<IFA>“自然界の光を再現する”「ICC-4Kテレビ」の詳細に迫る − アイキューブド研究所 近藤所長インタビュー

取材・執筆/折原一也
2012年09月02日
シャープはIFAの会場にて、「ICC-4Kテレビ」の名称で4Kパネルを搭載した60V型テレビの技術デモを行っている。今回、アイキューブド研究所の近藤哲二郎所長、シャープのAVシステム事業部 液晶デジタルシステム第3事業部 事業部長の草尾 寛氏にお話を伺うことができた。


今回出展されたICC-4Kテレビ

アイキューブド研究所 近藤哲二郎所長(右)、シャープ 草尾 寛氏(左)
“自然界の光と同じような光を再現する“ことを目指した「ICC-4Kテレビ」

「ICC-4Kテレビ」は“4K”というスペックを前面に押し出すのではなく、それによって得られる“映像体験”を訴求点としているのだという。「アナログからSD画質、HD画質という高解像度への流れは世界共通のトレンドではあるが、いつか人間の眼の限界を超えた画質に到達することになるので、いつまでもそれを追いかける訳ではない」と語る近藤氏。目指すものは「自然界の光と同じような光を再現する」ことなのだという。

ICC技術のイメージ図

ICC技術では2Kから4Kへのアップコンバートを行うが、これは解像度変換に主眼を置いたものではなく、人間が自然の景色や被写体を光の刺激として脳で理解する「認知」の過程を、映像による光の刺激として再現するためのものであるとのこと。ICC技術による映像クリエーションの具体的なアルゴリズムについては非公表ではあるが「カメラを通して撮影する際に失われる情報を、自然界のルールの上に基づいて再現するもの」(近藤氏)としている。

また「ICC-4Kテレビ」は、ICC技術とシャープの液晶技術を組み合わせているのも特徴として挙げられる。草尾氏は「ICC-4Kテレビでは、ICC信号処理に最適化した液晶パネルを採用している。そのため、汎用パネルにICC技術を適応しただけでは、同じ映像は出せない」と言い切る。液晶の駆動回路を最適化するなど、パネル設計の段階から映像の合わせ込みがなされていることは、他社の4Kテレビとはアプローチが異なる点だろう。

今年出展されているICC-4Kテレビは、昨年のIFAに出展されていたものより画面のなかでの奥行き感を出し、様々な映像ソースに対して確実なクリエーションが行え、パネル個体差への対応力を持たせたもので、内部的に大きく生まれ変わった第2世代とのことだ。

近藤所長と草尾氏から説明を受ける折原氏

デモでは、木の上の猿を撮影したものや湖を航行する船など実写のフルHDベースバンド映像を視聴することができた。元の映像に加え、一般的な業務用の4Kアップコンバーターをかけた映像と比較を行った。ICC-4Kでは画面全体にフォーカスが合い、より映像の遠近感が増し、リアリティを感じることができた。


左が通常の業務用アップコンバーターをかけたもの、右がICC-4K液晶。
ちなみに、例えば映画のように、製作者の意図として映像内にボケを作っているものや、CGなど実写以外の映像ソースについては、製品化の際それ用の映像モードを用意することで対応する予定とのことだ。


世界に先駆けて日本で60V型モデルを発売予定

「ICC-4Kテレビ」製品化の具体的な時期に関しては未定とのことだが、世界に先駆けて日本で発売する予定で進行しているとのこと。ターゲットは「画質の良さを分かっていただける人。ハイアマチュアのコンシューマー」(草尾氏)。当初は今回のデモ機と同じく60V型からスタートする。60V型というサイズは「1mmあたり3画素があることが高画質の規準」という理由に基づいたもので、4Kでは60V型が該当する。

将来的には更なる大型モデルも展開する予定。しかし小型モデルについては「人間の視覚に近づけるというコンセプトにマッチしない」ため、考えていないとのことだ。

また発売にあたっては、従来のテレビとは一線を画した存在であるという考えから、液晶テレビ“AQUOS”とは別ブランドで展開する予定だという。

他社の4Kテレビが2Kから4Kへのアップコンバートや超解像といったAVファンにとっても馴染みのある言葉で説明されるのに対して、「ICC-4Kテレビ」の考え方は独創的でミステリアスな存在と思われる方も多いだろう。しかしその映像は、IFA会場内で発表・デモが行われていたなかでも屈指の高画質を実現している、という評価は、実際にデモを見た面々の間で一致している。60V型という大きさも、現在発表されている4Kテレビのなかでも選びやすいサイズ。今後の展開を期待して待つことにしたい。

(取材・執筆/折原一也)

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