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PR最先端の仕様を取り込み「ティアックの音」を革新し続ける

ティアック“Reference”シリーズ、10年を超えて。開発・企画担当者に訊く音作りへのこだわり

2022/07/04 構成:ファイルウェブオーディオ編集部・筑井真奈
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ティアックのロングセラー“Reference”シリーズはいかに誕生したのか?



ーー ティアックのReferenceシリーズは、2022年で11年目を迎えて、700番シリーズというトップラインも登場してきました。そういった背景も踏まえまして、今回は改めてティアックの製品開発を担当されているお二人に、ティアックってどういうブランドなの? というお話をお伺いできればと思っております。まずはお二人の現在のポジションについて教えていただけますか?

ティアック/エソテリックの試聴室にて開発・企画チームにインタビュー

村田 開発部長をやってます村田です。所属としてはエソテリック株式会社になるのですが、ティアックブランド全般の製品開発を行っています。

吉氏 私は開発企画本部というところで、製品企画を担当しております。Referenceシリーズの製品仕様や回路設計、お客さんへの訴求ポイントを考えたり、あとターンテーブルの開発にも携わっています。

ーーティアックのラインナップって本当に多岐に渡っていて、いわゆる300番台、500番台、700番台を揃えるReferenceシリーズ、これがティアックの顔となるシリーズですね。それにエントリー価格帯のアナログプレーヤーのラインナップ、それからあと一体型コンポみたいなものもありますね。それぞれのジャンルごとに開発担当者がいるのか、あるいは皆さんで色々意見を出し合いながら作っている感じなのか、開発現場はどういう雰囲気なのでしょう?

吉田 ジャンルごとの担当がいる、というよりは、基本皆で関わっている感じですね。

エソテリック(株)開発・企画本部の吉田穣さん

ーーまずは読者の皆様もやはりReferenceシリーズに一番興味があると思うので、そこから教えてもらいましょうか。

吉田 ティアックのReferenceシリーズがスタートしたのは2011年のUSB-DAC「UD-H01」とプリメインアンプ「A-H01」からです。ちょうど私が入社したのもReferenceシリーズが立ち上がろうとしていた頃で、すごいな、かっこいいなと、新入社員ながら誇らしい気持ちでいました。

「Referenceシリーズ」の端緒となったUSB-DAC「UD-H01」(上)とUSB-DAC内蔵プリメインアンプ「A-H01」(下)。「UD-H01」はバーブラウン製のDACチップを搭載し192kHz/32bitまでの再生に対応。「A-H01」はICEpowerのクラスDアンプを搭載、USBのデジタル入力も搭載するなど、PCオーディオの可能性を押し広げたモデル

ーーまさにPCオーディオの黎明期、PCを活用してハイスペック音源を再生しようという流れが盛り上がってきていたタイミングで、最先端のスペックを盛り込んで、この市場の流れを作ってきたように思います。

吉田 そのあと2012年にCDプレーヤー「PD-501HR」、ヘッドホンアンプ「HA-501」、USB-DAC「UD-501」、プリメインアンプの「AI-501DA」と、いまに続く500番シリーズが出揃ってきましたね。その1年後に、AI-501DAからDAC部を抜き、バランス入力に対応した「AX-501」が出て一つのシリーズとして完成しました。UD-501とAX-501があれば、このサイズでフルバランス構成のシステムを構築できるというのは、自社の製品ながら、すごいシリーズが出てきたなと思っていました。

2012年のIFAで発表された「Reference 501シリーズ」。A4サイズというコンパクトボディに、業務機のフレーバーと最先端のスペック、そしてティアックの音作りのエッセンスが込められた大ヒットシリーズ。現在まで続くReferenceシリーズの骨格がすでに完成されている

景井(ティアック・マーケティング担当) ちなみにこのTASCAMの「HS-P82」が501シリーズのデザインモチーフになったものです。

501シリーズのデザインモチーフとなったTASCAMのポータブルマルチトラックレコーダー「HS-P82」。両サイドの取手や堅牢かつ硬派なイメージは501に引き継がれている

ーーおお、確かにこれは501の雰囲気を感じさせますね。業務用機器のフレイバーもありつつ、コンシューマー向けの使いやすさと最先端のスペック、というのがとてもユーザーの心を掴んだように思います。

吉田 そうですね、Referenceシリーズは当初からカッティングエッジな技術をどんどん盛り込んでいこう、というコンセプトだったように思います。

ーーティアックという会社は、音楽制作や業務用機器でおなじみのTASCAMブランドと、世界に誇るジャパニーズ・ハイエンドのエソテリック、これらがひとつのカンパニーの中にあって、さまざまな角度から音や音楽を追求していることに、他にはない独自性がありますよね。

村田 TASCAMは音楽制作現場に必要な機器を作っていて、ティアックは音楽は聴くための機器を提供する。そしてエソテリックブランドではスーパーハイエンドもやってる。そうやって一気通貫できる会社って、世界広しといえどもティアックぐらいしかないと思います。

エソテリック(株)開発・企画本部 開発グループ部長の村田龍哉さん

吉田 それにね、私もそうですけれども、村田も含め社員にはバンドマン多いですね。

村田 僕もベースをやっています。

吉田 私は本命はチェロなんです。開発チームも、音に関してはオーディオよりも生音や楽器の音に深く親しんでいるので、ライブな音にみんな耳が肥えている。音って主観的なもので、感じ方はそれぞれ違うんですけど、でも大外れしないのは、みんな楽器をやっているからなのかな、とは思います。

ーー体に感じる心地良さとか気持ちよさとか、あるいは血がたぎる感じなどですよね。

吉田 特にこのReferenceシリーズの音作りでは、そこをすごく大切にしています。いたずらに解像度などを追い求めてるだけじゃなくて、演奏している人達の熱というかパッションがやっぱり感じられるように、とは考えています。もちろん設計の段階では、しっかりセパレーションを良くしましょうとか、電流をたっぷり供給して、音がダイナミックにリニアに反応するようにしましょうとか、そういうところはしっかりやっています。でも、最後のエッセンスというか、最後の追い込みの段階でどっちが良い、ってときにはそういう経験が生きてくるように思います。

ーー本当に音楽が好きなみなさんが集まっているんですね。

吉田 いまはコロナの影響でやれていないですけど、以前はミュージックバーを貸し切って社員でセッションイベントやったりもしていましたね。おそらくティアックに入社してくる段階で、音楽が好きな人が集まってきているのかなと思います。

ーー音作りの面においても、TASCAMやエソテリックで培われたものがReferenceシリーズに投入されているのでしょうか?

吉田 Referenceシリーズは、エソテリックでやって良かったこと、いい結果が得られたことをどんどんつぎ込んでいこうという思いもあるんです。音作りもそうなんですけど、最初の回路設計の段階からそういうエッセンスを投入しています。音質面で高い評価をいただけているのは、そういったフィードバックがあるからかなとは思います。

ーーエソテリックの世界観はやっぱりすごいですし、世界的にも評価される日本のハイエンド・ブランドですが、なかなかお値段もすごくて、誰しもが簡単にアプローチできるものではないと思います。ですが、ティアックブランドにはそのエッセンスが確実に受け継がれているのを感じます。

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