大橋伸太郎が観た「BDP-LX71」− 飛び抜けたC/Pを持つ再生のスペシャリスト

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2008年08月27日
光学式映像ディスクの歴史はパイオニアによって創られた。1981年にガスレーザーを使ったLD-1000を発売、映像ディスク時代が開幕した。DVD実用化の1996年にLDと両方が再生可能なDVL-919を発売。1999年にはやはり世界初のDVDレコーダーDVR-1000を他社に先駆けて発売、21世紀に入りLD、DVDからブルーレイディスクBlu-ray Disc(BD)へ変わると、ドライブ製造の大手である同社は、国内初のBD再生専用機BDL-LX70/80を昨年、満を持して発売した。フォーマットの策定と商品化において、一貫してリーディングメーカーであり続けるパイオニアの姿がここにある。


圧倒的なハイCPを実現するパイオニアのBDプレーヤー「BDP-LX71」
2008年は日本におけるBDの本当の元年。過去のいずれの時期と同様にこの秋、パイオニアは単機種からラインナップへ自社製品を拡大し、映像ディスクの新しい魅力を21世紀に花開かせようとしている。

ただし、BDがLD、DVDと大きく事情を異にしている点が一つある。LD、DVDはプリレコーデッドソフト(セルソフト)の再生専用機(プレーヤー)からスタートしたのに対して、BDは逆である。アナログからデジタルへ、480SDから1080HDへという放送の大きな変化と歩調を合わせて誕生したBDは、録画再生機(レコーダー)主導で市場導入が始まった。歴史上初めて再生専用機は「遅れてやってきた」のである。

2011年アナログ停波を3年後に控え、薄型テレビの販売の活況やDVDレコーダーからの買い替え需要を考えた場合、「(ソフトは)買う文化」の北米市場に対し、「録る文化」の根付いた日本では、一般層へのアピールという点で、色々出来る録画再生機に分があることは否定できない。裏返していえば、再生専用機ならではの魅力が溢れた製品でなければ日本では売れない。

再生専用機にこだわり続けるパイオニアはBDがアーリーアダプター層から一般層へ戦場を移した2008年秋、この難題に答えた。今秋パイオニアは二機種の再生専用機を発売する。上位機「BDP-LX91」は価格約40万円の高級機。もう一つ、BD元年に再生専用機のポジションを築くことを託され、むしろ本命ともいえる中堅価格帯の新製品が「BDP-LX71」である。今回、発表に先駆けて試作段階の本機を試聴することができたので、そのインプレッションをお伝えしよう。

■「再生専用」の利を最大限活かした、まさしくスペシャリスト画質


パイオニア新川崎本社にて担当者に話を伺う筆者(左)
AV機器において例外なく単機能機にはクオリティ上の利がある。わかりやすい話がオーディオのセパレートアンプである。HDDとデジタルチューナーを筐体内に持たないだけでも、デジタルノイズ抑圧や電源部の負担軽減という点で、再生専用機は有利なのである。後からNR回路をいくら足していっても、シンプルで素性のいい機械にはもとから敵わない。BDP-LX71はパイオニア流の筐体強化や高音質回路を積極的に採用して、再生専用機のこうした特長を最大限引き出し「観る」「聴く」ことに関して、高価な録画再生機を上回るBDのスペシャリストを作ることを狙った。

筆者がBDP-LX71を目にするのは今回が初めてでなく、春に試作品を見せていただいている。その時はBDP-LX70/80に比較して、一回り厚く大きくなった筐体に戸惑いを感じたが、今回パイオニア新川崎本社で改めて眼にして印象が変わった。センタートレイレイアウト、剛性感を窺わせるその姿にパイオニアのディスクプレーヤーの本流、ディスク再生のスペシャリストらしい面魂を感じたのだ。今回視聴したのは「完成度70%」の試作機だったが、そこからも開発陣の狙いが十分伝わってきた。

BDP-LX71は、BD-ROMの豊かな映像情報をノイズの干渉を排して鮮度を保ったまま、いかに正確にディスプレイに送り込むかに専心した製品だ。BDP-LX70/80の画質も良好だったが、BDP-LX71はビデオDACをバージョンアップ(12bit/297MHz〜HD)し、素性がさらに磨かれている。

BDP-LX71での新境地がHigh-Definitionノイズリダクションで、コンポーネントフレーム、ブロックノイズ、モスキートノイズリダクションが新たに搭載された。BD-ROMのコーデックとオーサリングは一様でないが、映像の背景、特に高輝度部分のフィルムの粒状ノイズがMPEG圧縮でギラギラした背景ノイズになり、ディスプレイが高解像度化、大画面化するほどそれが目立つことが多い。

この日筆者が持参した『ダーティハリー』(1971年製作の第一作・ワーナーホームビデオ)は、その一例で、冒頭、カリフォルニア(サンフランシスコ市)が舞台である事を観客に印象付けるために青空が大面積で背景に占めるシーンが多い。これがかなり見辛いのである。ディスプレイ側のYNR、MPEG-NRをオンにして抑えるとギラツキが減るのはいいが、ディテールが鈍ってしまう。ノイズが特に目立つシーンを再生して、BDP-LX71の映像回路担当者の方に新しいノイズリダクションで改善できないか訊くと、「モスキートノイズリダクションが一番有効と思います」という答えだったので、これをオンにすると、細部のニュアンスを失わずにノイズのギラツキが穏やかに抑えられた。「映画ディスクの再生についてよく考えられていますね」と訊くと、「新旧各社の映画、アニメ、録画素材まで膨大な数のソフトを見て作り上げましたから」と控え目だが自信に満ちた答えが返る。


ビデオアジャストモードはPDP/LCD/Pioneer PDP/Projector/Professionalの5つのモードを用意する
映像再生上BDP-LX71が画期的なのが、画質設定の驚くほどの多彩さ。筆者自身、各社に提案していた機能をBDP-LX71が初めて搭載した、ビデオアジャストモードがそれだ。PDP、PioneerPDP、LCD、Projectorという風に、出力するディスプレイの形式に合わせた画質モードが用意されているのである。

この中のPioneerPDPはこの秋発売されるパイオニア最後の第9世代パネル搭載プラズマテレビを考慮した画質設定。一方、Professionalモードは、強調等を一切排した作為のない画質になる。今回は、欧米にパイオニアブランドで導入しているLCOS方式プロジェクターとKUROモニターKRP-600Mの両方で視聴したが、形式を超えて均質な画質へコントロールするというより、様々な形式のディスプレイの表現性の中でバランスのいい画を引き出すことに重点があるように感じられた。

画質調整項目に入っていくと、13もの項目がある。詳しくは別記スペック一覧を見て欲しいが、プログレモーションという項目が筆頭にあり、動画寄りから静止画寄りまで9段階の設定が出来る。I/P変換は実はBDP-LX71が最も注力したポイントである。従来のライン監視型に替えて動き適応型I/P変換回路を新たに搭載し、早い動きの映像で被写体の輪郭が乱れる現象を大幅に改善している。この回路はハイビジョンの1080iソースでも有効で、『AVレビュー』2008年1月号の付録についたBDテストディスク「FPD Benchmark」をお持ちの方はご存知だろうが、右から左へ画面をクルマが横切っていく映像を収めたチャプターがこの中にある。ディスプレイの動画解像度をチェックすることが本来の目的だが、この映像でI/P変換の能力を確認できる。BDP-LX71の場合、同時に視聴した他社の録画再生機に比較して、ナンバープレートの数字の輪郭のブレが極端に少ない。フィールドの合わせ込みが正確に行われている証左である。この辺りに、BD再生(DVDも含めて)のスペシャリストたる的確なスタンスが伺われる。

■Wolfson社製DAC搭載で、映像はもちろん音声にもぬかりなし

誕生したばかりのBDP-LX71を熱っぽく語るパイオニアの開発陣の声の中で、ひときわ力の込っていたのが、「再生専用機ならではの高音質」。パソコンと同居しているような録画再生機に比較して、再生専用機は高音質を狙う上で圧倒的に有利である。これを突破口に録画再生機が占有する現状を変えていくかのように、BDP-LX71は高音質を徹底的に重視した設計である。HDオーディオとHDMIの環境がほぼ整った現在、そのパフォーマンスを完全に表現すべく、パイオニアの持つ高音質要素技術をコスト面で許される限り投入した印象だ。HDオーディオ全フォーマットのビットストリーム出力に対応するのはいうまでもない。7.1chアナログ出力を持つが、DTS-HDのデコード出力のみ、後日ファームウェアでアップグレードする。

DACは、ウォルフソンWM8740を8ch分持つ。今年春発売された同社のフラグシップアンプSC-LX90はこれとほぼ同等の8741(DSDデコードに対応)を10ch搭載していたことからも、本機の音質への取り組みの「本気度」がわかる。

デジタル音声伝送の音質を大きく左右するジッターの抑圧にも意欲的で、CDデジタル音声のHDMI伝送でデータメモリーを使い、ジッターを最小にするPQLS、専用ICを挿入して回路に起因するジッターの内部要因を改善しクロックの波形整形を行い、常に一定の波形で出力するジッターリダクション回路の搭載、さらに同軸デジタル出力回路は、信号の波形鈍りを防ぎ原信号に忠実な急峻な波形を維持するようフィルター特性を改善している(PQLSは対応アンプが必要でこの秋発表される)。これら電気系の改善を生かすべく、機構面では新たにメカを中心に据えたセンターレイアウトに変更、振動への対策や線材の引き回しについても白紙から考えられ、コンデンサーからネジに至るまで吟味し直されている。


Auido/Videoの個別ビットレート表示、コーデック/音声も種別に表示される
「BDP-LX70/80も録画再生機まで含めた中で、音質には定評がありましたね」とサウンドの担当者に訊くと、「前作の時は、HDMIVer.1.3の環境がまだ整っていないために、やり残したことが結構ありましたが、今回は徹底的にデジタル音声に取り組みました。価格は下がっていますが、音質はBDP-LX70/80を超えていると思います」ときっぱりと言い切った。

この日視聴したディスクは、ドルビーTrueHDの『レジェンド・オブ・ジャズ』とリニアPCM 96kHz/24bit(2ch/5.0ch)の『悲愴』(小澤征爾、ベルリンフィル)だった。HDMIの音質に感じる不満は、録音定位の曖昧さ、音場の立体感の乏しさ、奏者(歌手)の実在感の薄さ、音色の曇りである。これらに少なからずジッターの存在が絡んでいる。BDP-LX71が再生する『悲愴』を聴くと、音域と波形を異にしたオケの多彩な楽器セクションがベタッと平板にならず整然と揃って、原音に近い立体感のある音場が現れてくる。HDMIに覚えた最大の不満が大きく改善されている。今回は新搭載のPQLSの効果は聴けなかったが、「まだまだ、完成に程遠い」というBDP-LX71がこれから発売までにどこまで音質を磨き込むかが楽しみだ。

■再生可能メディアの拡大や起動時間短縮で使い勝手も向上

LX70/80ではBD-RE/R録画ディスクの再生は「保証外」だったが、今回は録画済メディアはDVD-RAM以外全てOK。また、再生専用機として、従来誰もが不満だった再生の立ち上がり時間を大きく改善したことはトピックだ。BDP-LX71はディスク装填状態から出画まで10秒、ディスクなしからは30秒で出画する。BDP-LX70は後者の場合1分掛かった。

パイオニアはBDドライブの生産最大手で当然自社メカを搭載する。「BDのユーザーが一般層に広がる現状を考えて、今回はドライブの開発部隊と一緒に、誰でも快適に使えることに取り組みました」と、メカニズム設計担当者は胸を張る。パイオニアの最近の製品に一貫するシンプル&プレーンな「レスエレメントデザイン」が取り入れられ、本体スイッチ類は静電スイッチに代え、前面パネルをフラット化した。


静電スイッチ式を採用しフラットデザインを徹底
また、GUIは今秋からアイテム間(PDP、アンプ)のデザインを統一するが、その第一弾がBDP-LX71である。同様にリモコンも中央十字キーとその周囲のデザインをプラズマテレビと統一。「ツール」ボタンでよく使う機能を呼び出す設計も新鮮だ。「解像度切替え」は再生をストップしないで専用ボタンでできる。画面表示のコーデック表示は画と音のビットレートを別個に表示する専門誌筆者思い(?)の機能。なお、BD-ROMの新機能である、BONUS VIEW(PROFILE1.1、PinP機能等)に対応していることもトピック。これは本編再生中にPinP小画面でコメンタリーや予告編を表示する機能である。


リモコンもプラズマモニター「KRP-600M」とほぼ共通の操作性のものに刷新

中央に十字キーを設けている
さて、BDP-LX71の実売価格をここまで書き忘れていた。価格は118,000円(税込)。BDP-LX70/80から進歩を遂げた内容で、半分程度にプライスダウン。飛び抜けたコストパフォーマンスである。しかし、パイオニアは「ベストパフォーマンス・イン・クラス」といたって謙虚だ。BD-ROMの市場伸長次第で、現在録画再生機のみを販売する他社がいずれ再生専用機を国内に導入するだろうし、HDD搭載の録画再生機も各社がラインナップを拡充して価格が下がっている。

BDプレーヤーの上位機・BDP-LX91の価格は43万円でBDP-LX71との間に大きな開きがあり、このギャップをパイオニアの録画再生機が埋めていくという推測も成り立つ。つまり、ライバルは少なくないのである。その上で筆者はBDP-LX71について、現時点での「ベストパフォーマー・オブ・BD-ROM」と評したい。その理由は、冒頭に書いたように映像ディスクの開拓者パイオニアらしい「(ソフトを)観る文化、聴く文化」への洞察とノウハウを盛り込んだ製品だからである。他社は一朝一夕で出来ない。大画面でゆっくりハイビジョン映像に浸ろうという時に、テレビ放送の受信機能やHDD起動、電子番組表など多機能はかえって邪魔なのである。中堅価格帯の製品であっても、BDP-LX71の隅々からは「観て、聴いて、感じること」への細心な配慮とこだわりが見て取れる。力作「BDP-LX71」が市場でどれだけ喝采を持って受け入れられるかはBDの試金石、楽しみである。

(大橋伸太郎)


筆者プロフィール
大橋伸太郎
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数2006年に評論家に転身。趣味はウィーン、ミラノなど海外都市訪問をふくむコンサート鑑賞、アスレチックジム、ボルドーワイン。

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