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伝説のアイドルを現代最先端の技術で

Wink結成30年を経て登場した“オリジナル・マスタリング” UHQ-CD、その制作背景に迫る

2018/11/19 季刊・オーディオアクセサリー編集部
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Winkのタイトルはこれまでもリマスター盤が発売されていたことを、ファンの方ならご存知かもしれない。いまから5年前にあたる25周年の時も、タワーレコード限定で全15アルバムがリリースされた。こんなに頻繁にアニバーサリータイトルがリリースされるアーティストも稀である。その理由はどこにあるのだろうか。

中澤「Winkは後に「マリオネットアイドル」と呼ばれるような、歌えて計算された振り付けもあって……というようなアーティストでした。楽曲としても、J-POPというよりはその前(それ以前)の歌謡曲と言ったほうがいいかもしれません。でも、プロデューサーが8月に亡くなった元ジャックスの水橋春夫さんだったり、作詞家として当時駆け出しだった及川眠子さんを起用したり、さらには船山基紀さんなどの名うてのアレンジャーを起用したり、洋楽をカバーしたり…というアーティストだったのです。特に及川さんは、Winkに作詞家として育ててもらったという言い方を、ご本人もなさっています。そんな、言うなればストーリー性があるアイドルなので、特にオリジナル・リマスターUHQ-CDは、最新のテクノロジーでどこまでのものが作れるか、ということをテーマにしたリリースとなったわけです」。

「ストーリー性もあるアイドルなので、最新のテクノロジーでどこまでのものが作れるかということにテーマをおいた」と話す中澤氏

確かに、Winkは「スペシャル・トゥー・ミー」などがいわゆる和モノDJ達に取り上げられたりもするなど、楽曲としても近年再評価されてきた。だからこそリマスタリングを経てのリリースは、Winkファンだけでなく幅広い音楽ファン達から注目を集めたわけだが、30周年記念盤ではどのような試みがなされているのだろうか。

中澤「実は25周年の時のリリースは、デジタル・リマスター盤。つまり、デジタルの音源からリマスタリングということだったんですが、今回はマスターにアナログテープを採用しています。これが「オリジナル・リマスタリング」の所以です。JVCマスタリングセンターでカスタマイズされたスチューダー「A-80」を使って、DAWに96kHz/24bitで取り込み、そこからリマスタリングするという手法を採っています」。

今回のリマスターは、JVCマスタリングセンターのカスタマイズによるスチューダーA-80を使ってオリジナルマスターテープから行っている

このマスタリングを担当したのが小林氏というわけだが、そもそも小林氏にマスタリングが依頼されたことには、中澤氏のなかで意識改革のきっかけとなった、ある出来事に関係しているのだという。

中澤「数年前から自分も編成担当として制作企画に関わってきたんですけど、マスタリングっていまいち分からない世界だったんですよね。これは、水橋さんもおっしゃっていたんですけど、ミックスが終わった段階でひと区切りなんですよね。完璧に納得のいくものを、アーティストと作家と一緒に作ったという意味で。でも、その次にはマスタリングという工程がある。僕が実際にこの世界に入ってからはデジタルの時代でしたので、「マスタリングって一体何をするものなのか?」と思っていたんです。小林さんにはこれまで、L⇔Rのデジタル・リマスター、やしきたかじんのリマスタリングなどをお願いしているんですけど、そこで「なるほど、こういうことを具体的にやるんだな」というのがよく分かった。特にびっくりしたのが、昔のCDの聴感上の音量の低さでした。マスタリング前とあとの音源を同じ音量で聴いたときに、まずそこに驚いたんです。これは一時の音圧競争ということではなくて、少なくともリマスタリングに限っては、もっとオリジナルの良さを伸ばすためにマスタリングという工程が必要なんだな、と思ったんです」

音圧競争については、中澤氏と小林氏の間の共通の疑問だったそうだ。だからこそ、中澤氏は「小林さんにお願いするべきだと思った」と振り返る。

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