月刊「AVレビュー」連動企画

【短期集中連載】コレが我が社の4K/8K技術(8)東芝「4Kレグザ "シネマ4Kシステム"」

インタビュアー / 山之内正
2013年04月26日
世界初の4Kテレビを2011年に投入し、4Kという次世代ディスプレイの姿をいち早く提示した東芝。彼らは2013年上期に84型・65型・58型の4Kテレビを投入予定であり、65型と58型は「1インチ1万円を切る」価格となる(関連ニュース)。この新しい4Kレグザには、一体どのような映像技術が搭載されるのか? 東芝の4K戦略と共に話を聞いた。

■13年上期に新モデルを投入し4K市場を活性化させる


株式会社東芝 デジタルプロダクツ&サービス社 商品統括部 TV商品部 日本担当 参事 本村裕史氏 1985年入社。デジタル技術者としてAV機器開発に従事の後、商品企画、マーケティング担当として現在に至る。レグザの商品戦略・マーケティング戦略を担当。
山之内 今年のCESでは「13年上期に4Kモデルを3サイズで発売する」という、非常に野心的な発表がありました。

本村 2011年に世界初の4Kテレビを投入して以降、4Kのテレビ市場を牽引する我々が取り組むべきは2つあると思っています。1つは4Kテレビのラインアップ拡充、そしてもう1つは、4K放送への準備を含め4K映像処理技術の開発を加速させることです。2013年上期に新モデルを投入し、4Kテレビの市場を活性化させたいと考えています。

山之内 発売予定のモデルは58型と65型、そして84型ですね。

本村 既に国内では、40型以上のテレビを購入する方の4人に1人が50型以上の大型テレビを選択しています。より大きいサイズを求める流れは今後も加速すると思います。その一方、フルHDの解像度では精細感という点で限界に来ているのも事実です。というのも、フルHDの規格は50インチを基準に定義されているからです。

山之内 大画面化と高画質化を両立するには4Kが必然、というわけですね。

本村 4Kのコンテンツが無ければ、4Kテレビの存在価値が無いとは思いません。最高の画質でBDを観るには、最高の画質で今の地デジ・BS番組を観るには、4Kの技術が必要不可欠なのです。そして「4Kにあらずんば大型テレビにあらず」という時代の到来は、そう遠くないと思います。

■エンジンとパネルを融合し映画を最高画質で描写する


株式会社東芝 デジタルプロダクツ&サービス社 プラットフォーム&ソリューション開発センター プラットフォーム・ソリューション開発第一部 第四担当 グループ長 山内日美生氏 1993年入社。カメラの映像信号処理技術開発に従事の後、レグザブランドの立ち上げ時より、高画質化システム及び映像エンジン開発を担当。今回、「REGZA ENGINE CEVO 4K」開発に注力。
山之内 新しい4Kテレビには「シネマ4Kシステム」という名称が使われています。これにはどのような狙いがあるのでしょう?

本村 現状4Kパネルはまだ種類が少なく、映像エンジンが画質を大きく左右すると思っています。新開発「REGZA ENGINE CEVO 4K」と4Kパネルを組み合わせ、大画面の代名詞でもある映画を最高画質で描写する技術として、シネマ4Kシステムと命名しました。もちろん、BDの映画だけでなく、地デジなどの放送番組も高画質に表示できるようにしています。

山之内 REGZA ENGINE CEVO 4Kについて詳しく教えて下さい。

山内 第一世代の4Kテレビを開発した際、4Kの画質的メリットが豊かで滑らかな質感や微細な輝きにあると感じました。これをより進化させるべく、今までのノウハウ・技術を全て投入し、4K映像のために新規に開発したのがREGZA ENGINE CEVO 4KというLSIになります。

山之内 新エンジンは信号処理のどこで使われているのですか?


東芝デジタルメディアエンジニアリング株式会社 デジタルメディアグループ 映像システム技術担当 TV映像マイスター 住吉肇氏 1982年入社。テレビ用高画質アナログICの開発に従事した後、高画質処理システム「メタブレイン・プロ」を開発。以降、高画質化システム・アルゴリズム開発に参画。「シネマ4Kシステム」では、ノイズリダクションや超解像及び輪郭補正のシステム開発に従事。
住吉 パネルに表示する前段部分、フルHD信号を4K信号にするために超解像処理を施す部分に新しいLSIを使っています。

山内 質感の向上には「4K微細テクスチャー復元」が使われています。映像からテクスチャー部・エッジ部・平坦部をそれぞれ判別し、4Kに最適化したテクスチャーを再現、映像に足し直しています。エッジが立つだけではなく、質感も向上することでネイティブの4K映像に近づけています。

山之内 4Kならではの輝きはどのように再現しているのでしょう。

山内 輝度成分は、撮影や伝送の過程で、本来の輝きよりも鈍くなってしまいます。今回我々は光沢成分とマットな物体色成分を分離する技術を開発し、光沢成分のみを復元・再合成することできらめく輝き感を実現しています。

山之内 映像エンジンに関して、他社には無い強みは何ですか?

山内 コンテンツの映像を解析する技術ですね。本来の精細感は? ノイズはどれくらいあるのか? などをリアルタイムに見分け、適宜最適となる処理を施すためにも、高速かつ精度の高い解析技術が欠かせません。

■新しい超解像技術を搭載し地デジ映像の高画質化を実現


株式会社東芝 デジタルプロダクツ&サービス社 設計開発センター デジタルプロダクツ&サービス設計第五部 第三担当 主査 松尾多喜男氏 1972年入社。海外向けテレビの回路設計に従事の後、レグザブランドの画質設計を担当し現在に至る。
山之内 4Kテレビで見るBDソフトの映像は非常にキレイですが、地デジ番組はまだ改善の余地があると思います。新しい4Kテレビでは何か対策はされていますか?

住吉 地デジを4Kパネルに表示する際、従来の「REGZA ENGINE CEVO」で超解像処理(1440→フルHD)を行った後に、新しいLSIで超解像処理(フルHD→4K)を行っています。CEVOにも新しいLSIにも映像処理技術が搭載されていますが、その一部には重複する機能も含まれています。低レートの映像と言えど、何度も処理を加えれば高画質になるというわけではありません。映像処理の過程で、ソースごとに最も効果的な機能をどう使いこなすかが高画質にするためのキーとなります。今回地デジを高画質に表示させるべく、前段のCEVOではランダムのノイズリダクションを、そして後段の新LSIで4K用に開発したランダム、及びモスキートのノイズリダクションを行っています。

山之内 機能をバランス良く働かせることで、効果的にノイズを処理しているわけですね。ノイズリダクション以外で地デジの高画質化に寄与した技術はありますか?

住吉 ノイズ処理だけでは、4Kパネル上で地デジを高画質にすることはできません。如何に4Kらしい精細感を地デジで実現するかが重要です。そこで、後段の超解像処理には新たに「絵柄解析 再構成型超解像技術」を搭載しました。

山内 従来の再構成型超解像では、過度に精細感が上がってしまう部分と超解像の効果が不足していた部分が混在していました。これは面で一律に処理をしていたためです。新しく開発した超解像技術は、エリアごとの精細感に応じて処理を最適化することで、超解像の精度が増し、画面全体の精細感が向上しました。

山之内 エリアごとに周波数分布を見て適切な超解像処理をかけているわけですね。

山内 エリアも固定ではなく可変ですから、あらゆるシーンで効果を体感してもらえると思います。

松尾 ノイズ処理と超解像処理の両者をどうバランスさせるか、発売に向けて、画作りを追い込んでいるところです。

山之内 この他にも新モデルの画質的フィーチャーはありますか?

山内 新モデルでは、4K入力信号に対しても、ダイナミック階調補正やノイズリダクション処理、24pのコマ補間を行うフルデジャダー機能などを搭載しています。

山之内 発売が非常に楽しみです。

本村 CESでも発表しましたが、58型と65型は1インチ1万円を切る価格設定を予定しています。

山之内 この価格は非常にインパクトが大きいと思います。

本村 新モデルには「タイムシフトマシン」も「ざんまいプレイ」も搭載予定です。我々はショールームに飾るような、特別な4Kテレビを作る気はありません。4Kテレビを大型テレビのメインモデルにしたいのです。


本記事は月刊「AVレビュー」2013年5月号(4月17日発売)の特集「4Kのすべて」からの抄録です。誌面では、この記事の倍のインタビュー全文がお読み頂けます。「続きが読みたい!」「特集をすべて読みたい!」という方、「AVレビュー」のご購入はこちらからどうぞ。

関連記事