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Wink結成30年を経て登場した“オリジナル・マスタリング” UHQ-CD、その制作背景に迫る

公開日 2018/11/19 17:36 季刊・オーディオアクセサリー編集部
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ちなみに、小林氏がマスタリングで使用する機器のワイヤリングも含めたセッティングは、4月のEP盤をリリースしたあとに導入されたものだそうだ。それではこのEP盤ではどのような音をイメージしていたのだろうか。

EP盤とUHQ-CD盤。双方の製作中にワイヤリングを変更したことによる違いも隠れた注目ポイントのひとつ

小林「EP盤については、現在とはまた違ったワイヤリングで行っています。ですので、マスタリング環境での音の違いもあると思います。あとは今回EP盤を担当させていただいて分かったのが、ノイズの話。レコードは10kHzを超えるとノイズが増えるので、さらに上の帯域に収録された音はほとんどノイズにマスキングされるんですよね。でも人間の耳は、音楽を聞こうとすると補正されてそのノイズが気にならなくなる。あとアナログは明らかに再生の方式が違うので、今回特に感じたのは、高域が非常にキレイだったということ。「意外!」と思ったくらいです(笑)。こういうところにEP盤ではアナログの良さが現れているのかな、と思っています」。

中澤 「あと、当時のEP盤を聴くと分かるんですけど、良し悪しということではなく、とにかく音に元気があるんですよ。ですので、4月もこの「元気の良さ」を意識しています。特にアルバム15タイトルに収録されたボーナストラックのうち数曲は、EP盤のカップリングで収録した楽曲なんです。ですので、ちょっと仕上がりが異なっていると思います。わかりやすくいうと、中高域は強めなんじゃないかな」。

小林「これはどっちかが良いというわけではなくて、どっちにも良いところがある。だから「最終的に何を取るか」ということなんですよね。マスタリングは限られたスペースの中でどれだけ印象に残るものを作るかということなので、作品にとって最も良い方向に寄せていくということになります」。

中澤「余談なんですけど、小林さんはもちろん我々以外にもたくさんのクライアントさんと仕事をなさっています。なかには、DAWで読み込んだときに波形がべったりと潰れているものがあるそうなんです。「これだともうやりようがない」とおっしゃるんですけど、当初僕には、その意味が分かりませんでした。でも、小林さんとの仕事を通して、そこも「なるほど、そのとおりだね」って理解できるようになりましたね。だからこそ、今回のようなアナログテープからのリマスタリングっていうのは、そもそもマスタリング・エンジニアさんの腕の見せ所だったのかな、と思います」。

こうしてプロデューサーを務めた中澤氏の意図と小林氏の感性が見事に合致して進められたのが、今回のWinkの30周年記念企画でリリースされたタイトル達ということだ。実際に全タイトルが無事に発売されたいま、その手応えを聴いてみた。

「我々が意図したテーマを理解していただいて楽しんでいただけているのも嬉しい」とその手応えを話す

中澤「今回のEP盤とオリジナル・リマスターUQH-CD盤を聴いてくださった皆様からのフィードバックもたくさんいただいております。いろいろなご意見をいただいておりますが、なによりも我々が意図していたテーマを理解して楽しんでくださっている方も多く、これは本当に嬉しいですね。小林さんとはさまざまなアーティストでご一緒させていただきてきましたけど、サウンド的なところも含めて、今回のWinkは集大成になったと思います。12月には企画第3弾として、ベスト盤とカップリング集をそれぞれオリジナル・リマスターとしてデジタルリリースします。96kHz/24bitでマスタリングしていますので、ハイレゾ音源も楽しんでいただけると嬉しいです」。

今回改めてWINKのリマスターを担当したことで、当時は気づかなかった魅力にも気づいたそうだ

小林「それにしても、まさかいま、Winkを引っ張り出してきてリマスタリングするなんて思ってもいなかった(笑)。だからこそ、当時は気づかなかった新たな魅力にも気づくことができたところもあります。皆さんも今回のリマスタリング盤でそんな楽しさを味わって欲しいです」。

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