内部構造

試聴では、スピーカーにモニターオーディオの「GS80」を、ディスクプレーヤーはアキュフェーズの「DP-700」を用いた。一聴して「良い音だな」と思った。誤解を恐れずに言えば、現実よりも美しい美音とすら言える。オーディオ装置に私たち愛好家が求める理想的な音を具現化したような音、と評したら褒めすぎだろうか。しかし、それほど分かりやすい上質音なのである。

ジャズはパワフルかつエネルギッシュ。サックスやトランペットがブヒャーと鳴り、シンバルがガシャーンと打たれ、ベースがブルンと唸り、バスドラムがドスンと腹に伝わり、ピアノの和音がズキーンと響く。しかも美しい。

女性ボーカルは、あらゆるアンプのなかで最も聴き心地の良いモデルの一つとすら言えよう。伝統的なAクラス機は総じて女性ジャズ/ポップス系シンガーの色気を強調する傾向があるのだが、本機には冷静な客観性がある。

クラシックは感動的だ。とくに弦楽器の質感がすばらしく、セッティングや組み合わせに心を砕かなくても、いわゆる「産毛のような」表現がすんなり得られる。オーディオ的・音楽的分解能も高く、複雑な交響曲の細部までかなりの確度で正しく表現される。

技術的にみると、本機はL-590AXの弟機ではある。しかしながらオーディオ的・音楽的にみると、L-590AXと本機は似て非なるものではないだろうか。

本機は最大出力が20W×2であるがゆえに、実際のリスニングでフルパワーに近い領域で動作させるケースが多く、素子が真の意味でフルスイングする領域へのヒット率が高い。したがって、小音量時でもL-590AXよりホットな表現を楽しむことができる。発熱がL-590AXの3分の2程度なのもありがたい。

本機は現代的な明晰さと古典的なぬくもりを併せ持つ、音楽的にもオーディオ的にもプライス的にもユーザーフレンドリーな、まさに万能のプリメインアンプなのだ。

石原俊 プロフィール
慶応義塾大学法学部政治学科卒業。音楽評論とオーディオ評論の二つの顔を持ち、オーディオやカメラなどのメカニズムにも造詣が深い。著書に『いい音が聴きたい - 実用以上マニア未満のオーディオ入門』 (岩波アクティブ新書)などがある。

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