HOME > ニュース > 8K HDRで捉えたルーブル美術館の魅力。NHKの先行試写を記者が体験

BS 8Kで6月9日から4週連続放送

8K HDRで捉えたルーブル美術館の魅力。NHKの先行試写を記者が体験

2019/05/20 編集部:平山洸太
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
NHKはBS8Kにおいて、6月9日から4週連続で「ルーブル美術館 美の殿堂の500年」を放送する。これに先立ち、プレス向け試写会が開催された。

「ルーブル美術館 美の殿堂の500年」

音楽を担当した千住明氏(左)、学術監修を行った三浦篤氏

本番組は、NHKがフランス・ルーブル美術館と国際共同制作を行ったもの。2016年に制作された「ルーブル 永遠の美」に次ぐ8K番組となる。ルーブル美術館の歴史とともに美術品の解説が行われる60分の番組となっており、全4回に分けて放送が行われる。放送予定は下記の通り。

6月9日(日)午後7時「第1集 すべてはレオナルド・ダ・ヴィンチから始まった」
6月16日(日)午後7時「第2集 太陽王が夢見た芸術の国」
6月23日(日)午後7時「第3集 革命とナポレオンのルーブル」
6月30日(日)午後7時「第4集 永遠と美の殿堂へ」

また関連番組として、6月2日の午後7時からは、BS8Kで「ルーブル 永遠の美」が放送。同日午後1時50分からはNHK総合で「ルーブル美術館 美の殿堂500年の旅」が放送予定となっている。

6月9日から4週にわたり放送される

試写会では、第1集「すべてはレオナルド・ダ・ヴィンチから始まった」が、300インチのスクリーンに8K/HDRで上映された。16世紀のフランスにフォーカスした内容で、フランス王フランソワ1世が、レオナルド・ダ・ヴィンチをイタリアからパリに招いたことをはじめに、パリが芸術の都に至るまでの初期の潮流が描かれる。

レオナルド・ダ・ヴィンチの作品を中心に、ミケランジェロ、ラファエロの作品も交えて多くの作品が鑑賞できる内容となっていた。8Kでみる絵画は非常に高精細で、肉眼よりも細かく見えるほど。筆のタッチや年月によるひび割れ、彫刻の質感など、じっくりと見れるようなカメラワーク、編集と相まって、細部まで観察するように見ることができた。

また絵画の見え方に関しても、解像度だけでなく凹凸に光があたったところ、金が施された額などの見え方もHDRのおかげか、とてもリアル感じられた。サウンド面でも22.2chのため広がりや高さなどが感じられ、映像と相まって、非常に充実した時間を過ごすことができた。

試写会後の会見では、音楽を担当した作曲家 千住明氏、学術監修を行った東京大学教授 三浦篤氏、制作を統括したNHKエデュケーショナル 倉森京子氏が登壇。それぞれコメントを行った。

制作に携わった3名が登壇した

まず制作統括の倉森氏によると、今回の番組は2016年に制作した「ルーブル 永遠の美」がルーブル美術館から評価されたことで、制作が決まった。全4回の構成となっているが、1本につき11日間の撮影がルーブルから用意されたとのこと。そのうち撮影できる時間は、火曜日の休館日に加えて、閉館後となる夜のみだったという。

制作統括 NHKエデュケーショナル 倉森京子氏

今回の映像に関して、「リアルな表現になっていると思います」「実際に(ルーブル美術館に)立っている感じがされたと思います」と倉森氏はコメント。写真で撮ったほうがより高精細に撮れる中で、あえて8Kにこだわった理由として、映像として捉えることで “物質感” が感じられ、これにより美術館に立っているように感じられるのでは、という仮説があったという。

また内容について、1本の番組の中で色々な時代を楽しめるとのこと。ルーブルが16世紀に王様のコレクションからはじまり、現在のようになった歴史をたどる中で、いろいろなものを1本で見ることのできるという構成を目指したという。

続いて音楽を担当した千住氏がコメント。今回の音楽は、「ルーブルの中で流れている音楽はこういったものだろう」ということをテーマに制作した話した。録音では、NHKのCR-509という、100人入ることができる広さのスタジオにおいて、スタジオの響きを「自然の響きとして捉えて再生するという試み」を行ったとのこと。

作曲家 千住明氏

「いちばん重要なのが時間の流れ」と話し、ルーブルの500年以上の歴史の中で「1つずつ刻んできたこと、ふるいにかけられて残ったアートが何を伝えようとしているのか、翻訳して伝えなければ」と、制作にあたっての考えを語った。また出来上がった番組については「新たなスタンダードに僕たちが挑んだということを、一緒に感じてほしいと思う」と話した。

学術監修を行った三浦氏は、今回の番組について「8Kという最新の高精細映像と、美術史学という専門性と、音楽が融合してこれまでにない作品になったのでは」とコメント。古代から時代順にただ作品を並べるといったこれまでとは異なり、「ルーブルそのものと共にみていく」という構成になっているとのこと。これは「パリの歴史とともに見ていくことと同じ」だという。

東京大学教授 三浦篤氏

また8Kで撮影を行ったことによって、学術的にも意義があると解説。表面の状態を細密に記録していくことで、特に保存修復に役立つという。「静止画ではなく動画がポイント」と説明しており、「像で見ると作品の表面の質感が迫ってくる。われわれの目は動くので、目の生理に近く、よりよく捉えられるのでは」と見解を述べた。

加えて、細部をアップで記録することは「とても意味のあること」と話す。たとえば、「モナリザの目の近くの無数に亀裂がある。これを見ただけで色々なことを感じさせてくれる。絵画は空間芸術だけではなく時間芸術でもあることを知らせてくれるのは、この無数の亀裂」だという。

また68万点という多くの収蔵数を誇るルーブル美術館。8Kで細部を見ることで、普段見えていない部分に気がつくことも多く、研究にも役立つとのことで、「いろいろな意味において大変有意義な番組制作だと思いますので、ぜひいろいろな方にお話して、ぜひ広めていただきたい」とコメントして締めくくった。

放送は6月9日の午後7時から。試写会では、8Kの高精細が大きく生かされたコンテンツだと感じた。芸術作品に興味がある方も無い方も、8K試聴が可能な環境がある方は、ぜひ視聴されたい。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク

トピック