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<山本敦のAV進化論 第173回>

これぞドコモ流の音楽・映像配信! 乃木坂46も生配信する「新体感ライブ」の本気度に迫る

2019/02/28 山本 敦
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サービスにとって、もう一つの中核であるARフィギュアは新体感ライブのウェブサイト、およびタワーレコードのオンラインショップやNTTドコモのdショッピングなどのECプラットフォームから購入できるグッズの形態を採っている。

企画の内容によって価格は異なるが、例えば2月13日に発売されたSTU48のARフィギュアは2ndシングル『風を待つ』とのバンドル販売で、価格は2,500円(税別)となっている。山崎氏は「同じアイテムの、ライブ会場でしか買えない限定版パッケージなども企画してライブの集客にも貢献したい」としている。

デジタルデータだけではなく、パッケージとして販売されている

“さわれる” インタラクティブな動画体験も

新体感ライブではマルチアングルライブやARフィギュアの映像にユーザーが画面をタッチして「さわれる」という、ユニークな仕掛けも用意している。これを実現しているのは2018年の7月に(株)NTTドコモ・ベンチャーズが出資したスタートアップのパロニム(株)が開発した「TIG」という技術だ。

パロニムが開発した動画にさわれる技術「TIG」を今後効果的に配信する動画に組み込んでいく。タッチ箇所に自由にリンクが貼れる

TIGを使って動画内にアイコンや文字などのオブジェクトを配置して、ウェブサイトへのリンクなどが埋め込める。例えばアーティストのホームページや、関連グッズを販売するECサイトへユーザーをシームレスに送り込むための導線が作れる。山崎氏が「アーティストの意向にも配慮しながら動画コンテンツに新しいインタラクティブな価値体験を盛り込みたい」とアピールしている。

ドコモが誇る先進技術を今後も積極的に取り込んでいく

NTTドコモが新体感ライブの構想を周囲に説明しはじめた頃は、「ドコモが音楽ライブの市場を壊してしまうのでは」という懸念の声も漏れ聞こえていたという。山崎氏はこれを否定しながら、むしろ新体感ライブが音楽市場全体を活性化できるツールであると熱を込めて語る。

「音楽ライブは会場スペースの物理的な限界がある。遠方にお住まいだったり、スケジュールが合わせられない、チケットが取れないなどの理由から会場に足を運べなかった方々にも、モバイル端末で気軽にライブに参加できる機会を新体感ライブが広げてくれる。ひいてはコンテンツホルダーの方々にとっても、ライブ需要の外側にあるビジネスチャンスを広げられる良い機会になるかもしれない」(山崎氏)。

新体感ライブには、ライブの楽しみ方だけでなく、新しいビジネスチャンスを広げる可能性があると山崎氏

そして今後は音楽ライブだけでなく、演劇や舞台のライブ上映にもプラットフォームが広げられる可能性も、山崎氏は示唆している。例えば日本の伝統芸能を、外国人のファンの方々にアプリを通じて楽しんでもらう際にはリアルタイム音声翻訳の機能も必要になる。その時にはNTTドコモのグループが研究する先端技術も活きてくるだろう。

実際のライブ会場から遠く離れた場所に大勢の観衆を集めて、リアルな3Dホログラフィック映像のアーティストを浮かび上がらせる超高臨場感通信技術「Kirari!(キラリ)」もNTTグループが開発を進めているイノベーティブな試みのひとつだ。あるいは近い未来に、新体感ライブのユーザーが同時に参加できるバーチャル空間をつくることも可能になるかもしれない。

山崎氏は新体感ライブの今後について「ユーザーの声、アーティストの声に真摯に耳を傾けながらより良いサービスにしていきたい」と抱負を語ってくれた。第5世代の次世代高速移動通信システム「5G」も、2020年の国内商用化に向けて勢い付いている。山崎氏は「あるいは5Gのメリットを取り込みながら、新体感ライブに魅力的な機能を追加することも考えられるかもしれない」とした。

NTTぷららの村山氏は、新体感ライブの品質向上について今後も継続的に注力していくと述べていた。トライアルサービスの実施から積み上げてきたい経験をベースに、今後どういう順番で機能拡張、改善を図っていくべきかという道筋も村山氏には見えてきたという。

新体感ライブの発展についてのビジョンはすでに見えていると両者

今回、筆者も山崎氏と村山氏にインタビューして、新体感ライブがモバイル端末で楽しむ生音楽ライブ、あるいはアーティストとファンを近づける物販サービスに新しい価値が生み出せるプラットフォームになりそうな期待を持った。

2019年の幕開けとともにソニーはCESで「音場の豊かさ」にフォーカスした新たな音楽配信サービス「360 Reality Audio」のコンセプトを発表している。それぞれ目指す方向や楽しみ方は異なっているが、今年はハイレゾや定額制音楽配信に続く、音楽リスニングの新しいサービスが続々と生まれてくるのではないだろうか。

新体感ライブについては、今後もコンスタントにユーザーが楽しめるコンテンツを増やしていきたいと、山崎氏と村山氏は口を揃えている。その中身は新体感ライブの公式サイト、またはアプリの中で定期的に公開される予定だ。まずはアプリと体験版コンテンツをダウンロードして試してみてほしい。

(山本 敦)

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