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【特別企画】山之内正氏と同社代表が語り尽くす

<対談>DELAはネットワークオーディオをいかに変えたのか? 参入から「N10」登場までをふり返る

公開日 2018/12/01 07:00 聞き手:山之内 正 構成:PHILE WEB編集部
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荒木 要望はありませんでした。2014年の春頃にはUSB-DACトランスポート機能をイベントや販売店などでお見せし始めていたのですが、その意味があまりご理解いただけていないなと感じたほどです。

山之内 こうした使い方はユーザーも想定していなかったわけですね。ただ、ライブラリの送り出し先にいろいろなものが選べたほうがいいはずです。

荒木 我々は OpenHome をはじめ LINN 社が提唱したネットワークオーディオの在り方に大きな敬意を持っています。だからこそ、OpenHome の利便性を USB-DAC にまで発展させたかったのです。実際、アップデート対応してからは、多くのユーザーにこの機能を使っていただいています。

N1Z/N1Aはアップデートによる機能追加によって、オーディオ専用NASというコンセプトさえ拡張していった。追加機能の一覧をふり返るとそれがよくわかる ※作成:PHILE WEB編集部

山之内 外付けドライブを接続してのCDリッピングにもアップデートで対応しました。N1Z/N1Aでライブラリ管理からオーディオ再生までを完結するという意味で、配信サイトで購入した音源の自動ダウンロード機能と共に重要な機能です。

荒木 CDリッピング機能はN1Z/N1Aを構想した当初から実現させたかった機能で、パソコンのCDリッピング環境を持っていない方が手軽に使えることを最優先しましています。特にカバーアートを誰にでも簡単に手に入るようにすることは重要と考え、gracenoteと契約してこれを実現させました。同じ理由で、リッピングの度に取り込む形式を選択するような仕様にもあえてしていません。

ネットワークオーディオはライブラリが増えれば増えるほど楽しくなりますよね。誰でも簡単にCDがリッピングできて、なおかつアートワークやメタデータが正しく取得できれば、お気に入りのCDでライブラリをどんどん大きくして、ネットワークオーディオの醍醐味を味わうことができます。

山之内 N1Z/N1AはCDを直接再生する「CDトランスポート機能」にまで対応しました。

荒木 なぜネットワークオーディオでわざわざCDを再生するのかと思う方もいるでしょうが、ユーザーの間口を広げるためには必要だと考えました。CDをドライブに入れるだけで、USB-DAC での再生が体験できるのです。CDプレーヤーと同様の使い勝手にこだわり、あえて曲名ではなくトラック番号をディスプレイに表示させています。CD用ドライブメカがなくなるかもという危惧に対して、DELAとしてのCD再生の手段を提示するという意図もありました。

山之内 2017年には第二世代のハードウェアとなる「N1ZH/2」「N1ZS/2」「N1A/2」が登場しました。

荒木 N1Z/N1Aはソフトウェア・アップデートを繰り返して様々な機能を追加してきましたが、ソフトウェアだけでは改善できないこともありました。また、ユーザーの使い方が私たちの想定とは異なる部分もあったことを踏まえ、それを反映させる狙いもありました。例えばUSBDACトランスポート機能がここまで利用されるとは当初想定していませんでしたので、従来はなかった「USB-DAC」用USB端子を、第二世代モデルで追加しました。

第2世代として登場した「N1ZH/2」「N1ZS/2」。ハードウェアが刷新され、音質もさらに磨きをかけた

「N1ZS/2」の背面端子部。USB-DACを接続するためのUSB端子が新たに設けられた

また、同じ理由でストレージとしての要望より、トランスポートとして「さらに音を良くしたい」という要望が強くなってきました。それを受け、音質対策もよりトランスポート機能を重視した方向に振っています。先ほど話題になったコンセプトの拡張も踏まえて、名称も「ミュージックライブラリー」に変えました。

DELAの新しい挑戦。ネットワークオーディオのさらなる普及のために

超弩級のディスクドライブ「D10」「D100」をラインナップ

山之内 DELAはN1Z/N1Aを軸にラインナップを展開してきましたが、2018年に入りオーディオ用ディスクドライブ「D10」「D100」発売しました。

荒木 CDリッピング機能やCDトランスポート機能を開発するにあたり、N1Z/N1A本体側にも進化の余地があると感じていました。ただ、さらなる進化のためには組み合わせるディスクドライブもリファレンス・グレードのものが必要になります。そこでN1Zのように突き詰めたディスクドライブも開発したのです。

30台限定で発売された「D10」は発売直後に完売。ファンの要望に応えて、2018年12月20日受付分までの期間限定・受注生産にて再販を行っている。価格は230,000円(税抜)

D10の筐体は、2mm厚の鋼板シャーシと、削り出しアルミによるトップパネルおよびサイドパネルで構成されています。N1シリーズと同様の大容量コンデンサーを搭載した電源回路、銅膜厚が通常品の4倍の専用基板、NDK製クロックを採用なども特徴です。最適なドライブメカを選び、筐体と電源を徹底的に作り込みました。

また、本体前面のアクセスランプが細かく点滅するのは音楽再生にとっては目障りなので、アクセス時にはLEDが長いスパンをかけて青と緑で変化するような仕様になっています。LEDの点滅を回避することで、電源もさらに安定させられます。

山之内 実際にCDリッピングもCD再生も試しましたが、制振対策も徹底されていて非常に気に入りました。その物量にも驚かされますし、強力な電源もサーボを安定させるために重要でしょう。D10は限定モデルとして発売されましたが直後に完売してしまいました。先日は期間限定での再発売がアナウンスされ(関連ニュース)。一方でD10に迫る構成のD100は通常モデルとしてラインナップされています。D100はむしろ安いと感じるくらいです。

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