3月21日(木)発売

大滝詠一 待望の初ライブアルバム「NIAGARA CONCERT ’83」 を一足先に聴いた!

永井光晴
2019年02月08日

当時のコンサートパンフレット(現物)が展示された試聴会入口
大滝詠一は日本のロック・ポップス史における最重要人物

いきなりだが、世界初のCDソフトのタイトルはご存知だろうか。1982年10月1日、邦楽が大滝詠一の『A LONG VACATION』(35DH-1)で、洋楽がビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』(35DP-1)である。正確にはCBSソニーとEPICソニーは約50タイトル、日本コロムビアから10タイトルあったため、型番「1」を冠したタイトルという意味である。

大滝詠一を紹介するには、まずはこの『A LONG VACATION』となるが、 通称"ロンバケ"と呼ばれる本作は、LPレコードで1981年3月に発売され、オリコンで1981年度年間2位を記録、発売1年で100万枚を突破したヒットアルバムである。収録曲は、他のアーティストによるカバーはもちろん、2000年以降も「君は天然色」や「カナリヤ諸島にて」「恋するカレン」はCMソングに採用されるなど、耳馴染みの曲になっている。

また80バージョン以上という、ひじょうに多くのアーティストにカバーされた「夢で逢えたら」は、大滝詠一作詞・作曲による最大のスタンダードナンバーであろう。

なぜかオーディオマニアには、大滝詠一ファンが多い

なぜかオーディオマニアには、大滝詠一ファンが多い。なのでここで大滝詠一をやすやすと語ると、ツッコミが入るに違いないのだが、間違いなく大滝詠一は日本のロック・ポップス史における最重要人物のひとりである。

大滝詠一は、いまでは当たり前になったことの先駆者でもある。日本で初めてミュージシャンによるプライベートレーベルを設立(「ナイアガラ」)。プロデュースのクレジットを入れる。ミュージシャンとしてCMソングを本格的に作る。シングルにカラオケバージョンを入れる。世界初のCDリマスタリングを行うなど、挙げればキリがない。

81年には「ヘッドホン・コンサート」なる、ステージ演奏をFMウォークマンを通して、客席でヘッドホンで聴くという試みをナマでやってしまった。

また多くの別名を持ち、音楽活動における画期的な足跡を残した大滝は、1984年の「EACH TIME」以降も新譜発表を常に待望されながら、2013年12月30日に急死(享年65歳)。伝説のアーティストたちの多くがそうであるように、それから遺された音源を発掘する作業が始まっている。死後、2016年に『DEBUT AGAIN』が新譜として発売された。また2014年12月の『Best Always』(ベスト・オールウェイズ)には、前述の「夢で逢えたら」の大滝歌唱によるセルフカバーが初収録された。


大滝詠一初のライブアルバムが3月発売。初回生産限定盤は3枚組のオマケ付き

さて、前置きが長くなったが、ついに待望の大滝詠一ライブアルバムが発売される。


コンサートには大瀧詠一のほか、ラッツ&スターとサザンオールスターズが出演(当時のパンフレット)

パンフレットの大瀧詠一のページ(当時のパンフレット)
3月21日に発売される「NIAGARA CONCERT '83」は、1983年7月24日に西武球場で行われたニッポン放送主催の「ALL NIGHT NIPPON SUPER FES '83」の模様を完全収録したものだ。大滝の最後ライブは、1985年6月15日の国立競技場で行われた「国際青年年記念 ALL TOGETHER NOW」のはっぴいえんど再結成での出演(CD化済み)になるが、大滝詠一名義ではこの西武球場ライブが最後である。

収録曲は全16曲(CD1枚)。初回生産限定盤にはさらにCD1枚、DVD1枚がついて全3枚組となる。ボーナスCDは1970年〜80年初頭にかけての数あるライブ音源の中から、オリジナルではなくオールディーズのカバー曲ばかりを集めた「EACH Sings Oldies From NIAGARA CONCERT」の全17曲。この中には最初期の高校生時代の録音と思われる、故郷・岩手における予餞会(=謝恩会のようなもの)での歌唱も収録されている(1966年)。こんな音源まで掘り出されるとはファンとして嬉しいが、本人が存命していたら絶対に出てこなかっただろう。

またボーナスDVDは、1977年に行われた「THE FIRST NIAGARA TOUR」の模様をフィルムで記録したナイアガラ初の映像作品(監督:井出情児)である。

マスタリング済音源の最速試聴会で、驚きのサウンドを体験

発売に先駆けて、マスタリング済みの音源を試聴する最速試聴会に参加する機会を得た。試聴できたのは、「NIAGARA CONCERT '83」から8曲と、ボーナスCDから2曲、DVDの試写である。

なんといっても「NIAGARA CONCERT '83」の録音状態の良さに感心する。もちろんこのライブはニッポン放送でオンエアされることを前提にしているので、大滝詠一のこだわりは相当なもの。実際にオンエアされたのは7曲だけなので、全曲を通して聴けるのは、ライブ会場にいた観客以外、初めてとなる。

ステージには、当時のナイアガラ・レコードを支えていたスタジオミュージシャンが勢揃いし、 さらに新日本フィルハーモニー交響楽団のストリングス・セクションを配置。”Niagara Fall of Sound Orchestral”名義のビッグバンドは、驚くほど音の種類と量が豊かである。ステージ上でモニター音源のバランス調整をできるようにするという無理な要求を通し、マルチトラックレコーダーをライブに持ち込んだ。スタジオワークで誕生した分厚いサウンドは大滝詠一の実験的録音の集大成であるが、そのスタジオレコーディング環境をそのままライブで再現しようというとんでもない試みは、その規模もコストも、いまもって異例中の異例といえる。

演奏中の拍手や声援などはまったく聴こえない。曲間で多少、”大滝さーん”という掛け声が何度か聞こえる程度だ。本当はアルバム『EACH TIME』の新曲が披露されるはずだったライブなのだが、発売延期された(翌年1984年3月発売)。本ライブでは、『A LONG VACATION』からの曲と、薬師丸ひろ子に提供した「探偵物語」と「すこしだけやさしく」、森進一の「冬のリヴィエラ」の英語詞バージョン「夏のリヴィエラ」などのセルフカバーを披露して、観客サービスしている。

そして終盤の盛り上がり曲「FUN×4」で、大滝詠一が歌詞を替えて歌っているのに笑ってしまった。「♪楽しみを4倍に」を「8倍」と、"さらに倍!"にしている。


ナイアガラレーベルのレコードジャケットが並べられ紹介されている(当時のパンフレット)

新オリジナルアルバム「EACH TIME」が発売延期になったことを自虐的に謝罪するマンガが挿入された(当時のパンフレット)
前代未聞のライブの裏話などは、パッケージ発売時に封入される「ライナーノーツ」(能地祐子氏)で詳細に紹介されているので、それを楽しみにしてほしい。

喜々としてパフォーマンスする大滝詠一は、けっしてライブ嫌いじゃない

さて、DVDの試写は、とてつもなく画質が悪い。画角がスタンダード(4対3)であるのはもちろんだが、これは「ホーム8ミリ? それともVHS?」と首をかしげるほどの保存状態の悪さである。販売価値に耐えないからこその「オマケ」である。

しかしながら内容はファンなら満足できる、ナイアガラ初期のコンサートを記録している(1977年のファーストツアー)DVDだ。なによりも「大滝さんがライブを楽しんでいる」姿が拝めるのが嬉しい。ロンバケ以降のライブ活動はほとんどなかった大滝詠一だが、喜々としてパフォーマンスする様子は、少なくともライブが嫌いだったわけでないというのが伝わってくる。それよりも、理想とする音像構築に全精力を傾けていっただけなのだろう。


『NIAGARA CONCERT ʼ83』
3月21日(木)発売
【初回生産限定盤】品番:SRCL-11100〜11102/仕様:CD2枚+DVD1枚/価格¥6,480(税込)
【通常版】品番:SRCL-11103/仕様:CD1枚/価格¥2,700(税込)
☆初回生産限定盤予約特典☆ナイアガラ特製クリアファイル(B5サイズ)

【収録内容】
【NIAGARA CONCERT ’83】(CD1/通常版、限定版とも)
M-1 夢で逢えたら(Niagara Fall of Sound Orchestral)
M-2 Summer Breeze(Niagara Fall of Sound Orchestral)
M-3 Water Color(Niagara Fall of Sound Orchestral)
M-4 青空のように(Niagara Fall of Sound Orchestral)
M-5 カナリア諸島にて(Niagara Fall of Sound Orchestral)
M-6 オリーブの午后
M-7 ♡じかけのオレンジ
M-8 白い港
M-9 雨のウエンズデイ
M-10 探偵物語
M-11 すこしだけやさしく
M-12 夏のリヴィエラ
M-13 恋するカレン
M-14 FUN×4
M-15 Cider ’83〜君は天然色
M-16 夢で逢えたら、もう一度(Niagara Fall of Sound Orchestral)

【EACH Sings Oldies from NIAGARA CONCERT】(CD2 ※初回生産限定盤にのみ)
M-1 Confidential(1981/12/03 HEAD PHONE CONCERT@渋谷公会堂)
M-2 Blue Velvet(1981/12/03 HEAD PHONE CONCERT@渋谷公会堂)
M-3 Secretly (1981/06/01 A LONG VACATION@新宿厚生年金会館)
M-4 I Love How You Love Me (1981/06/01 A LONG VACATION@新宿厚生年金会館)
M-5 Fools Rush In (1981/06/01 A LONG VACATION@新宿厚生年金会館)
M-6 Sheila〜シャックリママさん〜Love’s Made A Fool Of You(1981/06/01 A LONG VACATION@新宿厚生年金会館)
M-7 Mr Blue (1980/12/16 LET’S DEBUT AGAIN@芝・郵便貯金ホール)
M-8 Dreamy Eyes (1980/12/16 LET’S DEBUT AGAIN@芝・郵便貯金ホール)
M-9 Come Softly To Me (1980/12/16 LET’S DEBUT AGAIN@芝・郵便貯金ホール)
M-10 Who Put The Bomp(with シャネルズ) (1980/12/16 LET’S DEBUT AGAIN@芝・郵便貯金ホール)
M-11 His Latest Flame “マリーは恋人” (1980/12/16 LET’S DEBUT AGAIN@芝・郵便貯金ホール)
M-12 Train Of Love〜サマーローション (1977/06/20 THE FIRST NIAGARA TOUR@渋谷公会堂)
M-13 Dream Lover〜Travelin’ Man (1976/10/07 GO! GO! NIAGARA@渋谷公会堂)
M-14 Blue Suede Shoes (1976/03/29 NIAGARA TRIANGLE CONCERT@芝・ABC会館ホール)
M-15 Yesterday(1966/11/03@岩手 予餞会)

【THE FIRST NIAGARA TOUR 1977/6/20 渋谷公会堂】(DVD ※初回生産限定盤にのみ)
M-1 ナイアガラ・ムーンがまた輝けば /大滝詠一
M-2 FUSSA STRUT /大滝詠一
M-3 The Very Thought Of You /シリア・ポール duet with 大滝詠一
M-4 夢で逢えたら /シリア・ポール
M-5 COBRA TWIST /多羅尾伴内
M-6 こいの滝渡り /大滝詠一
M-7 ナイアガラ音頭 /布谷文夫

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