パナソニックハリウッド研究所 訪問記<後編> − 常識を覆した“スピンコート法”によるBD量産

2007年02月02日

トーランス市にある同社工場施設の外観
パナソニック・ハリウッド研究所訪問記の最終回は、ハリウッドから車で1時間ほどの、カリフォルニア州トーランス市にある同社工場敷地内に設置された、Blu-ray2層ディスク製造のパイロットラインをご紹介しよう。

●ハリウッド間近にある2層BD-ROMライン

この施設は10年前からPDSC((パナソニック・ディスク・マニファクチャリング・カンパニー)として使用していた施設で、アメリカで最初にDVDの2層ROMディスクを作った工場でもある。現在はその一角を使って2004年4月から始まった「BD-ROM Replication Task Force」(以下、BDRT)の拠点として使用され、2005年10月からは2層BD-ROMのパイロットラインが設置されている。

「BDRT」の設置目的は主に2つある。一つはブルーレイのプロモーションと立ち上げ、そしてスピンコート法での量産性を実証することでスタジオ、デュプリケーターの懸念を払拭することだ。

BD-ROMの製造法にはシート貼り合わせ法とスピンコート法の2種類がある。スピンコートは当初実現性が疑問視されていた

BD-ROMの詳しい製造工程は図に譲るが、BD-ROM登場当初提案されていたコスト高のシート貼合法に対して、低コストな製造が可能なスピンコート法は、ハリウッドのスタジオから実現性が疑問視されてきた。これに対して松下電器は、センターキャップを使うことで一定の厚みを維持する技術や、UV露光などの技術を組み合わせることで、スピンコート法による1層/2層ディスク量産を実証した。

パナソニックの2層BDディスク製造方法。すべてをスピンコード法で形成し、コストを抑える事に成功

信号層までの厚みも基準値より大幅に抑えられており、品質面での問題はない

「最初の頃は、実際にディスクから取ったデータを見せても映画会社が信用してくれなかった。100枚の平均だと伝えても信用しないので、映画会社に100枚連続データを見せて証明した」(BDRTディレクターの阿部伸也氏)というエピソードもあったほどで、ここでもスタジオに近い場所に立地していることが活きている。

BDRTディレクターの阿部伸也氏

●BD-ROMのプレスは7割の歩詰まりを達成

BDRTの工場内には、実際に商業タイトルのプレスも可能な2層対応のBD-ROMパイロットラインが設置されている。これはオリジン電気との協力によって作られたラインで、映画スタジオ関係者への技術アピールという目的はもちろん、BD-ROMの立ち上げを支援するため、一部商業タイトルのプレスも行われている。

残念ながら試作ラインの撮影をすることはできなかったが、「クリーンユニットにより、クラス100程度のホコリ対策を行っている」という製造ラインでは、実際にスピンコートや2層ディスクの貼り合わせといった工程が全自動で進み、最後にチェックが行われるまでの工程を見ることができた。このパイロットラインは1日1万枚ほどの生産キャパシティを持ち、現在では7割程度の歩詰まりを達成している。なお、小型化された商業向けの生産ラインは既に2台出荷され、BD-ROMのプレス現場での運用が始まっている。

このように、大きな生産数が求められるROMディスクの製造ラインが安定して動作する様子をハリウッドのスタジオ関係者にアピールできたことが、当初は製造の難易度やコスト面から疑問を抱いていた映画スタジオ関係者の支持を得ることに繋がったのだという。

このほかにも、BDRTではBD-ROMのオーサリングを行うポストプロダクションとディスク生産を行うデュプリケーターの間のデータ受け渡しについても、他のベンダーと共同で標準化するための取り組みを行っており、Blu-ray Discの規格全体の普及に向けた尽力がなされている。

●ハード・ソフトの両面から高画質に取り組むパナソニック

3回に渡ってお届けしたパナソニックの北米拠点、PHL訪問記は以上となる。パナソニックは国内ではプラズマテレビ、DVD/BDレコーダーといったハードウェアメーカーというイメージが強いが、ハリウッドの映画会社と10年以上前から緊密に連携し合い、真摯に映画の忠実再現を追求するなどソフトウェアの高画質化にも貢献している。これらハード・ソフトの枠組みを超えた取り組みを長期的な視野を持って行ってきたことが、今日のパナソニック躍進に繋がっているのである。

折原一也

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