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スマホ事業も「もっと主体性を持って商品開発」

新生VAIOが海外進出。新規事業など“自立と発展”ビジョンを社長が説明

公開日 2015/08/19 17:39 編集部:小野佳希
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VAIO(株)は、海外市場への進出を発表。アメリカとブラジルでVAIOブランドPCの展開を行う。あわせて同社は、設立1周年となったことを受けての記者会見も実施し、今年6月に代表取締役社長へ就任した大田義実氏が今後の方針などを語った。

VAIO Z

■新生から1年で海外進出

ソニーから独立してからこれまで、同社は事業展開を日本国内のみで行っていたが、さらなる事業拡大を目指して海外市場に進出。アメリカではtranscosmos America Inc.と販売代理店契約を結び、「VAIO Z Canvas VJZ12AXシリーズ」を10月5日より販売開始する。現地での想定価格は2,199米ドルから。

VAIO Z Canvas(※写真は日本国内向けモデル)

販売チャネルとしては、transcosmos America Inc.によるECサイト(http://us.vaio.com)に加え、microsoftstore.comと全米Microsoft Storeでの店舗販売も用意。9月中旬より先行受注を開始する。

アメリカでの展開概要

ブラジルにおいては、現地の有力PCメーカー POSITIVO INFORMATICA S.A.と協業。ブラジルにおいてVAIO商標をつけたPCの製造、販売、サービスも含めたビジネス全般の委託契約を結んだ。ブラジルでの製品ラインナップなどはPOSITIVO INFORMATICA S.A.より9月に発表予定だという。現地でのブランドサイト(http://br.vaio.com)も用意する。

ブラジルでは現地メーカーとビジネス全般の委託契約

大田氏は、アメリカとブラジルでビジネス展開方法を変えたことについて、「アメリカとブラジルでは事情がまったく違う」とコメント。クリエーターが多いアメリカでは「正攻法」(大田氏)として自らが開発したVAIO Canvasを展開し、ブラジルにおいてはリスクを回避したインデントビジネスを行っていくとした。

■“自立と発展”のための組織変更

大田氏は、設立からここまでの1年間を「ゼロからの創業であり、会社の基盤づくりを行った1年だった」と表現。その上で、これからの1年を「それをもとに稼ぐ力を作る。そして来年以降に飛躍していきたい」と語り、「ソニー時代の反省も踏まえ、悪いところは直し、良い部分を伸ばして、日々是改善で力を伸ばしていきたい」と続けた。

VAIO 大田義実氏。ニチメン(株)ブラジル会社CEO、双日(株)中国総代表など海外での経験も持つほか、サンテレホン(株)とミヤコ科学(株)の事業再建にも社長として携わってきた経歴を持つ

そしてこれからの同社は「自立と発展」を目指すと説明。“自立”のために今年6月から自前の営業部を設立して「当社ひとつの意思で企画製造、サービス、販売まで一気通貫で行い、コントロールして利益を継続的に上げていく」(大田氏)ための体制を整えるなどしたと語る。

自立と発展のために組織変更などを行った

加えて、組織を従来までの商品ユニット制からビジネスユニット制に変更。設計担当の技術者による技術営業部隊も設立し、ビジネスユニットに売上責任を持たせることなどでも自立した会社づくりを行っていくとした。

自前の営業部を今年6月から設立

この技術営業部隊は「安曇野(本社)から東京に常駐スタッフを数名送ることに加え、イベントやアポイントがあるたびにも安曇野から人を送る」ものだと大田氏は説明。「多く売るということに加え、自分の作ったものがどうして売れているのか、または売れないのかを技術者に知ってもらうことが目的。顧客の声を次の商品企画に活かせる」と、その狙いを語った。

なお、VAIOの販売などの営業活動はこれまでソニーマーケティングが担当していたが、この関係は今後も継続。BtoBではソニーマーケティングの営業スタッフとVAIOの技術営業スタッフが同行し、開発に携わった人間が直接製品を説明するスタイルを採っていく。

販売戦略については規模の追求はせずに収益ベースで丁寧な仕事を行うと説明

また、BtoCにおいても販路を強化。この3月からは個人向け標準仕様モデルの量販店196店舗での販売も開始しており、こちらでは加賀ハイテックとも協力関係にあるが、営業自体はVAIOの営業スタッフが行っているという。なお量販店での展開は「会社の規模やリスク管理を考えてこれ以上販売店を増やすつもりはない」(大田氏)とした。

ちなみに個人向けモデルでは安曇野市へのふるさと納税のお礼品として、特別な刻印が入ったモデルも存在しているが、人気のため現在は受付を停止中

■商品力強化に加えPC以外の新事業も拡大。スマホは「もっと主体性を持った商品開発」

発展に向けては、まず商品力の強化に取り組むと大田氏はコメント。同社ではパソコンを「生産性・創造性を高める最高の道具、あるいは資産だと考えている」と述べ、クリエーターなどハイパフォーマンスを求める層にフォーカスしていくと説明。

PCでしかできない、ハイパフォーマンスを要求されるようなことをやりたいユーザーをメインターゲットに

「(エントリー向けモデルなどの)競争が厳しいゾーンでは戦わない。我々の得意なゾーンで戦っていく」とし、「スマホやタブレットではできない、PCにしかできないことにこだわる、PCらしく使ってもらえる人の創造性を助けていく」と語った。

高密度設計などの設計・製造技術、経験豊かな人材、およびブランド力がVAIOの強みだと説明

そして、「会社の存続のためにも2本目、3本目の矢が必要」だとし、新規領域事業の拡大にも挑戦。ソニー時代にPCだけでなくAIBOなども開発していたことで培った高い技術力が評価されているとのことで、現在、同社は他社からの受託製造も多く引き受けていると説明し、「こうしたなかから新規領域事業の芽をみつけて育てていきたい」とコメント。「2017年度にはPCと新規事業を1対1の規模にしたい」と述べた。

富士ソフトが開発しDMM.make ROBOTSで販売されるロボット“Palmi(パルミー)”の製造もVAIOの安曇野工場で請け負っている

AIBOなどでも培った技術も他社からの受託製造につながっている


受託製造を請け負うものの中から、パートナー企業とともに新規事業へ育てていけるものを見つけていくと説明

なお、PC以外の領域という意味では日本通信と組んでスマートフォン「VAIO Phone」を展開しているが、これについて大田氏は「通信事業という新規領域に踏み出すきっかけとなった」とコメント。「今後はもっと我々で主体性を持った商品開発をしていく。そうした前提でスマホ・タブレットも前向きにやっていく」とした。

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