高橋敦が徹底テスト! 「iPod nano」と「ワンセグウォークマン」の実力を比較する

2007年10月10日
iPodシリーズがラインナップを一新、国内市場でそれを追いかけるウォークマンシリーズにも新ラインナップが追加された。

今回は、iPodシリーズの中で音楽再生機として最もバランスがよいと思われるiPod nanoと、ウォークマンシリーズの最新機NW-A910シリーズをピックアップ。並べて比較してみることにした(iPod nanoは8GBモデル、NW-A910はソニースタイル限定販売「NW-A919/BI」容量16GBを試用)。

●まずは外観や携帯性をチェック

両機を並べてまず注目させられたのは、液晶を縦に配置するか横に配置するかの判断が分かれていること。

iPod nanoは旧モデルからスタイルを大胆に変更して、液晶をワイド(横320×縦240)に使うようになった。

一方、NW-A919は縦(横240×縦320)スタイル。横表示でのビデオ/ワンセグ視聴もできるが、それでもメニュー表示は縦のままであることなどからすると、基本は縦だろう。

液晶を縦に使うか横に使うかは操作性やビデオ再生の快適さに大きく関わるので、この違いは興味深い。

携帯性はiPod nanoがリード。何しろ薄い。ポケットに入れておく気になれるのはiPod nanoだ。しかしNW-A919は「ワンセグチューナーやアンテナを内蔵しながらも」という意味では「小さい!」という印象になる。

iPod nanoの背面は鏡面仕上げに戻った。ソニスタ限定モデルは全面的にクロームメッキ。なおカラーバリエーションはiPod nanoの方が豊富

カタログスペックは、iPod nano:厚さ6.5mm/重さ42.9g、NW-A919:厚さ12.3mm/重さ74g

●インターフェースを一新したiPod nano

iPod nanoはGUIを一新。新インターフェースの特徴は、高い評価を得ている基本的な操作系はそのまま継承しつつ、要所要所でアートワークを表示するなどによって、視認性や演出性を高めたこと。従来機+αという印象である。

画面を左右分割し、左に従来通りのメニュー、右にアートワークでの演出というのが基本スタイル

「Cover Flow」表示にも対応

NW-A919のインターフェースはトップメニューがアイコン、それ以降がリスト形式となっており、携帯電話のそれに近い印象だ。誰にとってもなじみ深い構造であり、とまどいなく使えるだろう。

携帯電話でもおなじみ、DAPとしても一般的なインターフェース

使いにくさは感じない

しかし、iPodの「スクロールホイール」は秀逸。カーソルキーだと「下・下・左」のように押してアイコンを選ぶ場面でも、ホイールなら「クルリ」で済む。ライブラリのブラウズなど長いスクロールが必要な場面では、さらに圧倒的に有利だ。

液晶を縦に配置するか横に配置するかは、本体全体のスタイル、持ち心地にも影響する。一般的には縦型の方が持ちやすいだろう。実際、NW-A919は縦で持つ限り持ちやすく使いやすい。

しかし、ずんぐりとかわいらしく生まれ変わったiPod nanoも、実際に手にすると意外にも持ちやすく操作しにくさはない。Appleのデザイン力はやはり侮れない。

側面のボリュームボタンも、左手で持ったときには人差し指、右手では親指が届き、自然に扱える

前世代までのスリムなnanoとは異なるが、手にすっぽり収まる心地よさは相変わらずだ

●ロスレス音源を中心に使うなら新ウォークマン

全体的な使い勝手(その根本にあるインターフェース哲学)というのは好みや慣れの面が大きいので、そこは言及しないでおく。

あえてひとつ挙げておくと、iPodとiTunesの操作感の統一性は見事。iTunesが先にあり「iTunes to go(持ち歩けるiTunes)」としてiPodが生み出されたという経緯もあり、画面サイズが全く異なるにも関わらず、両者の操作感覚に違和感がない。

iTunesはジャンル→アーティスト→アルバムと絞り込んでいくブラウズと検索が基本。プレイリスト管理機能の強力さも見逃せない

機能面で気になったポイントをいくつか挙げておこう。まずは両者の音楽ダウンロード販売「ストア」の扱い。

iTunesと「iTunes Store」は完全に一体化されている。iTSのカタログをハードディスク上のライブラリと同じように「ブラウズ」することができ、検索性が高い。

SonicStageは「Mora」を単にウェブページのように表示するので、ライブラリと同じようにはブラウズできない。こちらが普通なのだが、iTunesと比べると残念に思える。

TunesStoreのブラウズ。上に掲載したiTunesのライブラリブラウズ状態の画面と比べてもほぼ変わらない

Mora。ウェブページとして表示され、ジャンル選択などはページ上のメニューとして実装されている

NW-A919とSonicStageのコンビネーションが圧倒的に優れている点もひとつある。「ATRAC Advanced Lossless」という圧縮形式の存在だ。

ATRAC Advanced Losslessはロスレスデータの他にATRAC3/ATRAC3plusの可逆圧縮データも内包するのが特徴。「PCではロスレス再生、ウォークマンには可逆圧縮データのみを転送」ということが可能なのだ。PC側ではCD品質でライブラリを構築しつつ、携帯プレーヤーには大量の曲を転送できる。

ATRAC Advanced Losslessはウォークマンに転送する部分(非可逆圧縮部分)のビットレートも細かく選択できる

ロスレスというだけならiPod+iTunesにも「Apple Lossless」があるが、ATRAC Advanced Losslesのような器用さはない。ロスレスを使えばiPod nanoに転送できる曲数はグッと減ってしまう。

もうひとつ、アーティスト名などの日本語の「読み」は、iTunesでは手入力するしかないが、SonicStageはローマ字変換辞書による自動付加が可能。日本生まれの強みだ。

●高解像度のAVC映像の転送・再生が可能なiPod nano


手の平にすっぽり収まる機器でこれほど高精細なビデオ再生を楽しめるという驚きはぜひ体験してみてほしい
ビデオファイルへの対応は、意外かもしれないがiPodの方が優れていると思える。

MPEG-4/AVCへの対応は両者で共通だが、最大解像度320×240までとなるウォークマンAシリーズに対し、iPod nanoは最大640×480に対応(公式にはアナウンスされていないが、720×400のファイルも転送・再生できた)。

搭載液晶が320×240なのだから、それを超える解像度のファイルをダウンスケーリング再生するのは無意味との考えもあるだろう。しかしひとつのビデオファイルをパソコンでは高解像度で再生しつつ、携帯プレーヤーでも利用できるメリットは大きい。同一内容のファイルを2種類持つのは非効率的だ。

また、前述のように液晶をワイドに使うのが基本スタイルである点も、ビデオ再生のときには特に有利。液晶サイズは小さめだが、そのぶん精緻な描写との印象も受ける。画面の明るさも十分以上で、標準設定である輝度50%から上げる必要は感じない。

●高機能な新ウォークマンのワンセグ機能

しかし、NW-A919には「ワンセグ搭載」という強みがある。その機能は他のワンセグ機器(ワンセグケータイなど)と比べても、非常に充実していると言えるレベルにある。

録画予約は、曜日指定の繰り返し録画、さらに上書き設定も可能。決まった番組のスケジュール録画に力を発揮してくれそうだ。ニュースは上書きで最新だけを残し、語学番組は上書きせずに録り貯めるといったことができる。録画番組の早見再生(1.25/1.5倍速)の声も聞き取りやすく、実用的だ。

ワンセグは日本ローカル規格なのでiPodシリーズに搭載される可能性は皆無と思われ、この点は今後ともウォークマンシリーズの強みであり続けるだろう。

背面のスリットに付属チップか硬貨(500円玉がジャスト)を挿し込むと横方向で適度に角度を付けて置くこともできる

字幕情報を一覧表示して字幕を選択するとその場面から再生が開始される「字幕ジャンプ」機能も便利だ

●メリハリの利いた音の新ウォークマン、自然な音調のiPod nano


iPodのイヤホンはシリーズ共通の「例の白いヤツ」。NW-A919のイヤホンは同社EXモニターシリーズをベースにノイズキャンセルを搭載している
音質も比較してみた。iPod nanoにはApple Lossless、NW-A919にはWAVと、共にロスレスクオリティで同じ曲を転送し、音質を比較。まずは両者とも付属イヤホンで試聴する。両者ともイコライザーオフ、NW-A919の高域補完もオフとした。

聴いたのはJacintha「Lush Life」(ジャズ女性ボーカル)とDon Friedman VIP Trio「Timeless」(ジャズピアノトリオ)。iPod nanoは高域も低域も伸びないが、落ち方が自然でまとまりは失っていない。ボーカルは軽やかにさらりと歌う。音場全体の印象は、軽快で開放的。

NW-A919の方はシンバルの芯が強く、メリハリの利いた演奏に聴こえる。またバスドラムやウッドベースはこちらの方が重い。音場全体は密度感の強い印象だ。

Dream Theater「Octavarium」(プログレッシブメタル)を聴くと、ここではiPod nanoの軽快さは明らかに弱みとなる。重心が高く、メタルの迫力が薄れる。一方NW-A919は、密度感のある音場の中でメリハリの付け方で解像感や荒々しさを増し、ソースとのマッチングがよい。

イヤホンをソニー「MDR-EX90LP」に統一してみると、音質の差は当然ながら少なくなった。「ナチュラルで軽快なiPod nano」、「メリハリが利いて重厚なNW-A919」という印象は残るが、音調への支配力は本体よりイヤホンが大きい。音はイヤホン次第と考えてよいだろう。


外側に向いてぽつぽつと開いているのがノイズキャンセル用マイクの集音部と思われる
NW-A919のノイズキャンセル機能も、大きな意味では「音質」に関わる点だ。電車内での走行音や空調音などは、明らかに「効いてる」と感じられるレベルで抑え込んでくれる。ボリュームを上げずに済むので、結果的に音漏れ防止になるのも好印象だ。

●両機のお買い得度を独断で判定!

iPod nanoは4GB/8GBモデルが17,800円/23,800円。一方のNW-A910シリーズは、4GB/8GB/16GBモデルを用意し、店頭での予想売価は30,000円/35,000円/45,000円。

iPod nanoの方が全体的に手頃だが、これはワンセグ非搭載というだけではなく、販売数の多さを見越した部品の大量仕入れなどによるコストダウンなどもあってのことだろう。ビデオ再生が可能になったことに加えて、画面の大型化・高解像度化で写真を見る楽しみも増している。それでこの価格を実現したのは、本当にお買い得と言える。

NW-A910シリーズについてはやはり、「”この”ワンセグ機能が必要かどうか?」が全てと言える。ワンセグ自体が不要ならこのシリーズである必要はない。「ワンセグは見たい。だけど暇つぶしにちょっと見られればそれでいい」というなら、それこそワンセグケータイ+iPod nanoでも荷物の数は変わらない。

だが、ワンセグケータイ以上の性能がほしいなら、NW-A910シリーズを選ぶ価値は十分にある。細かな機能の面でもそうだが、何より16GBという高容量モデルが用意されているのが大きい。自分の利用スタイルと合致しさえすれば、こちらも購入して損はない製品と言える。

(高橋敦)

高橋敦 プロフィール
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。

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