電気製品の事故から身を守る

家電の「Sマーク」と「PSEマーク」との違いは? 厳格な安全基準と登場の背景

PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
2019年12月02日
■「Sマーク」「PSEマーク」って何?

これから寒さが増すと欠かせなくなる電気ストーブをはじめとする暖房器具。気を付けなければならないのはその正しい使い方。火災など思わぬ大きな事故につながる原因のひとつが、誤った使い方にあるからだ。そしてもうひとつ、電気製品そのものについても、安心・安全な製品を見極め、選ぶことが大切。それを手助けしてくれる「Sマーク」や「PSEマーク」といった安心・安全のマークが電気製品に付いていることをご存じだろうか。

SマークやPSEマークは、電気製品に付いている品番や電圧などを記したシールの中に表示されていることが多い

冷蔵庫や洗濯機などの家電製品が戦後、普及し始めると、同時に不良品も横行。そこで、消費者の手に渡る電気製品の安全性を確保する手段として、昭和36年(1961年)に「電気用品取締法」が制定され、電気用品取締法に適合した家電製品には、郵便マークのような「三角T」と呼ばれるマークが付けられるようになった。その後、電気製品が飛躍的に普及するのに伴い、感電や火災といった事故が多発するようになり、電気用品取締法の対象となる製品も拡大され、政府の許可を必要とした従来の三角Tに加え、昭和43年(1968年)から、事業者自身が適合性を確認する「丸T」が取り入れられた。

電気製品の安全性が高まってくると、多くは事業者自身が適合性を確認する丸Tに移行されるようになり、さらに、平成7年(1995)になると丸Tも廃止。国の許可が必要とされる製品は、電線、ヒューズ、配線器具などの製品のみに限られるようになった。

■消費者自ら安全な商品を選択するための大事なマーク

平成13年(2001年)4月1日、電気用品取締法が抜本的に改正され、「電気用品安全法」として施行。これを機に誕生したのが「PSEマーク」だ。PSEマークには菱形と丸形の2種類がある。菱形のPSEは、特に高い安全性が要求される特定電気用品116品目が対象となり、長時間無監視で使用される電線、ヒューズ、配線器具、子供や高齢者が使うもの、直接肌に触れる自動洗浄乾燥式便器、電気マッサージ器などが含まれる。一方、丸形のPSEは、それ以外の電気用品341品目で、一般家庭でコンセントにつないで使用される冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコンなどが対象となる。

菱形PSEと丸形PSEには大きな違いがあり、菱形PSEは、製造時にメーカー自身が全品検査を自主的に行い、その結果を記録・保存することが義務付けられるとともに、さらに、国が認定した検査機関による適合性検査で認定を受けなければならない。これに対し、丸形PSEは自主検査のみとなっている。

身近な家電製品のほとんどが、安全性を事業者自身に委ねる形になったこと対し、当然、こうした状況を不安視する声も出てくる。そうした中、平成7年(1995)に誕生したのが、電気製品認証協議会(SCEA)による「Sマーク」。公正・中立な第三者認証機関が、公正な立場から当該製品の安全性を客観的に評価し、安全性が確認された製品であることを表すものだ。

安全性を第三者が客観的に評価、認証する必然性から誕生したSマーク

電気製品認証協議会(SCEA)事務局長・川上広明氏は「消費者が製品を購入するにあたり、丸形PSEのみでなく、Sマークも付いたものを購入することで、さらに安全、安心に使える電気製品を手にすることができます。丸形PSEのない製品もあり、そういった製品ではなおさらSマーク付きの電気製品を選択することを推奨します」と説明する。

「特にネット販売では、素性のよくわからないメーカーや海外製品が出回っていることもあり、消費者自身が賢く電気製品を選択することがますます重要になっています」と訴える。PSEマークの457品目に対し、Sマークはさらに幅広い対象をカバー。Sマークは法律で義務付けられたものではないが、現在、店頭で販売されているテレビ、冷蔵庫等の主な電気製品の約7割にSマークが表示されている。

電気製品認証協議会では、Sマークをより多くの人に知っていただくために、マンガでわかりやすく解説したパンフレットを用意(1)

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■身近に潜む危険から賢く回避する

それでは、Sマークがなぜ、安心・安全の目安となるのか。第三者認証機関では、どのような検査が行われているのか。

Sマークの取得には数多くの厳格な評価試験をクリアしなければならない

PSEマークの表示に関する電気用品安全法の技術基準には、数多くの評価試験が要求されていて、Sマークでももちろん、それらの試験にすべて合格しないと適合の評価を受けることができない。例えば、電子レンジではドアの開閉試験がある。ドアが壊れてしまうと電子レンジの電波により大きな事故が起こりかねないからだ。そのため電子レンジの耐久年数をシミュレーションした10万回のドア開閉耐久試験が実施され、ドアやドアについているスイッチの破壊がないか確認される。

電気カーペットのようにマットの中に電熱線が張り巡らされている製品では、足で強く踏んだり、マットを折り曲げたりなどの大きな圧力がかかると電熱線が破損しショートを起こしたりする危険がある。そのため試験では、何千回という折り畳み耐久試験を行い、問題が生じないかを確認する。そのほか、ヘアードライヤーなどの電源コードも普段使用時に圧力を受ける危険の高い部品であることから、コードにも何千回という折り曲げ耐久試験が行われる。

さらに注目すべきは、「電気製品が多様化、複合化していくに伴い、新たな危険性が顕在化してきていることです。守るべき安全性能(要求事項)の規定も変更していく必要があります」と指摘する。それに対しSCEAではいち早い対応を目指す。新しいジャンルとして急成長を遂げた「電気ケトル」では2010年以降、転倒によるやけど事故、特に乳幼児のやけど事故の発生を伝える報道発表が相次いだ。SCEAでは、電気ケトルの事故防止へ、Sマークを認証するにあたっての追加基準の制定を早急に行い対応した。

最近の事例では、モバイルバッテリーの発火や爆発などの事故増大が記憶に新しい。ここでは、経済産業省も比較的素早い対応がとられ、2018年2月1日に発表した「電気用品の範囲等の解釈について」を一部改正し、電気用品安全法の規制対象に「ポータブルリチウムイオン蓄電池」を新たに追加。2019年2月1日以降はPSEマーク表示のないモバイルバッテリーは製造・輸入および販売ができなくなった。

身近に潜む危険から回避する賢い選択として、「ひとりでも多くの方にSマークの存在と意義を知っていただき、電気製品をお選びの際に、Sマークがついているものかどうかをきちんと確認して購入いただきたい」と語る川上氏。「これまでは見過ごされていた人も少なくないと思います。電気製品の安心・安全を示す大事な『Sマーク』。身の回りの家電製品に、また、これから購入しようとしている家電製品に、きちんとついているかどうかぜひ確認していただければ幸いです」と訴えた。

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