「オーディオ下期売上の2割をハイレゾ製品で狙う」

ソニー「Hi-Res AUDIO」発表会詳報 − ハイレゾ製品大量投入の意図、配信楽曲の今後など説明

2013/09/26 ファイル・ウェブ編集部
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別項でお伝えしている通り、ソニーはHDDオーディオプレーヤー「HAP-Z1ES」などハイレゾ音源対応製品群を発表。発表会も開催し、昨日発表したウォークマンも含め、ハイレゾ対応製品に対する同社の考え方などを語った。



なお、同社ではハイレゾ対応製品群の発売に伴い、「Hi-Res AUDIO」ロゴを設定。社内規定を設け、ハイレゾ音源が持つ高いクオリティーを、音響設計などハードウェアの性能面でも十分に再現できると判断した製品にのみロゴを付与していく。

「Hi-Res AUDIO」ロゴを設定

「HAP-Z1ES」ではフロント右上にロゴを配置

ソニー 業務執行役員SVP ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 副本部長の高木一郎氏は、このタイミングでハイレゾ製品群を一気に発表したことについて、CDを超える音質で音楽を聴きたいというニーズが高まっているという調査結果や、インターネットの広帯域化、大容量HDD/SSDの普及などが進んだことなどを挙げながら「ごく一般の人でもハイレゾを楽しめる環境になった」とコメント。「今、ワンランク上の環境を提供できる環境が整ったと見て、今回の製品を投入した」と語る。

ソニー 高木氏

ハイレゾ製品を投入した理由は主に4点

また、ウォークマンZX1やF880シリーズ、ヘッドホンなど8カテゴリー18機種でハイレゾ対応製品を投入したことに言及。ウォークマンに搭載した、ハイレゾ未満の楽曲を192kHz/24bitへのアップサンプリングとビット拡張を行う「DSEE HX」、新たなフルデジタルアンプ「S-Master HX」、広指向性によって広いリスニングエリアで高音域の再生を可能にする「WDスーパートゥイーター」の3点が他社との差異化技術とアピールした。

DSEE HXの特性グラフ

各地域にあわせた製品展開を行ってきたことで各地で金額シェアナンバーワンを獲得していることも紹介

ソニーマーケティング執行役員の粂川滋氏は、ソニーだけでなく業界全体で1万円以上の高付加価値ヘッドホンの構成比が増えていること、USB-DACアンプ業界も前年比200%を超える勢いで伸びていること、「ハイレゾ」という言葉の意味を知っている人が増えていることなどを紹介しながら『「いい音」ニーズ』が高まっているとコメント。

ソニーマーケティング 粂川氏


ハイレゾの認知度も上昇

ヘッドホンは高付加価値モデルのプレゼンスが業界全体として上がっている

この、いい音ニーズに応えるために新製品群を投入するとし、「こうしたハイレゾ商品群のオーディオカテゴリー下期での販売構成比20%を目指したい」と意気込みを語った。なお、来年以降については「早期に30%を超えていくことを狙っている」(高木氏)という。

ハイレゾ製品群で国内のオーディオカテゴリー売上構成比20%を目指す

また、「HAP-Z1ES」や「HAP-S1」ではパソコンで音源を新たに購入した場合、自動で製品内蔵HDDにコンテンツが転送されることを紹介し、「音質に加えてもうひとつの特徴が、簡単・快適であることだ」と述べた。

「PCオーディオが盛り上がっているが、中高年の方々からは『自分にはハードルが高い』という声もいただいている」と言葉を続け、「自動転送によって、従来のオーディオコンポと同じ感覚で楽しめる。パソコンが苦手な方にもハイレゾ音源を存分に楽しんでいただけると思う」と、新製品の簡単さを改めてアピール。「映像は4Kという新しい世界が立ち上がりつつあるが、音楽でもハイレゾという新しい世界をつくっていきたい」と述べた。

世界規模でのシェアを紹介した高木氏に続き粂川氏は国内シェアを紹介。高付加価値モデルの推進によって各カテゴリーでトップクラスのシェアを獲得できていることも紹介した

ハイレゾ音源配信開始を発表した「mora」を運営するレーベルゲート 代表取締役執行役員社長の佐藤亘宏氏は「ダウンロードサービスは単に届ければいいのではなく、快適さが重要。ハイレゾ音源は扱いが難しかったが、今回の新製品の登場で、幅広いお客様に訴求して良い環境が整ったと考えている」とコメントした。

レーベルゲート 佐藤氏

「今まで慣れ親しんでいるサイトで従来と同じ操作感でハイレゾを購入でき、ウォークマンへは転送の手間もない。理解しきれない状態でも幅広いファンがハイレゾ音源を利用できる」と、同サービスがハイレゾ対応したことのメリットをアピールする。

なお、10月17日のサービスイン時は約600タイトルからのスタートとなる予定だが、「レコード会社10数社に参加してもらう予定。もっと多くの会社と話をしている最中だ」とも語り、タイトル拡充への取り組みを続けていることを説明。「レッド・ツェッペリン、マイケル・ジャクソン、ビリー・ジョエル、上原ひろみなど、言い切れないほどの名盤が登場する予定だ」と、作品ラインナップにも自信を見せた。

moraへハイレゾ音源を提供する各レーベルの幹部も駆け付けた

そしてハイレゾ音源の魅力については、発表会に駆け付けた各レーベルの社長もコメントした。

ワーナーミュージック・ジャパン 代表取締役会長 兼CEOの石坂敬一氏は「ブリティッシュロックの神髄をハイレゾで聴いていただきたい。ワーナーでは400作品を、そして傘下のパーロフォン、EMIで600の音源をハイレゾで用意した」と述べた。

ユニバーサルミュージック CEO兼社長の小池一彦氏は「世界はデジタル化が進んでいる。日本はいまだに80%がCDなどのフィジカル、20%がデジタルだが、これは世界的にみて特殊。昨年はユニバーサル全体で、デジタルがフィジカルを上回った」と、現在の音楽ソフト市場を説明。

ハイレゾについては、「ハイレゾのいい音を聴かせてくれるシステムをソニーが揃えてくれた」と評価。「我々は高付加価値の音源配信に全面協力したい。個人的にもまだまだレパートリーを見ていると、オスカー・ピーターソンの『We get request』がないのかなど、『これはやったほうがいいのでは』というものがある。あれを出せ、これを出せと私が主導し、リクエストを出していきたい」とした。

ソニー・ミュージックエンタテインメントの盛田昌夫会長は「我々の時代はアナログの音をドキドキしながら聴いていた。まさにハイレゾは、あのときの音をもう一回聴かせてくれる。その世代の方々にもう一回感動をお届けしたい。また、今は若い人達にもいい音で聴きたいという方が増えている。いきものがかりやスキャンダルなど(若い世代に向けた)邦楽ラインナップも提供していく」と述べた。

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