足立梨花さんらもゲストとして登場

Jリーグ×12K映像×ドルビーアトモス。現地さながらの臨場感を味わえる「デジタルスタジアム」を記者が体験してきた

編集部:小野佳希
2019年05月13日
横方向の解像度が12Kの映像とドルビーアトモス音声でサッカーを観戦するイベント「Jリーグ デジタルスタジアム」が開催された。両チームのサポーターはもちろん、Jリーグの村井満チェアマンやJリーグ名誉女子マネージャーを務めるタレントの足立梨花さんらも登場した当日の様子を、某Jリーグチームのサポーターでもある本誌記者がレポートする。

当日の会場のようす

■12K映像と12.6.8chのアトモス音声でスタジアムの臨場感を再現

対象となった試合は、5月12日に開催された明治安田生命J1リーグ第11節「ヴィッセル神戸 vs 鹿島アントラーズ」(ノエビアスタジアム神戸)。4Kカメラ5台で撮影した現地の映像を、東京・大手町の特設会場で横12Kの超ワイド映像とドルビーアトモス音声とともにパブリックビューイングするというイベントだ。

会場には縦4M×横17mのメインスクリーンと、その左右にそれぞれ2面ずつ計4面のサブスクリーンを設置。スタジアムメインスタンドから撮影したピッチ全体の映像を横12K(アスペクト比48対9)でメインスクリーンに映し出し、サブスクリーンのひとつにDAZN等用の中継映像、もうひとつにシュート数やヒートマップなどの試合スタッツデータを表示するというスタイルが採用された。

サブスクリーンに中継用映像や各種データを表示

音声面では平面用12台、天井に8台のスピーカーと6台のサブウーファーを設置。ホームシアター的に言えば12.6.8chのシステムだ。テレビ中継のような実況・解説音声はつけず、コアなサポーターが集まるゴール裏席からのチャント(応援)を中心にスタジアム音声のみがドルビーアトモス音声で再生された。

天井側にもスピーカーを設置

なお、スタジアム側では4Kカメラ5台で撮影した映像をまず16対9の4K映像3本にして伝送。その映像を同期してイベント会場の4Kプロジェクター3台で12K上映するというシステムとなっていた。データ伝送にはNTT研究所が開発した通信技術「Kirari!」を用いており、低遅延かつ高品質な映像伝送が行えるという。

メインスクリーン用に3台、サブスクリーン用に4台(スクリーン1面に1台ずつ、4スクリーン)のプロジェクターが用意された

4K映像はSDRでの上映。撮影の技術面を担当したNTTグループのスタッフによれば「もし今後HDRや8Kなどで伝送するデータ量が大きくなってもシステム的には対応できるキャパシティがある」とのこと。この日はうまく調整されていて現地映像は日なたでも日陰でもプレーの様子を問題なく確認できたが、HDR映像になればより見やすくなるだけに今後にも期待したいところだ。

イベントはチケットの一般販売を行い、当日は359名のサポーターが集合。会場にはこの日対戦するヴィッセル神戸のOBでもある元日本代表の播戸竜二さん、鹿島アントラーズの元監督でもある石井正忠さん、Jリーグ名誉女子マネージャーを務めるタレントの足立梨花さんもゲストとして登場。Jリーグ中継のリポーターなども多く務めるフリーアナウンサー日々野真理さんの司会でトークショーも披露し、「スタジアムで見ているかのような臨場感だった。音も凄くよくて、まるで自分が応援されてるような感覚(笑)」(播戸さん)など感想や期待を語り合った。

ゲストによるトークショウも

また、現地からは日韓W杯でも活躍した元日本代表選手で現解説者の戸田和幸さんとの中継や、試合後にはアントラーズ永木亮太選手の勝利インタビューなどが、イベント会場専用に行われるという特典も用意された。

加えて、両チームグッズの物販ブースや、ドコモ「d払い」やiDでのキャッシュレスサービス、NTTコミュニケーションズのカメラシェアリングサービス「PaN」を使って自分が選手になったかのような合成写真が簡単につくれるフォトブースなども展開。パブリックビューイング以外にもさまざまな取り組みが用意された。

クロマキー合成で自分がプレーに参加しているような写真を撮影。写真はその場で自分のスマートフォンにダウンロードできる

チームグッズの物販ブースも

■Jリーグ村井チェアマン「『おいしいとこどり』な魅力を提供できた」

そして、イベント後に囲み取材に応えたJリーグ村井チェアマンは「サッカーの醍醐味である迫力や臨場感をスタジアムの外でもいかに提供できるかが課題だとかねてから思っており、今回はそれを非常に高いレベルで提供できたと思う」とコメント。「ボールのないところでの選手のかけひきなどテレビ中継では映らない部分を見られるのと同時に、(サブスクリーンの中継映像上映やスタッツ情報で)スタジアムにいると得られない情報も見られる『おいしいとこどり』な魅力を提供できたのではないか」と語った。

Jリーグ 村井チェアマン

一方で、12K映像やドルビーアトモス音声といったコンテンツ面には非常に満足しているとしつつも、「横長の映像なので一番前に座った方は見えづらかったかもしれない。会場や座席の配置などももう少し考えたほうがよかっただろう。また、スタジアムグルメも提供できればもっとよかった」など、今後に向けた課題にも気付いたとコメント。

そして「(ドルビーアトモス対応などの)設備の整った映画館で今回のようなイベントを実施したり、Jリーグとして豪華なディナーをセットにして提供するなどもできるかもしれない」と今後のアイディアも披露した。

■記者が体験。一般的なパブリックビューイングとは違った魅力

メインスクリーンの映像は、最初から最後までピッチ全体を映す俯瞰映像のみで、選手の表情のアップなどは映らない。まさにスタジアムの座席から見ているような状況だ。実況音声なしでスタジアムの現地音声のみが大音量で聴こえてくることと相まって、かなりの臨場感を味わえた。メインスタンドに座っているような映像なのに音はゴール裏というのも不思議な感覚だがこれはこれで面白い体験だ。

会場ではスクリーンに向かって右側に神戸サポーター、左側に鹿島サポーターといったようにスタジアム同様に両チームサポーターを分けた席割りがされ、右側のスピーカーからはスタジアム現地の神戸サポーターの応援、左側のスピーカーからは鹿島サポーターの応援が主に再生された。

記者席は会場の左端だったので、残念ながらスイートスポットである会場中央の音をちゃんと確認することはできなかった。記者席では試合中はほぼ鹿島サポーターの応援しか聴こえず、例えば神戸サポーターが試合開始直前に歌うアンセム「神戸讃歌」などもまったく聴こえない状況だったのだが、会場中央であればもう少し違ったのだろうか? もし次の機会があるようならば今度はそうした部分も確認してみたい。

オーディオビジュアル的な観点で少し気になったのは映像面だ。3本の映像のステッチ(つなぎ合わせる部分)が結構はっきり認識できる状態だった。これは複数のプロジェクターの映像をつなぎあわせるというシステム上の問題で、街頭ビジョンを始めとするLEDディスプレイなどであればクリアできるとのことなので、例えばソニーのCrystal LED Display「CLEDIS(クレディス)」(関連ニュース)などで上映してくれたら最高だろうなと感じたりもした次第だ。

2018年のInterBEE会場でソニーブースにて展示されていた440インチの8K Crystal LEDディスプレイ

加えて、サッカースタジアムはかなり横長であるという特性上どうしてもカメラも広角で撮影しなければならず、魚眼レンズとまではいかないものの映像にはどうしても歪みが出てしまっていた。極端に気になるほどではなかったが今後の課題のひとつだろう。

とは言え、総じて今回の取り組みは非常に興味深いものだった。スタジアムにいるのと同じように自分が好きな視点で試合全体を見つつ、気になったシーンはサブスクリーンに流れる中継用映像のアップやリプレーで確認できるというのはなかなか快適だ。チェアマンのコメントにある “いいとこどり” はまさに的を射た表現と言える。

今回のイベントでは、スポーツバーなどでの一般的なパブリックビューイングとは違った魅力を感じられた。遠方アウェイや平日アウェイなど、なかなか現地スタジアムまで足を運べない機会はどうしても出てくるが、こうしたスタイルでの観戦機会があればスポーツはもっと魅力的になることだろう。今後のさらなる展開に期待したい。

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