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自身のスタジオでTD712zMK2を使用

BOOM BOOM SATELLITES 中野雅之さんが語る、ECLIPSEをモニタースピーカーとして使う理由

公開日 2018/04/17 11:01 聞き手/構成:編集部 小澤貴信 PHOTO:君嶋寛慶
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ーー 『19972016』のリマスタリングにおいても、リミックス的な色合いの作業もあったのでしょうか。

そうですね。アーティスト本人ならばマスタリングエンジニアがやらない領域にまで手を出せてしまうので、作業量も膨大になってしまって大変でした。今でも、自分でやるべきだったのか、他者に頼むべきだったのかを反芻することがあるのですが。

作曲、録音、ミックスという一連の過程を自分で手がけることは、何人もの人格を使い分けるようなところがありますが、マスタリングを自分で行うのはその究極と言えます。だからこそ、20年前に自分が作った楽曲を今自分がリマスタリングするということを、果たしてファンは喜ぶのかと考えることもあります。ビートルズのリマスターが出るたびに、これは自分が知っているビートルズではないという感想を持つ方は多いですよね。

音楽や楽曲を大切にする、あるいはアーティストの意志を大切にするということの本質な何か。ただ現代の基準に合わせていい音を作ることが、いい音楽と言えるのか。今でもいろいろなことを考えさせられます。そういう意味でも、自分の過去作品を全て自分でリマスターするという作業はエクストリームな体験でした。



ECLIPSEのスピーカーの狙いは、音楽制作をやっていれば見ただけで理解できる

ーー 今こちらのスタジオでは、ECLIPSEのTD712zMK2がメインのモニタースピーカーとして使われていますが、そもそもECLIPSEとはどのように出会ったのでしょう。

すごく遡ると、屋敷豪太さんのロンドンのお宅に遊びに行ったことあるんです。そのときにECLIPSEの話をしたかもしれないです。屋敷さんの印象っていうのがずっとありました。

それ以降ずっと気になってはいましたが、実際に使ったのはUSB入力やアンプを内蔵した「TD-M1」が最初で、一度リスニング用で試してみようと導入しました。その音を聴いて、セッティングを含めて全部自分で追い込めるクラスのものも試してみたくなってTD510MK2も導入しました。

その時点では音楽制作にパワードモニタースピーカーの定番と言われるものを使っていて、そこに併せてTD510MK2をセッティングしました。ですから、どこかでじっくり聴き込んでというよりは、最初は何となく勘で手を出してみたという感じですね。

ーー 実際にTD510MK2を導入されて、ECLIPSEの音については、具体的にどのような印象を持ちましたか。

ECLIPSEのスピーカーの独特な形状の狙いやタイムドメイン理論は、音楽制作をやっていれば簡単に理解できます。フルレンジでユニットが1つなので、インパルスレスポンスに優れていて、点音源だから位相や時間軸のずれがない。それを放射状にきれいに伝達するために独特のエンクロージャー形状をとっている。それは見ればわかることです。

それでも、音楽制作の上でモニタースピーカーを入れ替えるというのは大事件で、マルチウェイのパワードスピーカーのバランスが体に身に付いていることもあって、使い始めた当初は失敗もたくさんしました。しかし、自分が好きな音楽をいろいろと再生してみると、今まで聴いたことのないリアリティ、空間の再現性や楽器の距離感を聴きとることができました。そして、スピーカーの色がないことには正直驚きました。

音によって音楽の聴き方が変わるものだな、と改めて感じました。このスピーカーで音楽制作をしたら何が起こるのか興味が湧いてきたし、それがエンドユーザーに届く段階になったときにどういう効果が表れるのかというのも気になりました。後者についてはいまだに検証中でもあるのですが。

ーー ECLIPSEの音について評価されている点について、もう少し詳しく教えていただけないでしょうか。

それは多岐にわたりますが・・・音源と音源の距離の表現、ダイナミクスの異なる2つの楽器が同時に鳴っているときの描き分けですね。

僕の音楽はエレクトロニックの要素が多いですが、その中にボーカルが録音されるときに、マイクを通して空気の振動を拾う音と、電気的に作り出された音のコントラストはすごく重要です。その描き分けが非常にリアルなのです。

例えば3ウェイのスピーカーだと、周波数レンジを伸ばすことで描き分けをしようとするところが少なからずあって、どうしても平面的になっていきます。だから重なった3つの音が、3層のレイヤーとして見えます。ECLIPSEの場合だと、それを非常に見通しのいい、濁りのない1枚の絵として見せてくれるのです。

だからこそ、優れた録音の作品をECLIPSEで聴くのは感動的ですらあります。なかでもジャズ系の作品は1番得意なタイプだと思うのです。部屋の広さや楽器の配置まで本当によく見えてきます。

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