【ヘッドフォン祭mini】Astell&Kern「SP4000」/VOLK AUDIO「ETOILE」、名門&新興ブランドから大型製品が同時登場
フジヤエービックが主催するポータブルオーディオ展示試聴イベント「夏のヘッドフォン祭 mini 2025」が、本日7月5日、東京駅そばのステーションコンファレンス東京にて開催された。本項では、Astell&Kernの新フラグシップDAPや、新規取り扱いブランドVOLK AUDIOの第1弾製品を出展したアユートブースなどの模様をお伝えする。
さらに進化を重ねたフラグシップDAP「A&ultima SP4000」が一般公開
アユートではAstell&Kernの新たなフラグシップDAPとなる「A&ultima SP4000」(SP4000)、そして新規取り扱いブランドVOLK AUDIOより第1弾製品「ETOILE(エトワール)」を参考出展。整理券方式にて試聴を行った。
SP4000は、2022年発売「A&ultima SP3000」(SP3000)以来となるAstell&KernのフラグシップDAP。近く国内でも正式発表予定で、発売は8月ごろ、価格は約69万円が予想される。

SP3000からの進化点は多岐にわたり、ソフト面では “フルAndroid OS” 搭載によって一般的なスマホのようにGoogle Playストアからアプリが追加可能に。音楽ストリーミングサービスの音源などもアクセスしやすくなった。
ハード面では、SP3000から引き続き旭化成エレクトロニクスの「AK4191EQ」と「AK4499EX」のセパレートDACソリューションを採用しつつ、そのチップ数はAK4191EQ 4基/AK4499EX 4基の「オクタオーディオ回路構造」に強化。AK4191EQとAK4499EXが1対1で組み合わさる、本来想定されている理想的な設計を実現している。

またオペアンプをSP3000の倍の数搭載し、回路上に並列配置。「High Driving Mode」機能をオンにすることでこの回路の全力が発揮され、ノイズを抑えつつ一層力強いサウンドを再生できる。High Driving Modeではバッテリー消費が増えるため、使用状況や音の好みに合わせてオンオフを使い分けることが可能だ。
同社が先日開催した先行試聴会では、SP3000からさらに磨き上げられた音質、ならびにHigh Drive Modeのオンオフの違いに参加者から大きな反響があったとのことで、SP3000からの進化ぶりははっきりと伝わる様子。今回聴けなかったという方も今後の機会に注目だ。


新ブランドVOLK AUDIOのデビュー作「ETOILE」はドライバーからも目が離せない
もうひとつの目玉、VOLK AUDIOは、著名インイヤーモニター(IEM)ブランドに務めていたJack Vang氏が今年4月に立ち上げた米オーディオブランド。ETOILEは記念すべきブランド初の製品となり、デザインや付属品が特別仕様の “Founder’s Reserve Edition” が世界限定350台で用意される。国内では8月ごろ、約69万円で発売予定だ。

ドライバーユニットは、カスタムメイドの10mmダイナミックドライバー「M10」×1、Sonion社製BAドライバー×4、Sonion社製静電トゥイーター(EST)×4、そして8mmの “静磁型(マグネットスタティック)” ドライバー「M8」×1の計10基/クアッドブリッド構成。
静磁型とは聞き慣れないドライバー形式だが、仕組みをあえて一言でまとめるなら “静電型と平面駆動の良いとこ取り” 。極薄の振動板を電極板ではさみ、静電気の作用で振動させる静電型は、振動板全体を均一に動かすため歪が少ない、微細な音まで再現できるなどの音質的長所を持つ形式。一方で、動作させるには専用アンプや昇圧回路で高電圧を供給しなければならないなど、扱いが難しくもある。
そこでM8 静磁型ドライバーでは、振動板を動かすために静電気とマグネットの磁力を併用。静電型に近い長所を備えつつ、低い電圧で動作させることが可能になったそうだ。ETOILEでは静磁型ドライバーとESTトゥイーターがともに高域 - 超高域を担当し、高解像度を実現しているとのこと。
またチューニングでは、グラミー賞を5度受賞したロサンゼルスOsiris Studioのエンジニア、Michael Grave氏が協力していることもポイント。スタジオエンジニアの精密な調整により、ニアフィールド・リファレンスモニターのサウンドを目指したという。

量産化近づく、FitEarのモニターヘッドホン「Origin-1」
FitEarは、開発中のモニターヘッドホン「Origin-1」を参考出展。以前イベントで展示した試作機「Monitor-1 SR(Studio Reference)」の量産プロトタイプという位置づけで、より深い低域を再現できるようドライバーユニットの変更などを行っている。ベースモデルにあたる業務用モニターヘッドホン「Monitor-1」よりも低い音圧で、よりフラットなバランスで再生できるようチューニング。同ブランドのカスタムIEM「MH334 SR」のヘッドホン版とでも言うべきサウンドだという。

発売時期や価格はまだ未定としつつ、10万円は下回るとのこと。また、新規に発注した線材をつかった4.4mmバランスのオプションケーブルや、両出しケーブルを接続できるようにするカスタマイズサービスなど、発売後の展開もいろいろと検討しているそうだ。

Acoustuneモニターイヤホンに第3弾「RS FIVE」登場
ピクセルのAcoustuneブースでは、モニターイヤホンの “RSシリーズ” から「RS FIVE」が参考出展された。7月中旬から下旬ごろ、3万9800円前後で発売予定のモデルとなる。

軽量な樹脂筐体に、医療用ポリマー系素材の振動板を用いるブランド独自の「ミリンクスELドライバー」を搭載するRSシリーズだが、本モデルは樹脂筐体が医療用途で使われるクラスの高精度3Dプリンターで製造されており、つるりと滑らかな仕上がりに。イヤーピースを取り付ける側の筐体前部が金属製となり、ミリンクスELドライバーも、ベリリウムをコーティングした「ミリンクス EL-B」へとグレードアップしている。
完全ワイヤレスイヤホンの「HSX1001 JIN -迅-」用音響チャンバーとなる「M:03」も参考出展。HSX1001のドライバーユニットとそれを覆うチャンバーをまるごと交換し、違った傾向の音が楽しめるというアクセサリーの第2弾で、素材には洋白(銅/亜鉛/ニッケル合金)を採用。ドライバーユニットは、従来のHSX1001用チャンバーよりも1世代改良された「改良型第4世代ミリンクスドライバー」に変更されている。

有線接続用モジュールを取り付ければ、これ単体でも有線イヤホンとして使うことが可能。8月上旬ごろ、有線接続モジュールと4.4mmバランスケーブルとのセットで6.6万円程度での発売を検討しているとのことで、有線イヤホンのミドルクラスモデルとしても期待できそうだ。

SHANLING、iBasso、TOPPING、HiByなども最新製品を一気にラインナップ
MUSINでは、同社取り扱いブランドから発売したばかり、または間もなく発売となる新製品を中心に取り揃える。SHANLINGからは6月27日に発売したコンパクトDAPのニューモデル「M3 Plus」(約6.2万円)。片手でも持ちやすいサイズながら、シーラスロジック「CS43198」を4基搭載したクアッドDAC回路や、4.4mmバランス接続で最大800mw(32Ω)のアンプ出力を備えた力強いAndroid DAPだ。

iBassoからは、M3 Plusと同じく6月27日発売のDAP「DX260 MK2」(約16万円)。2024年発売モデル「DX260」のマイナーチェンジという位置づけで、音質面には大きな変更はないものの、CPUやメモリーをより性能の高いものに交換しており、使う上での快適さが改善している。カラーバリエーションもベースモデルから刷新した上、直販限定カラー「シルバー×ホワイト」もラインナップ。こちらはバックパネルが真っ白となっている。


TOPPINGからは、発売までもうまもなくだというUSB-DAC/アンプ「DX5 II」が出展。狭い机の上のスペースでも置き場所を作りやすいサイズながら、ESS「ES9039Q2M」2基によるデュアルDAC回路、独自設計のフルバランスアンプ回路、3種類のヘッドホン出力端子、発色の良い前面パネルなど見どころ豊富なモデル。

アンプのパワフルさも特徴のひとつで、会場ではSHANLINGのヘッドホン「HW600」(約17.5万円)とセットで設置。一般的にポテンシャルを引き出し切るには大きな駆動力が欠かせないとされる平面駆動ヘッドホンで実力を披露していた。
ミックスウェーブでは、同社が取り扱うHiByとFAudioがともに10周年を祝ってコラボレーションしたイヤホン/DAPセット「HiBy The Golden 10th Anniversary Set」(約64.4万円)を展示。
ダイナミック×2/BA×5/ピエゾ(圧電)×1のトライブリッドイヤホン「Golden 10th IEM」と、そのポテンシャルを最大限引き出すためにチューニングされたDAP「R6 Pro Max Ti」がペアになっており、デザイン/音質ともにマッチングのとれた特注感が印象的だ。こちらは全世界499セット限定生産となっている。

ほか、漆黒のセラミック筐体と新開発の骨伝導ドライバー構成が特徴となるUnique Melody「Mest Jet Black」(6月27日発売、約43万円)、BAドライバーの小型さとダイナミックドライバーの音質を兼ね備えるという「シリコンダイナミックドライバー」を搭載したCampfire Audio「Axion」(6月13日発売、約4.8万円)といった取り扱い各ブランドの新製品をラインナップ。ケーブルブランド・Beat Audioが今後発売予定の「Silver Sonic Mk VIII」「Supernova Mk III」も参考出展された。



オリオラスジャパンでは、今年5月から取り扱いを開始したシンガポールForte Earsブランドの第2弾モデル「MEFISTO」(約45.6万円)を展示。一般販売は8月5日からだが、フジヤエービックでは本日7月5日から先行販売をスタートしている。

第1弾モデル「MACBETH」(約63万円)同様に、シェイクスピアの戯曲をモチーフにしており、上位/下位というよりは方向性が異なる兄弟機という位置づけ。ドライバー構成とチューニングは大きく異なり、独自開発の平面駆動トゥイーター「ARIA」×1/BA×4/ダイナミック×2の7ドライバー/トライブリッド構成。厳選したビンテージ部品でネットワーク回路を組んでいるほか、純銀削り出しのフェイスプレートの共鳴をチューニングに利用しているといい、エネルギッシュなサウンドが楽しめるという。

XDUOOブランドからは、参考出展として「DP-10」が登場。ディスプレイを備えた卓上サイズのプレーヤーであり、ローカルストレージやストリーミングサービス再生が可能。ブースでは同ブランドのDAC内蔵アンプ「XD05 PRO」とUSB接続で展示されていた。価格は10万円を下回る程度を予想しているという。また、XD05 PROに着脱できる専用オプション「R2R DACモジュール」も披露。DP-10とともに夏から秋ごろの発売見込みとのことだ。


