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拡がる気象データ活用

ツイートデータで体感的な“暑さ”“寒さ”を指数化。日本気象協会が小売り向け需要予測の新サービスを提供

2019/11/07 PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
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■マーケティングとしてのツイートデータ

日本気象協会とTwitter Japanは、気象データとTwitterデータを活用した商品需要予測に関する記者発表会を開催した。

Twitter Japan(株)マーケット・リサーチ ディレクター 岡野雅一氏は「分単位で即座に反応するのがTwitterの強み。国内の月間アクティブユーザー数は4,500万を超え、生活におけるさまざまな側面でTwitterが情報源として活用されている。実購買に対する影響も大きく、“発売”“欲しい”“買った”など購買に関わるツイートは年間2.3億以上におよぶ」と説明した。

Twitter Japan(株)マーケット・リサーチ ディレクター 岡野雅一氏

「企業のツイートを見ると親近感が湧く」「商品を知ったり購入したりするきっかけになる」「人の意見が見られるから参考になる」など、幅広いカテゴリーを対象に、もはやTwitterは消費行動における重要なプラットフォームに位置付けられる。今回はそうしたTwitterのマーケティング的な側面を活かして、日本気象協会の気象データと融合することで実現した“商品需要予測”という新たな価値を提案する。

■気温だけでは表せない体感を数値化

日本気象協会では「気象×データで実現する、調和のとれた社会」をコンセプトにした『eco×ロジプロジェクト』を展開する。気象データに加え、AIやビックデータを活用した、高精度の商品需要予測情報を提供するもの。さまざまな企業における「製・配・販」活動の最適化をサポートし、「食品ロス削減」や「CO2排出量削減」などの社会課題を解決、持続可能な発展へ貢献することを目指している。

一般財団法人日本気象協会 防災ソリューション事業部先進事業課シニアアナリスト 吉開朋弘氏は、「従来、インフラ保守などが中心だった気象予測を、よりビジネス的に活用いただき、経済活動を促進していきたい」と訴える。そのための課題となる予測のさらなる高精度化に対し、気温だけでは表せない体感を数値化できないかと考え、着目したのがTwitterのツイートデータだ。

一般財団法人日本気象協会防災ソリューション事業部先進事業課シニアアナリスト 吉開朋弘氏

同じ30℃でも、5月に突然気温が上がった30℃と、連日猛暑日が続く中で一息ついた8月の30℃とでは人の感じ方は明らかに違う。日射し、湿度、風、(暑さへの)慣れなど、消費行動に大きな影響を及ぼす、気温だけでは表せない体感を予測できれば、より精度の高い商品需要予測が可能となる。

気象データに体感による消費者行動を数値化して加味することでより精度の高い商品需要予測が可能になる

そこで、主観的、定性的でデータ化が難しい人の体感的な暑さ、寒さを、4年分の位置情報が付いた日本語の約1,600万ツイートから、「暑い」「寒い」が含まれるツイートを抽出して日ごとに集計。気温、日射量、湿度などの“状態の暑さ”だけでなく、気温の平年差、前日差による“変化による暑さ”、さらに、「この時期にしては〜」「7月並みの〜」など、過去からの気温の推移により表現される“心理・慣れ”の要素を加味することで、体感の変化を柔軟に表現する体感の指数化を実現した。

ツイートデータにより体感を数値化することを実現

■小売り向けサービス「売りドキ!予報」

「暑さ」「寒さ」に対するその日の体感は、マイナス100〜プラス100までの指数で表現され、「猛烈に寒い」「非常に寒い」「寒い」「肌寒い」「快適」「ふつう」「汗ばむ」「非常に暑い」「猛烈に暑い」の9つの表現にわかりやすくランク化した。本年4月より、小売り向けの新サービス「売りドキ!予報」の関東版を、7月には全国版をリリース。全国市区町村別に体感指数を予測し、550カテゴリーにわたる需要予測指数の提供を開始した。

昨年10月17日から1カ月にわたり行われた埼玉県内のスーパーでの実証実験では、体感指数が「非常に暑い」「猛烈に暑い」ときには、「今日は暖かいですね。青梗菜、アスパラなどの炒め物はいかがですか」と店内放送でアナウンス。体感指数が「猛烈に寒い」「非常に寒い」ときには、「今日は寒いですね。こんな日は鍋が食べたくなりますね。白菜、ブリなどはいかがですか」とアナウンスしたところ、実施店舗では比較店舗に対して青梗菜で30%増、アスパラで63%増、カブで28%増の売上増加効果が得られた。

体感指数を利用した販促の実証実験。青果では最大63%の売上げアップが見られた

気象データの活用シーンは広がっており、配送方法を変えてCO2の54%削減を実現した飲料メーカー、値下げ時期の判断の適正化で利益率が90%増加したアパレルメーカーの例も報告されている。吉開氏は「さまざまな業態で実証実験が行われ、気象データの活用事例が増えており、社会的に意義ある取り組みだと思う。まずは食品、小売りからスタートし、今後さらに幅広い業界と話をしていきたい」と訴えた。

社会課題を解決する気象データの活用シーンは広がりつつある

なお、当面の課題のひとつとして、「ツイートデータの特性から、どうしても若い人が多い都市部にデータが偏ってしまう」と指摘。地方でのニーズにより的確に応えていくために、「そうした地域において、“暑い”“寒い”でツイートしてもらうなど、こちらからデータを取りに行くことも必要」との方策を示した。

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