<NHK技研公開2008>立体テレビなど最新ディスプレイ技術や高度コンテンツ制作環境を展示

2008年05月20日
NHK放送技術研究所の公開展示「技研公開」が今年も開催される。一般公開は5月22日から25日まで。本項ではディスプレイ技術やコンテンツ制作環境に関連する展示内容をご紹介しよう。

■インテグラル立体テレビ

NHK技研が開発するインテグラル立体テレビは、複数の微小レンズを並べた特殊なレンズアイを撮影・表示の両側に配置し、立体映像を再現する3Dディスプレイ方式。スーパーハイビジョンの超高精細映像技術を応用したアプリケーションとして、現在研究が進められている。


インテグラル立体テレビ

スーパーハイビジョンのコンテンツを再生するデモを公開
本方式はメガネなしでの視聴に対応し、観察者が水平・垂直に動いてもその位置に応じた自然な立体映像が見られるという特徴を持つ。今回はスーパーハイビジョンのカメラとディスプレイの間に奥行き制御装置を設け、計算処理を行うことで、任意の奥行き位置に立体映像を表示するデモを行っている。3D映像の上下左右視野域は24.5度を実現している。

■高精細プラズマディスプレイ

NHK技研ではスーパーハイビジョン映像を家庭で楽しむための超高精細PDPの開発にも取り組んでいる。今回は低電圧化を可能にする電極保護膜材料として、酸化ストロンチウムカルシウム(SrCaO)を用いた0.3mmの高精細な画素ピッチを持つ7インチのPDP試作機が展示された。


7インチ高精細プラズマディスプレイの試作機
今回の試作機ではPDPの組み立てプロセスを改良し、SrCaO電極保護膜の特性を劣化させることなく、世界最小レベルとなる0.3mm画素ピッチの超高精細PDPに搭載し、動画の表示を可能にしている。またSrCaO電極保護膜を採用することにより、従来の材料に比べて約30%の低電圧駆動や約30%の発光効率向上もあわせて実現されている。今回の展示では7インチの試作機を公開したが、展示説明員によれば今後対角100インチクラスの大型PDPを実現すべく技術開発を進めているという。

電波テレビカメラ

普通のテレビカメラでは撮影不可能な、遮蔽物で隠れた被写体を撮影するための特殊な電波カメラを展示。今回は擬似的に発生させた霧の向こうにある被写体を撮影する実験が公開されている。


電波テレビカメラの試作機

霧の向こうにある被写体を撮影するデモを公開
試作機には被写体に向けて、霧や煙を透過しやすい60GHz帯のミリ波電波を放射し、その反射波を受信アンテナで受信することにより被写体を撮影するという技術を採用している。受信アンテナのビーム方向を上下左右に走査することで、2次元の画像を得ることができる。周波数走査アンテナの走査特性を改善し、送受信機の周波数切換を高速化することで、電子走査の性能を向上させ、フレーム周期を昨年出展された試作機よりも約4倍速くすることに成功したという。NHK技研では、このような電波テレビカメラについて、映像の解像度改善やノイズの除去を引き続き研究し、被災地における映像撮影用のカメラとしての性能向上を図っていく考えだ。

高度スタジオ番組制作技術


近赤外線を利用した高精度リアルタイム映像合成。話者の背面に「再帰性反射材」を利用したスクリーンを配置

カメラに搭載したLEDで照明し、スクリーンから反射される近赤外光から被写体のシルエットを導き出す
スタジオ内の出演者やCGの動きに対応し、カメラどうしが連携して撮影を行う「協調撮影ロボット」のデモを公開。実写とCGの映像合成時には、特別な色を配置した従来のクロマキー合成のセットを用いることなく精度の高い合成を実現する「高精度リアルタイム映像合成」も紹介されている。カメラの位置、方向やレンズの歪みなどのパラメーターを高精度に推定し、CG描画時に反映させることで、撮影画像の全域でCGの被写体を正確な位置に合成。新規に開発された赤外線を用いる合成手法により、従来のクロマキー合成時の課題であった被写体の色の制限を解消するとともに、暗い照明条件下でも映像合成を可能にしている。

中継局用高性能マルチパス等化装置

地上デジタル放送をより広範な地域で正しく受信するための中継局向けの技術展示も行われている。通常地上デジタル放送では、伝送方式にマルチパス(ゴースト)に強いOFDM(直交周波数分割多重)を採用しているが、受信地域が電波の伝搬路にマルチパス妨害波が存在する環境にある場合は、電波の受信障害を引き起こす場合がある。この対策として、NHK技研ではマルチパス妨害による歪みを等化(補正)し、地上デジタル放送を正しく受信できるようにする技術の研究を進めており、今回は高性能なマルチパス等化装置を試作展示している。


高性能マルチパス等化装置
今回展示された試作機は、今後中継局用の補償器として2008年度内の実用化を目指して開発が進められる。また本技術を家庭用のテレビにも応用し、より高精細に地上デジタル放送を受信できるシステムも検証されている。

(Phile-web編集部)

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