<一条真人のCEATECレポート>CEATECに見るネットワーク環境の近未来

2008年10月06日
今回のCEATEC JAPAN 2008で多くのメーカーの出展内容を見て、さまざまなジャンルでの、近未来のネットワークの方向性が見えてきた。

■NGNの早期普及は困難か

ブロードバンドネットワークは光ファイバーが着実にシェアを伸ばして、もはやマジョリティとなっている。そのため、もはや光ファイバー自体をアピールする展示は多くない。NGN関連を扱うブースもあったが、その数は多くなく、興味を持って眺めている来場者もあまり多くないように感じられた。

欧米と異なり、NGN規格の登場前にすでにブロードバンドネットワークが各家庭に普及してしまった日本では、すぐに機材をリプレースしてNGNに移行するのはコスト的にも引き合わないため、NGNの早期普及が難しいという現状を反映しているのだろう。

ブロードバンドインフラが整った現在の日本では、回線自体よりもそこを流れるコンテンツが問題になるフェーズに移行したと言える。

■無線LAN+HD-PLCハイブリッドスタイルの可能性

家庭内でネットワークを構築する場合、会社と異なり、ネットワーク回線の配線が問題となるために無線LANが人気となっているが、電力線で高速通信をするHD-PLCも高い興味を持たれているようだ。現在ではHD-PLCアダプタも第2世代となり、コンパクトになって導入しやすくなっている。

HD-PLC対応機器が充実し始めている

広い家に住んでいる人などは、無線LANでは速度が出ない可能性があるため、HD-PLCのほうが有利な場合もある。また、パソコン初心者では無線LANのセキュリティ設定が難しいなど、HD-PLCならではのメリットはいろいろある。今後の家庭内ネットワークでは、無線LANとHD-PLCをTPOで使い分けるスタイルが普及する可能性がある。

■モバイルネットワークはWiMAXか?HSDPAか?

モバイルネットワークに関しては、KDDIのブースのUQコミュニケーションズによるモバイルWiMAXの出品があった。WIMAXは一口に言えば長距離通信が可能な無線LAN規格だが、モバイルWiMAXはその高速移動体通信版で、国内では2.5GHz帯が使用される。

WiMAXにも注目が集まる

WiMAXの最新動向

北米などではある程度、普及が進んでいるモバイルWiMAXだが、日本のように人口密度の高い地域では、すでに広く普及しているHSDPA方式が有利とも言われている。2009年2月に試験サービスが、同年夏に本格サービスが開始されれば、その実力が明らかになるだろう。

■AV機器の無線LAN化はDLNA2.0世代で進むか

AV機器は最近、急速にネットワーク化を進めている。日本国内の液晶テレビはそのほとんどがアクトビラに対応し、ネットワークメディア配信レディーとなっている。そして、ビデオレコーダーに関しても従来以上の速度でDLNA対応やBD-Live対応など、ネットワーク対応が進んでいる。

アクトビラ ビデオ・フルに対応したテレビが増えてきた

DLNAやBD-LIVEに対応したソニーの新BDレコーダー

それにも関わらず、無線LANを搭載したレコーダーやテレビが登場してこないのは不思議に思える。これは、現在最高速の無線LAN規格であるIEEE802.11nがいつまでもドラフトのままであることも一因と考えられるが、無線LANセキュリティの設定が一般ユーザーには難しいこともあるのだろう。

無線LANのセキュリティ設定を、ボタン1つで簡単に行う機能を提供しているメーカーがいくつかあるが、結局は無線LANの規格団体であるWiFiが提供するWPSに終結するのがもっとも有力と考えられる。

2009年に発行予定のDLNAガイドライン2.0では、このWPSへの対応が盛り込まれる予定になっており、AV機器の無線LANセキュリティに関してはWPSが標準的になっていく可能性が高い。

また、DLNA2.0は携帯電話などモバイルデバイスとのコンテンツのやりとりや、EPGによるリモート録画予約機能なども盛り込まれる予定であり、これらの機能追加によって、DLNAの普及がより進むことになるだろう。

また、IEEE802.11n規格も2009年に正式発行される見込みとなっている。そのため、AV機器への本格的な無線LAN機能の搭載は2009年以降になると考えられる。

■DLNA対応ロボットがAVコントロールのキーに?

DLNA関連機器では、DLNAガイドライン1.5で追加されたコントローラーデバイス(DMC)が参考出品されていた。

音声認識技術の研究が進んでいるNECでは、家庭用ロボットに音声入力のDMC機能を組み込んだものを参考出品していた。このロボットはテレビのリモコン機能も搭載している。近い将来はテレビ、レコーダーのコントロール、DLNAコントローラによるメディア再生などを、家庭用ロボットに音声で指示してコントロールできるようになるかもしれない。

DLNAに対応したNECのロボット

■短距離高速通信技術が家電の形態を変える

テレビとレコーダーなどを、HDMIケーブルの代わりにワイヤレス接続する「WirelessHD」のデモがパナソニックのブースなどで行われていた。これは60GHz帯を使った通信で、理論値で最大4Gbpsの転送速度を実現する技術だが、転送距離が短く、最大10メートル程度になる。コストアップを考えると、完全にHDMIを置き換える技術ではなく、登場しても、しばらくはハイエンド機器のオプション的存在だろう。

WirelessHDでは理論値で最大4Gbpsの転送速度を実現する

これ以外にドコモブースでは、ディスプレイと本体を分離した「セパレート携帯」が展示されていた。今後は、短距離高速通信技術の進化によって、今まではケーブル接続が常識だったもののワイヤレス化、分割化がますます進んでいくことになるだろう。

ドコモが展示したセパレート携帯

(一条真人)

執筆者プロフィール
デジタルAV関連、コンピュータ関連などをおもに執筆するライター。PC開発を経て、パソコン雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスワン」編集長を経てフリーランスに。All Aboutの「DVD ・HDDレコーダー」ガイドも務める。趣味はジョギング、水泳、自転車、映画鑑賞など。

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