「お客様目線を忘れてはいないか」

デジタルカメラグランプリ10周年、山田久美夫審査委員長「写真の楽しさを多くの人へ伝えたい」

Senka21編集部・竹内純
2019年01月24日
激動の数十年、ミラーレスカメラ時代到来

2008年秋に第1回のスタートを切り、昨秋で10周年という大きな区切りを迎えた「デジタルカメラグランプリ」。さらなる飛躍を誓い、1月22日にカメラ業界関係者を集め10周年を記念するパーティーが盛大に催された。

パーティーには多くのカメラ業界関係者が集まった

以下に、カメラ業界の活性化へ製販一丸となった奮起を促した、第1回より審査委員長をつとめる山田久美夫氏のあいさつを抄録する。


デジタルカメラグランプリの10年間はもちろん、この20年、30年という間にもいろいろなことがありました。世界初のデジタルカメラを88年のフォトキナで富士フイルムが参考出品、95年にはカシオから「QV10」がいよいよ発売となり、デジタルカメラ時代に向かい始めます。

「デジタルカメラグランプリ10周年記念パーティー」であいさつに立つ、デジタルカメラグランプリ審査委員長・山田久美夫氏

99年にはニコン「D1」、2008年には世界初のミラーレス機、パナソニック「G1」が登場。写真もプリントだけでなく、スマートフォンやテレビで見るように変わり始めます。2013年にはソニーからフルサイズミラーレス「α7」が出て、今日、いよいよミラーレスの時代になったと実感します。

10年を振り返り審査委員の表情にも笑顔がこぼれる

デジタルカメラグランプリは、基本として “普通の人” に向けたイベントで、そこが他のアワードとは大きく異なります。選定される商品も、フラグシップやハイエンド以外に、ごく普通の人がちょっと背伸びすれば手が届く価格のものも選出します。スペック・性能はもちろん重要ですが、審査委員には流通の方もおり、実際、商品としてお客様が “買う” ところへ落とし込む “価格” も重視して選定しています。

カメラが変わることで、写真も変わっていきます。例えばスケッチなら紙と鉛筆があれば事足りますが、写真の最大の欠点は機械がないと撮れないこと。ですから、機材が進化していくと、写真も変わっていく。そのためにどうしても、モノ中心の見方、考え方から離れられない面が見受けられますが、本質は “写真” です。モノではなくコト。そこが少し希薄になりつつあるようで、もう一度そこを思い起こしていただければと思います。

デジタルカメラグランプリではこれまで、スマートフォンの新しい技術等も、企画賞や開発賞として表彰しています。それは、“進化するグランプリ” だからです。写真を撮る道具は、昔はカメラしかありませんでしたが、今、スマートフォンで撮る方がたくさんいる。紙やプリントだけでなく、SNSが台頭し、写真を通して自分を表現できるようになったことは、もっとも大きな変化のひとつです。

カメラの役割も当然変わってきます。日常を撮るのはもはやスマートフォンの役割。意識して撮影する時がカメラの出番。このことは、デジタル化によってもたらされたように思われがちですが、実は、フィルム時代に「写ルンです」(レンズ付きフィルム)がそうした役割を担っていました。それが今、スマートフォンに代わった。時代は繰り返していることをつくづく感じます。

「スマートフォンは脅威だ」と言う人がいますが、決して脅威などではない。もともとデジタルカメラになって皆が普通に使えるようになり、便利だから使っていたのであって、心底良いと思って使っていたわけではないからです。そこへスマートフォンが登場して、撮ってすぐ送れて便利だからと、こちらの方がいいよね、となっただけなのです。

お客様目線を忘れてはいないか

カメラは結局のところ、写真を撮るときのツール、ひとつの道具です。業界の中に身を置いていると特に主客転倒してしまいますが、軸足は “カメラ” ではなく、あくまで “写真” です。

まさに製販一丸となった奮起が業界活性化の大きなテーマ

デジタルカメラがここに来て凄い進化を遂げています。凄い一方で大変高価で、昨年、そうしたカメラを開発した人から、自らそのカメラを購入したら、クレジットカードの限度額がいっぱいになってしまったという話をお聞きしました。良いモノをつくることはとても大切ですが、それが何のためなのか、誰が使うものなのか。皆を幸せにすることがどういうことなのか。今一度そこへ立ち戻り考えるべきではないでしょうか。

カメラはもちろん、多彩なフォトアクセサリーの数々も、一般の方には正しい使い方が理解されていません。業界内の人には常識になっていることも、きちんと伝えることができていない。伝える媒体がないのです。デジタルカメラグランプリ実行委員会が今春、新たに立ち上げるWEBサービス「デジカメCHANNEL」では、そうしたところもカバーできればと思います。

商品にも作り手であるたくさんの人の思いが込められています。例えば、開発者へのインタビューなどを通じてそれを伝えることができれば、関心を持ち、これを選ぼうと思っていただけるきっかけになるかもしれないと期待しています。

まずは写真の楽しさを伝えたい、多くの人に写真を楽しんでいただきたい。デジタルカメラグランプリはそんな気持ちでここまで10年歩んできました。人は誰しも表現したいのです。写真には偶然性があり、経験がなくても良いものが撮れてしまったりします。共感できるもの、共有できるものを手軽に表現する上で、写真ってとてもいいものだと思います。

人の心に直接訴える力があります。「表現したい」「クリエイティブなことをしたい」という人の思いを手助けしてあげられる仕事、皆を幸せにする仕事をしているのだという意識をしっかりと持ちたいですね。「デジタルカメラグランプリ」と新しいWEBサービス「デジカメCHANNEL」を通して、写真の楽しさをより多くの人に伝えていきます。

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