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【対談】オーディオは本当に進歩したのか<第2回> 哲学者・黒崎政男氏と宗教学者・島田裕巳氏が語る

公開日 2017/12/14 15:53 季刊analog編集部
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モノラルからステレオへ

島田 私はずっとジャズ喫茶でJBLのパラゴンを聴いていた時期があったわけですけれど、今回改めて聴いたときに、パラゴンには秘密があるなということに気がつきました。皆さんにもちょっと体験していただきたいので、まず最初に、パラゴンでなく、横に用意してもらったVITAVOXで、ビートルズをかけようと思います。


VITAVOX CN-191

CN-191は大変稀少なラジアルホーンを使用したもの
〜VITAVOX CN-191でザ・ビートルズ『ラバー・ソウル』より「Drive my car」(ステレオ盤)試聴〜


ザ・ビートルズ『ラバー・ソウル』LP
島田 ビートルズはどこにいましたか?右側だけにいませんでしたか。

黒崎 右から出ているのはモノラル的なんですけど。この時代のジャズのステレオ盤って、こんな感じですよね。コルトレーンの『バラード』なんか、一番端にコルトレーンがいて、こっちにはピアノでってはっきり分かれちゃって。なーに録ってんの! みたいな。

ヴァン・ゲルダーは、最初の頃「ステレオ」ってなんなのか分からなかったらしいですね。自分のモニタースピーカーはひとつしかないので、片方ずつ録音するんだけど、左右から同時に出たときにどのような音に仕上がるのか想像がつかなかった。だから初期のステレオはとんでもない入り方している。

島田 次にかけるのは有名なものでアート・ペッパーとマイルスの『リズムセクション』。

アート・ペッパーを抜くと、マイルスと演奏している人たちなんですよ。この『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズムセクション』は西海岸での録音ですね。

黒崎 マイルスをアート・ペッパーに替えたらとんでもない名盤が生まれてしまった。

島田 といわれているんだけど、今日はちょっと角度が違いますけど。メンバーがどこにいるか聴いて欲しい。

黒崎 名盤かどうかともかく、人員配置ね(笑)

〜VITAVOX CN-191でアート・ペッパー『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』試聴〜


アート・ペッパー『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』LP
島田 いま考えるとステレオ録音としては……。

黒崎 失敗しているよね。

島田 1957年のステレオというのはこういうイメージだっていうことです。これをパラゴンで聴くとどうなるか。

〜JBLパラゴンで『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』試聴〜


JBL D44000 Paragon
島田 これがパラゴン特有の音場の作り方! 先ほどのVITAVOXでは横長の部屋みたいな感じだったけれど、パラゴンだと、アルトとリズムセクションが左右にはっきり分かれていなくて、アルトが中央から聴こえてくる感じになりますよね。

島田裕巳氏(左)と黒崎政男氏(右)

黒崎 JBLは全方向に向けてどこで聴いても大丈夫という、ちょっと変わったことをやっていた。これがステレオの最初期の装置と言えるから、最初期の「ステレオ」って何だったのか? という面白い疑問が湧いてきますね。

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